「TPP」亡国論のいま

日本側からの視点だけが議論になっていた、という特徴が、この「亡国論」の「亡国的」ゆえんであった。

二国間だけでもそうだけど、ましてや多国間の貿易協定ともなれば、その複雑さは「立体パズル」の比ではない。
じつは、二国間協定だって、両国の産業構造の「ちがい」をイメージしたら、すぐさま「立体パズル」の比ではなくなる。

経済学部の学部生が初期に学ぶ、貿易モデルは、なんといってもリカードの「比較優位説」である。
日本的な説明では、ミカンとりんごを生産物として、A国とB国との貿易を議論する。

はじめのうちは、小学校の算数じゃあるまいしと、小馬鹿にしている学生も、たちまちにしてなんだかわからなくなってしまうのだ。
それで、貿易論なんか履修しなければよかったなぞと、授業をさぼった学生が、期末試験前に苦悶するが、毎年の風物詩にもなるのである。

貿易をすると、それぞれの国が豊かになる。

これが、「まっとう」なのは、「まっとうな理屈」を、「まっとうに実践する」からであって、理屈を歪曲したり、実践方法を歪曲したりしたら、たちまち「まっとう」が壊れて、一方的な損ではなくて、両国の民が損をしかねない。

だから、将来、指導者となる人材を育成する、という社会的使命を帯びている「大学」において、リカードの「まっとう」を学ぶことの意義は、ただ「貿易論」という範囲だけにとどまるはなしではない。

しかし、詐欺や掠奪を基礎的な文化に置くヨーロッパやアメリカ人は、「まっとう」を平然と歪曲して、このルールづくりに関与した「自分」が儲かるようにしたりする。

「自分以外」の自国民や、ましてや他国民の損を、なんとも思わぬところが、詐欺師の遺伝子がなせるところなのである。

そんなわけで、TPPも、「アメリカの陰謀」だという「論」を主張するひとがいて、これを推進する日本政府の無様を嘆いていたのだった。
ところが、ちょうど政権交代があって、もっとおぞましいトランプ氏が大統領になったら、あろうことかサッサと「脱退」してしまったのだ。

どんな理由でアメリカ側の脱退をさせたのか?
なんと、トランプ氏が言ったのは「アメリカは一方的に欺されている」という「陰謀論」だったのである。
つまり、名指しこそせずとも、それは間違いなく「わが国のこと」だ。

ならば、わが国側で「アメリカの陰謀」を言っていたひとたちはどうしたのか?といえば、全員がただちに「沈黙」して、逃げていってしまった。
以来、わたしは、このひとたちの言論を信用しないばかりか、けっして読んだりして近づかないように心がけている。

だから、読者であることをやめた。

アメリカが抜けたTPPは、完全に日本主導の多国間貿易協定になったけど、妙に「鳴かず飛ばず」なのは、日本が独立国ではない、といういまの国際社会では隠しようのない「常識」に、当時もなってしまっていたからである。

当時といっても、占領時から、となる。

だから、戦前・戦中のように「一等国」としての「独自外交」をする、気力さえも最初からないのはわかっていた。
問題は、アメリカ主導のはずだったことの方で、そのアメリカとは、わが国を二等国以下に貶めた張本人である、アメリカ民主党オバマ政権だった。

すなわち、トランプ氏が骨髄反応して脱退したのは、協定の中身をみて詳細を検討するまでもない、民主党の邪悪を熟知していたからだとかんがえるのが「妥当」なのである。

そんななか、17日、バイデン大統領は、「インド太平洋経済枠組み(IPEF)を、突如発表し、23日の初来日時に岸田首相と会談して「発足を宣言する」とした。

すると、事前に水面下での交渉があったはずだが、詳しくはわかっていない。

中身については、「反汚職」が明記されていることが、なんだかバイデン氏らしい。
自分のことを棚に上げるのがもっとも得意な御仁である。

中共への当てつけに見せかけて、あんがいと「日本的やり方」をターゲットにしているかもしれない。
その事例としては、「大蔵省」を事実上の解体に追い込んだ、あの伝説の「ノーパン・しゃぶしゃぶ事件」があるからだ。

「係長級」が接待されたのを、省をあげて、に「盛り込んで」対米強行をいうキャリア幹部の排除に成功したばかりか、金融庁というアメリカ金融界の御用聞きを新設させたのだ。
こういった「手法」で、アジアに展開する日本企業をやり玉にするかもしれないのだ。

しかして一方、自分もオバマ政権の副大統領だったのに、「TPP]すら棚に上げてしまった。
この「無責任」を、またまた棚に上げて、トランプ政権のアジアコミットが「なかったこと」を批判している。

わが国を含めて、「二国間協定」にさせられたのを、一方的に無視した発言こそ、各国が呆れる「無能」なのである。

そんなわけで、「TPP亡国論」は、またもや肩すかしを食らうことになった。

ならば、「IPEF歓迎論」をいうのだろうか?
念のため、チェックすることにしたい。

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