あまりにもわが国の経済に、むかしからのアメリカ主流派経済学のセオリーが効かないものだからかしらないが、かってに向こうで「すでに日本はMMTの実験をはじめている」と信じているようだ。
そうではなくて、わが国経済モデルがすっかり社会主義経済になったから、資本主義の主流派経済学が通用しないだけだろう。
インフレがおこらなければ、政府債務はいくらでもふやせる、とういうのがMMTの基本的なかんがえかただ。
アメリカの左翼経済学者が主張しいるのは、ケインズを前面に出せなくなっても公共投資の強化に便利だからだろう。
日本では、アベノミクスによる日銀の金融緩和で、おそるべき資金を市場に提供してきたが、ぜんぜんインフレにならない。
日銀による資金の提供方法とは、日本国債の買い入れ、とか、日本株の買い入れ=購入分のおカネを市場へ提供するものである。
これでどんな「効果」がうまれたのか?
日本国債の市場が、日銀の買い入れを前提とした「市場」になった。つまり、自由な取引がほとんどない、という状態になった。
また、同様に、日本株の市場も、事実上日銀が買い支えているから、株価が経済状況をモニターするものではなくなっている。
だから、あいかわらず「日経平均が」どうのこうのといっても、そのどうのこうのは、「日銀さま~、おねが~い」としかきこえない。
これに、黒田総裁が目の下にクマをつくって、まだまだ緩和しま~す、というのだから、もう病気だ。
こんなになんかいろいろやっているつもりでも、新築の住宅にしか資金供給しないから、とっくに住宅バブルが発生している。
金融危機を始末したけど、フラフラになったアメリカ経済を立て直したのは、日本のマスコミはいいたくないがトランプだ。
かれの経済政策は、あんがい的を射ていて、就任してすぐさまやったのが「大規模減税」と「規制緩和」だった。
アベノミクスの学問的指導者だった浜田宏一先生も、とっくに「金融緩和」より、「減税」がきくと転向してしまった。
これには前例があって、大幅減税と規制緩和も、次元をこえたレベルで=過去のしがらみにとらわれず、実行したのは、トランプとおなじく共和党のレーガン政権だった。
けっきょくのところ、民間の力を信じるかそうでないかで決まるのだ。
民間の力を信じるアメリカと、ぜったいに民間はバカばかりだと信じる日本のちがいが、ここにきてはっきり勝負がついてきた。
ほんとうに日本経済をよくしたい、というなら、財務省を解体するしか方法がない。
ところが、税務署がこわくて野党もこれが言い出せない。
政府は民間がうごきやすいようにする計画をしろ、といったのがハイエクで、政府は経済運営計画をたてて民間に命令しろという社会主義とは真っ向180度のちがいがある。
これが、バブル崩壊から30年もの停滞をつくった原因の本筋だ。
なのに、まだこれをつづけようという安倍政権のかわりがないという無様で、それは野党の無様でもある。
国民はあたらしいか、ふるいかにかかわらず、もうかる仕組みがほしいのだが、それは、単純に、政府=役人がもっている数々の権限・規制を撤廃してほしいにつきるのである。
消費税率をあげるか現状の維持なのか?がいろいろいわれているが、このさいMMTでいけば、消費税をゼロにしたっていいのである。
同時に、政治家は、社会保障費の構造にたいして、従来の制度が適用されるひとたちと、そうでないひとたちとにわけて、そうでないひとたちには民間の保険やじぶんで積み立てることを利用するように仕向ければよい。
デジタル決済を利用するなら、消費税の減税分を自動的に積み立てるような金融商品ができたっていい。
こうしたサービスの導入しか、わが国でキャッシュレス決済が普及しないのではないか?
ぜんぶを国家が面倒をみるというイリュージョンを、はやく「できない」と表明することが、この国を救うのだ。
けれども、それができない。
国民を「国家依存」させることこそが、国家権力のエネルギー源だったからだ。
すると、国民側は、いつ何時でも、国家をたよらないで生きていけるように自己防衛していないと、平気で「棄民」されてしまうリスクがあることに気づかなければならない。
妙な損得勘定しかしないやからが、イギリスのブレグジットを「大損だ」というが、誰にとっての大損なのかという主語が抜けている。
すくなくても、英国人が損をする、といいたいのだろうが、それなら「ブレグジット党」の支持が既存政党をはるかに抜き去っている現象をどうやって説明するのか?
この政党は、「合意なき離脱」をうったえて、それが国民にひろく支持されているのだ。
保守党の「玉虫色の離脱案」や労働党の「離脱反対」が、まったくの支持をうしなってしまった。
来週22日のEU議会選挙にイギリスは参加を表明せざるをえなくなったが、7月に下院が議決をめざすというから、「リーマン級」のショックがおきる可能性がある。
それは、「合意なき離脱」を意味する。
こうして、わが国の秋の消費増税が見送られるとしたら、根性ある英国人のおかげである。
とうとう、課税問題までも「他人まかせ」になってしまう国になった。