アメリカ大統領選挙の一つの山場が、5日の火曜日である。
候補者を選ぶための予備選挙は、大統領選挙の本選挙と似せて、「党員票」の獲得競争をやっているので、各州に割り当てられている「党員票数」が過半数を占めたら、その候補者が最終勝利者として正規候補になる、という仕組みである。
たとえば、ある州の党員票数が10だとしたら、その州予備選の勝者は、「10票(ポイント)」を獲得する、という意味だ。
5日は、15州で同時に予備選挙投票がおこなわれるが、この日の得票総数は800票以上になる。
いま、トランプ氏は200票以上を稼いでいるけど、5日に全勝しても、半数の1200票あまりには届かないので、もうしばらくは「お預け」の状態となる。
ただ、唯一の対抗馬たる、ニッキー・ヘイリー氏が、ようやく負けを認めて「撤退」を決めたから、この時点でトランプ氏が事実上の共和党候補となった。
そのニッキー・ヘイリー氏への大口選挙資金提供者たちが、先に「資金提供からの撤退」を表明してきているので、金の切れ目が縁の切れ目になったのだろう。
だが、彼女は自身が2期もつとめたサウスカロライナ州知事だったのに、同州で惨敗するという醜態を国民にみせてしまったし、とうとう「撤退表明」の場でも、予備選のルールである、敗者は勝者を支持すると表明するのが常識であるのに、トランプ氏を支持するとは言わず、ますます政治的な立場を失うという代償を払ったのである。
一方で、あくどいことをやってもトランプ氏に邪魔したい民主党は、「裁判」を武器化して、あらゆる手段で、あたかも「場外乱闘」を仕掛けているので、観衆はこれに嫌忌してかえってトランプ支持が増えるという予定外なことになっている。
なんだか、『チキチキマシン猛レース』のようなのだ。
一応、経営学では、目的や目標の達成にまつわって出てくる、予期しない別の負の結果のことを、「随伴的結果」と呼んでいる。
そんなわけで、共和党の予備選挙は続くが、撤退したヘイリー氏などへの、「トランプ批判票」がいかほどになるかも注目されている。
「あぶりだし」の効果も、予備選挙にはあるのだ。
なので、民主党の側もおなじなので、こちらをみてみると、なんとバイデン氏が、アメリカ領サモアで、無名候補に敗れるという「波乱」があった。
現職の大統領が党内予備選挙で敗れたのは、ジミー・カーター以来の椿事なのである。
この小さな島における波が、いったいどうなるのか?
それに、「候補者なし」に投じたひとの「得票数」も歴史的であるから、民主党におけるバイデン人気の衰退はめざましい。
それに、前日に出た最高裁判決で、国会が大統領職を決める権限をもつ、という判決文を根拠に、民主党は大統領選挙に負けても、同時にある上院(3分の1の改選)・下院(総選挙)で勝利し、トランプ氏の当選を認定しないという手にかけるしかない。
だが、そんなにうまくいくものか?
現政権への大きな批判に、イスラエル・ガザ支援に対して反対の党員が多数があるし、かえって独裁色を強める政権は、国務省ナンバー2だった、あの女戦争屋、ヴィクトリア・ヌーランドをとうとう国務省から追い出すこととなった。
けれども、後任が注目される当然がある。
なにしろ、引退の理由は、もっぱら「ウクライナの失敗の責任」といわれている。
これがほんとうなら、『ロシアより愛をこめて』の、クレッブ大佐 (Rosa Klebb)のような、使い捨てにされる感じがする。
この手の独善的な政権(これが独裁の典型)では、失敗するとこうなる、という、子供向けのアクションドラマのような展開になるものだ。
もちろん、成功を重ねてきた本人の方でも、自分が失敗するとはおもっていない、ので、失敗の原因を別に求めるものだ。
じつは、その原因が「組織」に行きつくのである。
そして、失敗したひとの特徴は、「部下」に原因を押しつけるが、自分が設定した、「目的や目標」のまちがいに気がつかない。
それで、随伴的結果のブーメランを喰らうけど、これすら他人のせいなのである。
さて、トランプ氏とイーロン・マスク氏が会談したけど、マスク氏は寄付を約束してはいないと「X」に投稿した。
彼らがなにを定めて、どんな随伴的結果がでるのかは、これからのことである。