「蟻の一穴」という言葉がある。
巨大なダムも、蟻があけた穴から漏れた水が、自身の水圧で決壊してしまうことだってある。
だから、止めている圧力が高いほど、盤石に見えるものほど、あっという間に崩壊してしまうことがある。
ソ連・東欧の体制崩壊もそうだった。
さて、「情報シンジケート」とは、アメリカを例にすれば、大手既存メディアとビッグテックといわれる巨大化した情報メディアが提携してつくった、「独占形態」のことをいう。
「カルテル」の発展形でもある。
物質的な商品の独占とはちがって、情報の独占という事態は、過去にはないことだけど、それは、「すっぱ抜き」に象徴されるように、むかしは「聞屋」だって、取材競争をしていたからのことだった。
ところが、ネット情報が普及すると、「すっぱ抜き」が困難になった。
事故や犯罪の「現場」を、スマホで撮影したひとが、すぐさまネットにアップできるから、「速報性」すらテレビから失われたし、国会も中継だけでなく、ちゃんと録画して保存もしていて、国民は観ようとおもえばいつでも観られる。
だから、新聞は、「これ」という場面を指定した「動画リスト」を報じるだけで、生情報に国民を誘導できるのに、いつまでたっても独善的な「記事」を書いている。
それで、新聞は1日遅れの記事を有料で読むひとが絶えたので、「解説」やら「意見」が、読み物として重要になって、とうとう「編集方針」による、記事の校正・削除をもって、一定思想に基づくプロパガンダ紙に変化して、これを支持する特定人の「好み」に応じることとなった。
こうした、マーケティングが正しいかどうかは問題ではなくなって、一定思想のプロパガンダが重要になったのである。
そこには、一定の購買層がいるからである。
わが国は、テレビ局とラジオ局を、新聞社の子会社とする政策が、田中角栄によって実施されたので、とっくにシンジケートどころか、「合体」していたから、いまだにあんがいと目立たない。
しかし、アメリカやヨーロッパでは、「民主主義」のために、情報の公正さを建前とするので、こうした「企業統合」は御法度だ。
そこで、読者や視聴者がしらないところでの「シンジケート化」が行われた。
つまるところ、国家が主体となることなしに、企業が連絡しあって、情報統制(=検閲)を行う、歴史初が起きたのである。
これで、新聞社・ラジオ局・テレビ局・GAFAが、特定の情報「しか」流通させない、という合意をして、国家ではなくこれら企業が決めた情報から外れるものを「削除」の対象とした。
そしてそれが、「民主主義の輸出」を旨とする、アメリカ民主党とその有力者、あるいは強力な寄付者の支持を得たのは、その特定の情報こそ、民主党に有利になるものばかりであるからだった。
繰り返すが、アメリカ民主党とは、スターリンに権力闘争で敗れたトロツキーが乗っ取ることに成功した、「革命政党」なのである。
よって、ソ連共産党が崩壊してから、いよいよ本性をあからさまにしてはばからないのは、スターリンへのルサンチマン(怨恨)の発露があるからだろう。
けれども、このひとたちは、「正統の共産主義・全体主義者」なので、スターリンへの怨恨といっても、この独裁者がやった自国民の虐殺に対する怨恨ではないから、やっぱり「ひとでなし」なのだ。
イーロン・マスク氏が買収した、Twitterに関して、氏は「フリー媒体」にすると言明した。
そこで、「情報シンジケート」各社から、裏切り者に対する「一斉の制裁」が叫ばれている。
GAFAのなかのふたつのA、アップルとアマゾンは、Twitterアプリの配信停止を示唆した。
iPadの愛用者であるわたしとしては、実に心苦しい。
なぜにアップル製品を使わなければならないかをかんがえたときに、自己矛盾のかたまりに苛まれる。
アマゾンもしかり。
結局のところ、株式を一般人が分散して保有していない、ということに原因がある。
特定の大株主が、特定企業の経営を担うのは、かくも重大なリスクを社会にもたらすことになってしまった。
トランプ氏を「独裁者」だといって批難しているひとがいまでもいるけど、どこの独裁者が自身の発言を検閲されるばかりか、アカウント削除という、「言論封殺」の目にあうものか?
すると、企業統治の原点に立ち返れば、株式の保有制度をどうするのか?という問題が、なんと、国家の運営=政治・行政よりも重大なことになったのである。
さてそれで、Twitterがフリー媒体になると、情報シンジケートの情報統制が崩れるのは当然だ。
どんなシンジケートでも、「抜け駆け」に弱いのである。
抜け駆けさせない最大のインセンティブは、「独占」によるメリット享受なので、その独占を拒否する者が出現したら維持できない。
つまり、どんな「妨害」も、意味をなさないから、Aがつく会社がとらんとする方策は、それ自体が「両刃の剣」となる。
そんなわけで、Aがつく会社が自らを貶めるのをみることで、無力な消費者は溜飲を下げるしかない。
ほんとうは、これらに代わる製品・サービスがあったらいいのに。
そんでもって、マスク氏は、Twitterで、民主党から共和党への「乗り換え支持」を表明したのだった。