選挙は短期決戦とはいかない

事情がなんであれ、公職選挙法に合法なら何をしてもよいと発想するのを、いけない、といいたいので書いておく。

あと30日もなくなったアメリカ大統領選挙は、年をまたいで行われるほどの長丁場である。

第一に、党内予備選挙で勝たねばならぬ。

次に、大統領選挙は、大統領選挙だけの選挙ではなくて、連邦上院議員の3分の1の改選と、連邦下院議員ぜんぶの総選挙がセットだし、各州ごとだとそれぞれの州ごとや郡ごと、市ごととかでいろいろな選挙が行われることになっている。

なので、有権者は、投票所に行くと30分ほどかかるくらいにたくさんの選挙投票をいっぺんにやるのである。

日本では、そこまで煩雑でないのは、そもそも公職選挙法で選ぶ選挙投票の対象が限られているからである。
さらに、最高裁判所判事の国民審査なんて、あれはいったいなんなのか?

もちろん、地方検事を選挙で選ぶこともないし、都道府県にも市町村にも、司法長官すらいない。

逆に、選ぶ対象者が少ないので、名前と顔と本人のことをしるには、アメリカ人よりずっと有利なのが日本人のはずなのだ。
ところが、選挙期間がやたらと短いので、有権者として立候補者が何者なのかをしって判断するのが困難なのである。

それに、変な貧乏根性が働いて、「選挙広報」が薄っぺらい。

候補者各人それぞれが1ページを使うのだってまだ情報が少ないくらいで、見開き全ページが候補者ごとに割り当てられて、たとえばニューヨークタイムズの日曜版のごとく、分厚くなっても大いに結構なのである。

そこまで政見を語らないといけないのは、候補者に優しくなくとも、有権者には重要なことだから気にすることはない。
こんなことごときで、資源ごみが増えるとかの批判は、ナンセンスといって一蹴すればいいだけだ。

それを主張したいなら、選挙広報にそう書けばよい。

さらに、再選を目指す現職がどんな法案に賛成・反対・棄権したのかの実績を選挙公報には掲載してほしい。
新人なら、参考として、それらの議決に自分が議員ならどうするかも示させることだって、重要な選択のための情報なのである。

また、どんな議員立法に関わったのか?も重要情報だ。

人気のない現政権からしたら、第一に有権者には棄権してほしいだろうし、投票所にやってくる有権者には、わけもわからず適当に選んでもらえば、組織力を持ってして、少ない票でも結果的に有利になると皮算用している。

そのために、短い選挙期間で、既存議員の再選を目指すのは、不公平に他ならない。

こうしてみたら、わが国の公職選挙法は、あたかも、酒税法が徴税当局のためにあって、消費者や製造者に役立たないのとおなじなのである。

そうやってかんがえたら、これも憲法の思想に反していることがわかる。

さらに、べつに「裏金議員」を擁護するつもりは毛頭ないが、総裁の意向だけで、「比例重複」とか、「公認」を取り消されるのは、どういう党内規定があってのことなのか?
議員にとって、最大の関心事なのは、まさに「身分」にかかわる重大事だから、党内規定としてあらかじめルールがないのはおかしい。

しかし、何度も書くが、自民党は「近代政党ではない」という国際基準的にも日本ローカルそのものだから、ぜんぜん民主主義的ではなく、むしろ総裁やら幹事長の独裁が許容される政党だと告白したも同然なのだ。

この独裁政党を、だれも批判しない。

憲法に「国民主権」を書くなら、選挙期間は最低3ヶ月を要するとか、最高裁は積極的に憲法判断をすべきなのである。

政権与党のやりたい放題を観察すると、アメリカにおける「司法の武器化」はアメリカらしいアクティブさがあるけれど、日本における「司法の武器化」は、パッシブであることの大問題があることがよくわかる。

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