「仕組み」を理解する訓練

コンサルにも「現場」は当然ある。
経営者との方針確認や、従業員さんたちとの会話や教育研修も、ぜんぶ「現場」である。

相手は、さまざまな業種でもあるし、企業である。
成り立ちからしてぜんぶ違うので、その都度まったく別々の対応が必要となるのは当然だ。

しかし、ある程度の「共通問題」がある。
それが、「仕組みの理解」における、「深度」なのである。

組織目標に対して仕組みの理解が、「浅い」場合は、まず経営者本人に深めてもらわないといけない。
成長や業績の、「もっと」を経営者が求めるときは、従業員たちへの深度を深める努力が有効になる。

こうしたことをやっていると、確実に組織は良好な方向へ向くから、結果的に、まず悪いことにはならない。
この、「悪いことにはならない」という状態が、どれほど重要なのか?ということに気づく経営者は、「仕組みの理解」が「深い」といえる。

残念な経営者は、「目に見えて良くなる」ということにこだわる傾向があって、「悪いことにはならない」という状態を、「当然」とするので「無視」する。
つまり、「悪いことだらけ」の状態が、「悪いことにはならない」となっても、その効果を区別できないひとがいるのだ。

「仕組みの理解」が「浅い」という意味がわかるだろう。

けれども、こうしたひとがひとり悪者だと決めつけたところで、なんの解決にもならないのが、コンサルの現場、なのである。
業績不振企業なら、対象者が経営者の場合がほとんどだからである。
つまり、「経営者」にわかってもらわないと、なんにもならない。

厄介なのが、その経営者から依頼されるのが、外部コンサルタントだから、たちまちここにジレンマが生じる。
ジレンマの、「ジ」とは、二つのという意味だ。
三つなら、「トリ・レンマ」という。

一つは、その経営者自身が、わからないことをわかっていないこと。
一つは、その経営者自身が、わかろうとしないこと。

それでもって、コンサルタント料金を頂戴しなければならないのだ。
そこでまず、気づいてもらうための「あの手、この手」をかんがえる。

「脈がある」ばあいは、早期に気づいてくれて、「わかろうとしてくれる」ようになる。
こうなれば、「わかるように」指導できる。

「脈がない」ばあいは、一向に気づくことがない。
残念ながら、これは、「お手上げ」なので、こちらから退散させていただく。

そんなわけで、退散することがあんがい多い。
これはこれで困ったことになる。
だから、ほんとうのジレンマとは、このことである。

どうしてこういうことになるのか?
ふと気がついたのは、「仕組み」についての思考訓練を受けたことがない、からではないのか?という「仮説」だ。

事実上の個人経営者のばあい、家業を継ぐためのパターンは二通りで、学校卒業後すぐに家業に就くばあいと、いったんどこかに就職してから、家業に就くばあいとがある。

前者なら、学生時代におけるチャンスと、家業のなかでのチャンスがある。
後者なら、いったん就職した会社でのチャンスもある。

すると、最初の共通項は、学生時代という当たり前がある。
なにせ、わが国は小学校・中学校の9年間が義務教育で、これに実質高等学校の3年間も加わっているし、さらに進学希望者の全入が達成されている大学もある。

ここで、どんな課目や授業で、「仕組み」の訓練を受けるのだろうか?
本人や教える側の双方がちゃんと認識しているかは怪しいけれど、もっとも単純な「仕組み」を習うのが、「算数」なのである。

1と1を足すと2になる。

ここからはじまる、算数とは、単純な仕組みの組み合わせ、なのである。
中学から「数学」と名称は変えるけど、数式で表現できて、計算もできて、ちゃんと答が決まっている、ということは変わらない。

しかし、実際の世の中は、数式で表現できないから計算もできず、答が決まらないことにあふれている。

すると、「仕組みの理解」とは、まず「算数」における「仕組みの理解」が重要な要素だとわかるのである。
そして、社会に出れば、「答えがない」ことを前提にせざるを得ないので、かえって「仕組みの理解」に戻らないと、判断のための論理展開ができないのだ。

これが、残念な経営者とそうでない経営者の分かれ道なのだ。

残念な経営者は、「仕組みの理解」がないままに、いきなり、数式で表現できないから計算もできず、答が決まらないことに、無理やり答えを出してしまうので混迷するのである。

ならば、こんな教科書がある。
ノートを用意して、自分で訓練を受けてみよう。
なお、本書には、「算数を学ぶことの目標」も記載されている。
あんがい、この「目標」をしらないままでおとなになっている。

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