自民党員が必読の『福祉国家亡国論』

このところ万人単位で減っているという自民党員たちだが、年間4000円を払えば、基本的に誰でも党員にはなれる。
ただし、こないだの「総裁選」のように、何年かに一度というときには、名前を貸すことでの「党員」となることもある。

この場合、党費は地元だか何だかの有力議員とかが負担してくれる仕組みで、わたしもかつて、いつだかも忘れたが、党員登録のための名前貸しをしたことがある。
もちろん党費を支払ったことは、人生で一度もない。

それで、投票をするのはわたしの名前を借りたひとになるから、わたしはどんな方法で、投票するのかもしらないままでいた。

なので、ほうとうの党員になるとどんなサービスを受けることができるのか?とか、逆に、どんな負担を強いられるのか?について、詳しくはしらない。

そもそも、地元の市会議員とかの「後援会加入」と、「党員になる」ことのちがいすらわからないままで生きてきた。

横浜市だと、市会議員の後援会、県会議員の後援会、それと国会議員の後援会があるから、全部にそれぞれ加入するのか?それともどうしているのか?もしらない。

それぞれの議員にとっては、自分の後援会が、政治活動のための「組織」になるので、それがまた、党本部の組織とどんな関係にあるのか?もわたしにはわからない。

そんなわけで、自民党総裁の投票権を得るために党員になって、投票したらしばらく休眠するというひともいるらしい。
けれども、公職選挙法と関係のない総裁選の「一票の格差」は、一般党員と現職国会議員とでは天と地なので、よくもまた物好きがいるものだと感心するのである。

さて、手元には昭和50年12月1日、保健福祉開発研究財団刊とある、『福祉国家亡国論』の令和元年復刻版がある。
著者は、元自民党衆議院議員、山本勝市(経済学博士)だ。

ご本人の来歴によると、明治29年生まれで、戦後の昭和20年11月には、日本自由党創立委員で、翌年4月に衆議院議員になっている。
公職追放後、昭和29年に第一次鳩山内閣で通称産業政務次官、自由民主党政調会副会長、総務、財政部長、衆議院大蔵委員長、同懲罰委員長を歴任、とある。

しかしてこの本は、ハイエクやミーゼス、それにレプケが紹介されている、バリバリのオーストリア(ウイーン)学派=自由主義の教科書なのだ。

こういう人物が自民党内での理論家として、何かと政策立案に関わったのは、国民としてハッピーであった。

しかし、この人物がいた時期を含めて、どんどん共産化していく自民党は、この本の真逆を突っ走っていて、かつての見る影もない。
これはいつからのことなのか?

「まえがき」には、昭和30年の春、第二次鳩山内閣の川崎秀二厚生大臣が、衆議院予算委員会で社会保障制度の確立を約束したときからであり、特に、同年11月、与党の民主党と野党の自由党が合併して自由民主党を結成したとき、その綱領のなかに「福祉国家の完成を期する」と明記した、とある。

ようは、自民党は結党のはじめから、社会主義政党なのだ。

ちなみに、「福祉元年」を宣言したのは昭和36年で、いまの社会保障制度(国民皆保険制度)が完成したのである。
これから60有余年、山本博士が指摘したように、計画経済を通じての「ソ連化」で、成長率さえとまって久しい。

おなじ「まえがき」で、福祉国家政策の推進が自由社会の基礎を崩壊させることへの私の危機感、とあるのは、いまにして至極まっとうな「正論」だとわかる。

まさに「福祉国家」が、国家破綻を誘導し、国民生活を困窮化させている。

さらに「復刻 まえがき」では、生活保護を例にして、かつての日本人は(これを受給することを)「恥」と考えていた。
働かなくとも給付され続ける「金」で、我々は何を売り渡してしまったのか、と。

もう、かつての日本人にあったはずの「恥の文化」すら破壊されたのである。

1969年から翌年まで、ほぼ2年間にわたって放送された大人気時代劇、『素浪人花山大吉』でも、「恥の文化」が生きている姿は、もしや、破壊をすすめている現実から目をそらすための教育だったのではないか?といまさらながらに疑うのは、現「テレビ朝日」の「NET(「日本教育テレビ)の略」が作っていたからである。

ただし、「付随的結果」として、いま観ると、失われた「恥の文化」だけでなく、ロケ地の景色も、俳優たちのセリフ外の演技にもさり気ないむかしの日本人の動作があって、現代にまったく失われていることがよくわかるので、もはや「記録映画」としての価値がある。

戦後の原点にあるはずのこの本を自民党員必読だという指導者もいない「党」に落ちぶれたから、国民として何よりも先に滅亡してほしいのが、自民党になったのである。

するとこの一冊は、日本国民が必読の書となる必然がある。

なにせ、「国民皆保険」がいかにひどい搾取(=国民奴隷化➡︎家畜化へと退化させる)の制度であるということが、正面切って書いてあるものだからだ。

いま、ミーゼスの『マルクス主義の正体‐人類を破滅させる妄想体系』が復刻出版されている。

併せて自民党員なら読むべき一冊だろう。

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