「第三者委員会」をゆるす株主

これだけ世の中に「不正」がはびこると,「不正」の重みも軽くかんじてしまう.
役所も民間も不正がばれると,「第三者委員会」なるものがたちあがる.
あたかも「中立の他人」です,という風情だが,このひとたちを臨時雇用したのは役所や会社だから,費用は税金だったり会社の経費になる.

「組織統治ができなかった」ことで発生するのが「不正」だから,民間なら経営者がその責任を負うのが当然であるが,またぞろ自分たち経営者が招集した「第三者委員会の結論を待つ」などと平気の平左で発言して,だれも変だとはいわないおかしさができた.

国家公務員や地方公務員の不正は,それがあきらかになれば即「事件」であるが,こちらもだいぶ緩やかで,首相や首長の責任論でごまかせる様相がパターン化されつつある.
教育委員会という行政組織での「不正」は,役人が役人の不正に頭をさげていて,首長が他人を演じられる便利さまで明らかになった.

国のばあいは,もう政権を二度ととるつもりがなくなった「野党」のおかげである.もし,政権交代を真剣にかんがえる政党ならば,こんなインチキ公務員たちが跋扈していたら,自分たちの政権でも不正をするだろうから,首相の責任論で押し通す愚はできない.

「第三者委員会」の「委員」には,弁護士が選ばれることがおおい.一般に「有識者」といっていたが,「有識者」の「識」に国民が敬意をはらわなくなったから,国家資格でいちばん難しい「弁護士」をあてれば,なんとなく説得力があるはずだ,ということだろう.
それで,どんな人物なのか?よりも「弁護士」という資格が前面にでたのはいいが,いかんせん肝心の「委員会報告」の内容がショボいものばかりとなった.

これは「弁護士」という看板を守る側の沽券にかかわるから,あの日弁連をして「第三者委員会のガイドライン」をつくるはめになった.
それで,この「ガイドライン」に沿ってやればよかろう,というのだが,「沿ってやってます風」ばかりで内容がやっぱりショボい.

それはそうで,「第三者委員会」の雇い主は会社の経営者だから,弁護士としてはクライアント先を守るのが本業という,ごく当たり前の態度になった結果だろう.
それではやっぱり沽券にかかわるから,「第三者委員会の評価委員会」というのができた.こちらは,なんと「無報酬」である.

A~Fまでの6段階で評価する.
これまでに主だった事案を評価したが,A評価はゼロ,Bすらみあたらない.
そして,評価者の名前と評価点も公表している.
つまり,「無報酬」のこの「評価委員会」がもっとも信用できるというさまになっている.

そこで,思うのだが,経営ができなかった経営者が会社のお金で雇うのではなくて,株主が「第三者委員会」を立ち上げなければいけないのではないか?
すると,委員会立ち上げのための事務局は,監査役になるのではないか?
こうしてみると,日本企業における監査役が,あまりにも無役・無力なのがわかる.

その意味で「不正」した企業の監査役が,本来はもっと糾弾されてしかるべきで,そうやってものを言える監査体制がつくられることになるのではないかとおもう.
でなければ,株主から監査役廃止論がでてもよさそうだ.
このように,株主が「第三者委員会」を立ち上げれば,その結果,経営者の無能が明らかになったところで,きちんと解任も,提訴や告訴もできるだろう.

さて,以上のはなしのなかに,ルールをつくってもうまくいかないことが組みこまれていた.
「ガイドライン」があっても,なかなかその通りにはいかない.
これは,そのまま公務員にあてはまる.

とくに,「キャリア職」で採用された一般に「官僚」と呼ばれる上級職公務員には,ほとんどリスクがないし,組織内で「ガイドライン」を策定する側になる.
だからよほどの「倫理観や使命感」がないといけないようになっている.
ここに問題の本質がある.

個人の「倫理観や使命感」に依存した組織は,組織ごと腐る可能性が高くなるからだ.
下級武士がつくった明治政府は「幕府」の復活をなによりもおそれた.
それで,上士(位の高い武士)に後ろ指を指されることがないように,高い倫理観と使命感で新政府をつくった.そして,これがいつしか「建前」になった.

本質的に,わが国の官僚制は,明治政府を継承している.その証拠に,敗戦で責任をとった軍人や政治家はいたが,官僚はひとりもいない.
つまり,この「建前」があるかぎり,高級官僚はどんなに傍若無人なふるまいをしてもゆるされる,と勘違いするのである.

法治国家の官僚には,この「建前」は必要ない.
だから特権もない.
だったら,だれも官僚になんかなりたがらなくなる.
それでいいのである.
優秀な人材は,官ではなく民にこそ輩出しなければならない.

そのためにも,まず「第三者委員会」は,株主が立ち上げなければならない.

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