A.I.は便利な道具か?

季節の変わり目で、デジタルの世界でも有名アプリの「大型バージョンアップ」が相次いでいる。
そのトレンドに、A.I.の進化も含まれるのが定番になっているのは、売りたい側の「新発売」イメージ戦略でもあろう。

さまざまなインフルエンサーがさまざまなアプリの機能アップに口を揃えて曰く、「このA.I.がメチャクチャ便利なんですよ〜!」と。

しかし、わたしからすると単に、「メチャクチャ」だとしかおもえないので、念のため書いておく。

まずはA.I.の回答そのもののテキトーさであり、平気でウソをつくことをしっていないとこの先の話にならない。
それもそのはずで、誰かが書いたプログラムに従っているのが、A.I.を装っているからである。

そのA.I.機能も、無料と課金の選択を迫られることになっている。

便利さを得るにはカネを出すことがふつうだといいたいのだろうが、ほんとうに便利なのか?ということについての検討が薄い。
なにも、ウソの回答を喜んで買う者はいないが、それがウソか実かを判断できないなら、詐欺だと訴えることもできない。

アプリによっては、インフルエンサーといういいかたではなくて、しっかりアプリの作り手と契約している「アンバサダー」というレベルのひともいる。
横文字になって立派にきこえるが、ようは、体のいいセールスマンである。

むかしは、駅頭とかで通行人にはなしかけて、見事なテンポで実演販売する「販売士」という職人がいた。
「フーテンの寅さん」は、香具師(やし:てきや)であったが、広い意味での販売士である。

対象は、やたらと切れる包丁だったり、鍋だったり、はたまた寝具に洗剤だったりと、なんでもありだった。

それが、テレビショッピングに進化して、とうとうアンバサダーになったのである。

アンバサダーを擁するアプリのおおくは、ビジネスシーンでの活用を狙っている共通がある。
業務用なら予算がついて、課金も許されるし、課金しないならビジネスで使えない、ように設計されているのだとかんがえればいい。

こうした販売先の対象を、第1世代、だとかんがえる。

たとえば、グラハム・ベルが1876年(明治9年)に発明した電話のばあい、わが国で実用化されたのは、1890年(明治23年)であったが、昭和生まれのひとでも当時の電話機の使い方にはとまどうだろう。

ハンドルを回しても、ダイヤルすらないのは、交換手を呼び出して、交換手が相手に回線をつないでくれるからである。
ダイヤルができたのは、交換手が人間から自動交換機になったからである。

戦後の一般的な「ダイヤル式黒電話」を、生まれたときから携帯電話がある世代にみせたら、そもそも何につかう機械かさえもわからないのである。
これは、「赤電話」であろうが「ピンク電話」であろうが同じなので、色によるちがいをいいあてることを期待してはいけない。

昭和最後の歌姫、中島みゆきの初期にある電話がからむ歌詞を理解できる世代が、確実に消えるのである。

このダイヤル式黒電話の世代をあえて第1世代と呼べば、すでに携帯電話の第2世代になって、その隔絶感は上の通りなのである。
よって、いま、いかさまなA.I.をもってしても「便利」だといえるのは、紙に手書き、あるいは、パソコンでもやたら紙に印刷して内容確認をやっていた世代の感覚なのである。

むろん、データベスを自身で構築(たとえば「マイクロソフトアクセス」を活用)して、ふつうに使いこなせる人材が社内にほとんどいなかったのとおなじ世代のことである。
しかして、いまのA.I.は、これを自動化して活用できることが、超優秀な秘書がいるごとく「便利」だとアンバサダーは強調する。

なるほど、とおもうのは、「アクセス」を使うことをしっている1.5世代のことであろう。

しかし、そのうちに第2世代に完全移行すれば、様相の次元もことなる。
はなから、A.I.を活用するという意味は、とんでもない異常にも気づかないリスクが単純に高まるのである。

いまのレベルだと、たとえば会議を録音して、それを単純に文字起こしすることから脱却し、A.I.が、発言者の声を分析して、議事録として編集までしてくれる。
これはたしかに、「時短」になるのだが、その議事録のクオリティーに対する担保ができなくなる可能性が高まることも第2世代以降ではありえるのだ。

しかも、そうやって「時短」ができるのはよいが、『パーキンソンの法則』が発動されたら、かえってムダばかりの職場になるおそれがあるし、『ピーターの法則』を地でゆく無能組織をわざわざつくることにもなる。

結局、A.I.の結果をどのように判断するのか?という人間の管理職が多忙になる、ということで、第1世代やら第1.5世代やらが引退したら、あたらしい無能世代が管理職になる可能性だけが高まるのである。

こんなことにも無頓着なら、すでにピーターの法則が発動していることになる。

ところが、十分にアンバサダーが稼げるのは、どこの国でも教育の高度化による文系職(法律やマーケティングらしき専門家)が増殖して、はじめは組織に寄生していた者がいまは組織を乗っ取ったから、社内エンジニアの専門知識よりも世間体を気にするようになったのである。

その典型が、ウクライナにおけるバイデン政権の対処で、これら寄生体の集団が「経済制裁」という法と金融・貿易をつかった方法しかかんがえつかず、肝心の弾薬・砲弾の製造が間に合わず、喉から手がでるほど欲しいというゼレンスキー政権の役に立たない姿がそれである。

いまやエンジニア系の学位取得者(修士・博士)の数で、アメリカはロシアに圧倒されている。

そんなわけで、A.I.なるものが、安定供給(バージンアップ)されるかもじつはわからないのが現状なのである。

ここにわが国のチャンスがあるのだが、日本でもエンジニア育成の衰退が著しく、もっと収入が得られるだろう金融やら弁護士といった虚業に人材が消費されている。

これらこそ、A.I.に取って代わられる分野なのに、なのだ。

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