論理矛盾をやらかす精神状況

およそ「外交」とは、「法理」に基づくものである。

この法理には、経緯をあらわす「歴史」も含まれるのは当然で、外交の延長に戦争があるのは、クラウゼヴィッツ以来の常識というものだ。

ゼレンスキー(=ナチス)政権の終わりを目的のひとつに据えたロシアの外交からの戦争への道を、残念だがおおくの日本人が意識しないのは、80年前のあまりの「敗戦のショック」(社会学的には「アノミー」という)から、立ち直れていないためか?立ち直らせようとしない力学の結果か?という問題を含んでいる。

むろん、筆者は「立ち直らせようとしない」努力の成果であるとかんがえる立場にある。

しかし、後期昭和の絶頂(バブル期)からたったのひと世代ほどで落ちぶれてきて、そんな努力に対する「気づき」をもつひとたちが、敗戦からの後期昭和と平成へと続いた空気と比べると、おどろくほど増えている。

それが、1日、前代未聞の野党筆頭の「立憲民主党解体デモ」が実施されるまでにふくらんでいる。

トリガーとなったのは、11月7日、衆議院予算委員会での岡田克也議員(元外相)による、執拗な質問であった。

それで、中共の過剰反応となり、いったん解禁したわが国水産物の禁輸(11月19日に発覚した)に、同29日に開催予定の浜崎あゆみなどのコンサート中止という(日本文化排除)措置にまで発展していることが表だっての話題になっている。

日本では、「コンサートを楽しみにしていたファンがかわいそう」という投稿が相次ぎながらも、ポスターを多数貼ってビデオ鑑賞会を試みたひとたちも逮捕される状況に、日本の若者が唖然として全体主義の恐怖を目の当たりにしているのである。

しかし、一方で11月27日には、「イオン湖南省長沙市店」が、「ユニクロ」や「無印良品」の出店も含め、順調な開業をしていると報じられている。

ところが、11月28日、もっと唖然とすることが公式発表された。

なんと、中国外務省と国防部は、1951年9月8日の「サンフランシスコ講和条約」を認めないと発表し、今月2日には、在日中国大使館もおなじ内容の「X」記事を上げた。
しかし、これはなにもいまにはじまったことではなく、今年8月18日にも「新華社」がおなじ発表をしているのである。

このタイムラグの不思議は横にしても、ようは「台湾」の中共帰属についての主張なのであるが、困ったことに、サンフランシスコ講和条約でわが国はあたかも「台湾」の放棄をしたと見なされていたことへの、決定的な先祖帰り、つまり、台湾は日本領である、という主張に等しい論理になっているのである。

ここで、「あたかも」というのは、いまも国際法上、「台湾の帰属問題」が存在するからである。
とにかく、日本領だった台湾に、蒋介石の国民党が逃げ込んで、敗戦した日本統治のどさくさに紛れて乗っ取り、マッカーサーもトルーマンも放置したことが元凶となっている。

むろん、中華人民共和国の建国は、1949年10月1日なのではあるが、第二次大戦の講和、という意味からも、当事者ではない、のが世界の常識である。
終戦の1945年当時、中華人民共和国を承認していた国はどこにもない。

時系列が狂っているだけでなく、巨大ブーメランを飛ばしまくってくれているのだ。

なんにせよ、「サンフランシスコ講和条約の無効」主張は、旧日本領全部の復活を意味する。
朝鮮半島だけでなく、樺太・千島に及ぶし、「満州(国)」にいたっては、中共による領土拡大=征服という事実もでてきて、NHKがいう「中国東北部」という表現では済まないことがバレてしまうし、「東トルキスタン」を征服して「新疆ウイグル自治区」としたり、「内モンゴル」もと、どうなることか、周辺国が心配するありさまなのである。

そのなかの台湾では、「台湾は日本領だと中共が認めた」と大騒ぎになり、「日本語学習熱」が噴火状態にある。

故岩里政男(通名;李登輝)の悲願は、台湾の日本領「復帰」であった。
「サンフランシスコ講和条約」を否定したら、自動的に浮かび上がってくるのは、1895年の「下関条約」なのである。

この条約調印後の記念式典で、清国全権の李鴻章(北洋通商大臣兼直隷総督)は、「歴史的に台湾は化外の地であって、一度も歴代王朝の支配下になかったので、清国には痛くも痒くもない(ざまぁみろ)」、といってのけた歴史がある。

その台湾は、いま、特殊出生率1.0を切る、強烈な人口減少社会にあるけれど、中共の発表数字が正しければ、こちらは1.0ちょうど。
それで、徹底的に子供を甘やかして「小皇帝」にさせる子育て文化ができている。

「一人っ子政策」は、1979年から2015年に廃止されるまで続いたけれど、「文化」はそう簡単に変更できない。

これら「小皇帝」がおとなになって、外交ごっこをやってみたら、「自己中の罠」にはまって、台湾をわが国に差し出してくれるそうなのである。

それもこれも、このタイミングに上・下両院アメリカ連邦議会で通過した「台湾保障実施法案」に3日、トランプ大統領が署名して、「法」として発効されたのである。
これで、戦後からのアメリカの曖昧な態度が破られて、「国家承認」一歩手前にまでなった。

トランプ政権2.0の頭脳、スティーブン・ミラー氏なら、今後いかなる策をあみ出すものやら?

残念ながら、わが外務官僚の無能だけが再び目立つのである。
なぜならば、アメリカに、「台湾は日本領」という外交ロジックの「筋」があるからである。

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