4日、アメリカではいくつかの選挙があった。
来年の中間選挙の前哨戦としてみられるものだが、まずは「共和党が完敗」した特徴がある。
4年前、ヴァージニア州では、州知事、副知事、州務長官、司法長官のトップ4職を共和党が抑える「事件」があったが、今回、見事に民主党に取り返された。
トランプ政権2.0は、選挙に敗北したが在任中に優秀さを存分に発揮した前司法長官を、連邦司法省の高官に迎え入れる可能性もある。
注目のニューヨーク市の市長選挙では、共産主義者のマムダニ候補が民主党予備選を勝利して正規候補となったが、そのままの勢いで当選するという事態となった。
主たる支援は、若者層だという。
なお、民主党予備選で敗れた、前ニューヨーク州知事だった、クオモ氏は、無所属で立候補し、民主党エスタブリッシュメントとトランプ大統領、イーロン・マスク氏の応援を受けたものの、10ポイントもの差で敗北した。
本稿では、この件にフォーカスして書いておく。
まず、当然だが世界のマスコミはこの当選に熱狂している。
つまり、一般人からすると、ヤバイ事態になっている、ということである。
勝利宣言でマムダニ氏は、自身を「民主社会主義者である」と述べたというが、右から中道までの目線でいえば、共産主義と何ら変わらない。
むしろ、公約に掲げた内容こそが、ソ連も驚く共産政策なのである。
およそあらゆるサービスを無償化する公約や、家賃値上げ禁止とか最低賃金を$30に引き上げるだとかであるけれど、実現可能性はバスの無償化ぐらいではないのか?
これに、不法移民の完全保護が加算される。
トランプ大統領は、ニューヨーク市への連邦政府補助金を全額カットすると表明している。
そこで、「財源がー!」という自民党のいいぶんを適用すると、マムダニ氏は、富裕層からの課税強化(=増税)でこれらを全て賄う算段のようである。
彼は、「減税は経営者が労働者を搾取するた環境を整えるもので、課税は窃盗ではなく資本主義こそが窃盗だ」との持論がある。
それゆえに、「犯罪者を投獄することこそ暴力だ」と主張して、無法者天国を実現することも公約になっている。
勝利集会に集まったひとたちを取材した動画は、日本人には信じがたいほどにイカれた連中で、行政からの補助金に完全依存して働いたことがないことを自慢している。
それで、生活費が全面的にタダになると「前夜祭」のように喜んでいるのである。
市長の一存で全部が決まるはずもなく、市議会と州議会が、そんな支出を認めないだろうけど、そのときには暴動を起こせばいいと安直にかんがえているにちがいない。
このブログでの用語なら、巨大な乞食集団による身分証を要しない選挙投票権の行使で、自爆した、とかんがえるのが妥当だろう。
ここで、「減税」についての発言は、どこかで聞いたことがある論理だと気づいた。
河野太郎氏の「ガソリン暫定税率」に関するコメントこそが、この論法そのものなのである。
ゆえに、彼は「(一般国民のために)減税すべきではない」が、結論だった。
なるほど、自民党が共産化する過程(第二次安倍内閣から)において、この人物が重用された理由がわかる。
ずいぶん前に、「善政競争」について書いた。
菅義偉氏が総務大臣だったときに作った、「ふるさと納税」によって、日本各地の「ふるさと」はよくなったのか?と問えば、意味不明の制度だとわかる。
単純に、自分が暮らす地域の市民税収入が人口から計算できなくなったし、「返礼品」事務が増えたのである。
しかし、よりダイナミックなアメリカにおいては、日本でかつての幕藩体制がもっとも怖れた「逃散」とおなじく、「州境」を超えて、国内移住するという手段が建国時からあるのだ。
すでに、ニューヨーク市(州)は、過去10年ほどで、5000億ドルの税収を失ったが、これぞ他州への(とくに富裕層の)人口流出・逃散の効果だという。
今回の当選を受けて、さらに年収$250,000以上の人々が転居を検討しており、100万人規模のニューヨーク市からの人口移動になる可能性がある。
つまり、ニューヨーク市が、みずから「ゴッサムシティ」になろうとしているのである。
まさに、マンガのような事態だ。
人口流出は、来年の中間選挙、28年大統領選挙にも多大な影響を及ぼす。
2年に1回の「総選挙」となる、アメリカの連邦下院議員は、総数を変えないで単純な人口比で議席数の配分が決まるから、人口が減ると当該州の議員定数も自動的に削減されるのである。
大統領と議会の、選挙制度のちがいがどのような結果になるのか?
少なくとも、法案決定権は議会にあるのがアメリカの民主主義制度なので、下院の共和党有利の状況が生まれていることはまちがいない。
それで、太平洋の反対側にあるカリフォルニア州では、選挙区割りの変更を可決して、いまより民主党有利にしたのだが、連邦最高裁の判断が次にある。
もし民主党が勝訴したら、共和党もおなじ手法を採用することが確実なので、「肉を切らせて骨を断つ」ような、スティーブン・ミラー氏が得意の様相になっている。
すると、いつニューヨークが「廃都」になるのか?が気になるばかりか、アイン・ランドが『肩をすくめるアトラス』で書いたとおり、社会主義を嫌ったひとびとが山岳地に「新都」を建設したごときことに至るのか?となる。
これも、栄華を極めたアメリカ帝国衰退の象徴的な出来事だといえる。

