生涯教育と縄文

還暦を過ぎた、という意味には、齢(よわい)を重ねたことだという「だけ」では「浅い」話になる。

だいたい、小学校を卒業して「半世紀」も経った、という意味もある。
たった3年で中学校も卒業するから、ざっと義務教育を終えてから半世紀といえるのである。

分母が10代のときの6年間とか3年間の、あわせたら9年間の「義務教育期間」は、高校を卒業する18歳でも、人生の半分に相当する時間だ。
けれども、人生は「それから」が「本番」だから、気がつけば分母の数が増えていって、この期間の重みが軽くて薄くなるようになっている。

「薄くなる」のは、とくに「習ったこと」の価値をさす。

ほとんど「不変」なのは、「算数」と「数学」だけで、あとの教科は、「学術的発見」に満ちているから、どんどん変わる。
すると、学校で習ったことが、どんどん「陳腐化する」ということなのだ。

これにはちゃんとした「仕組み」もあって、そもそも「教科書」の「改訂」がこの変化についていけないようにできている。
だから、世間が知っているあたらしい発見を、学校でちゃんと教わるかは、担任や担当教師の能力に依存しているのである。

しかし、現実は、教師個々の能力だけでなく、学年主任や教頭・校長の意向もあるし、なによりも教育委員会という、得体の知れない機構が命じることを、校長以下はあがなうことができない仕組みもある。

GHQが、「民主教育」のためにつくったという教育委員会には、日本人から日本人意識を奪う、という「戦争犯罪」があったので、「民主的」という名分でこの「犯罪」を日本人に実行させるという、白人による植民地支配の「セオリー」が適用された。

むかしは、なぜかフォックス型のつり上がったメガネをかけて、「ざぁます言葉」をしゃべるイメージの、「教育ママ」がいて、「PTA」でいろいろ発言していたけれど、最後の駆け込み寺が、教育委員会であったし、「教育委員」になるための行動をしていたひともいた。

どんなふうに教育委員が任命されるのか、いまはほとんどのひとが知らないところで決まっている。
GHQの本国アメリカでは、「公職」なので「選挙」が常識だけど、日本では採用されなかった。

ちなみに、「公安委員」だって、おなじようにどうやって任命されるのか?は、ほとんど誰も知らないのとおなじなのである。

つまり、委員会の委員の選び方が、ぜんぜん民主的ではない。

それに、「事務局長」だったはずの、役人の「教育長」が、これまた知らないうちに、事実上の「教育委員長」になったのは、教育委員から「長」を決めるのをやめて、委員長不在の、「世にも珍しい」委員会機構になったのだった。

そんなわけで、子供たちが習う「算数」と「数学」以外の教科が、どれほど「遅れているか?」がわからないまま、おおくが「暗記問題」になって、とうとう「受験」という人生の分岐点に集約されることになったのである。

すると、受験で優秀な成績をおさめる者は、あたらしい学術的発見の情報すら、「暗記の邪魔になる」ということになる。
それでもって、社会に出たら、あたらしい学術的発見を重視することもないのは、「成功体験」がそうさせるからである。

これが、「硬直社会」をつくる、ひとつの仕組みだとかんがえられる。

さてそれで、近年の日本人にとっての、「画期」は、「縄文時代」の「縄文人」が、どんなひとたちだったかが、DNA解析でわかってきたことにある。

DNA解析には、母系をたどる「ミトコンドリアDNA」と、父系の「核遺伝子:Y染色体」とのふたつがある。
ちなみに、ミトコンドリアは、生命の歴史上の画期のひとつで、オリジナル細胞に入り込んだ「他の」ウィルスだということがわかっている。

われわれは、自分とはちがう他のウィルスも一緒になった、「合成生物」なのである。

縄文人は、3万6千年前から日本列島に住んでいたことが判明した。
それで「母系」を調べると、さまざまな民族(30種類ぐらいで主に中国南部やベトナム)の「混血」だったことがわかり、「父系」を調べると、「断絶がない」こともわかった。

これは、虐殺やジェノサイドがないことを示し、連続性の証拠になっている。

さらに、山に住む縄文人と、沿岸に住む弥生人が、千年単位で交わったこともわかってきたのである。
これは、「山幸彦」と「海幸彦」の伝説と合致している。
皇室は、山幸彦の系統にあるから、縄文人を先祖にしている。

また、現代日本人のDNA解析では、半数のひとが縄文人の譜系にあることもわかった。
はるかに「あたらしくなって」記紀(古事記・日本書紀)の時代の人口は、300万人程度だったと推定されている。

すると、ほんとうに、日本人は全員「親戚」にあたることは、まったくうそではない。

こうしたことが、「生涯教育」の場を必要とする理由にもなっている。

すると、なによりも「暗記」による成功体験が、どれほどの害毒を日本人にもたらすかが、わかるのである。

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