ただいまスタグフレーション準備中

不景気(recession)というほどではないけれど、景気後退(Stagnation)しているのに、インフレーション(inflation)が起きることを、スタグフレーション(造語:stag+flation)といって、70年代の石油ショックを背景にした米英で「景気停滞中の物価高」というあたらしい経済用語になった。

これが、「あたらしい」のは、古典派経済学では、起こりえない、という学問的常識があったからだ。
そんなわけで、音楽でいう「新古典派」と同様に、経済学にも「新古典派」が頑張ることになった。

当時は、米ソ冷戦時だったので、新古典派は反マルクス主義だったけど、ソ連の情報統制と宣伝が効をなして、あたかも「5ヵ年計画」がなんとかうまくいっているようにもみえた。

もちろん、そんなはずはない、ソ連経済は破綻の危機にある、という主張もないではなかったけれど、人間の「希望的観測」が、そのまま理論化されて、ポール・サミュエルソンの数理モデルをして、「新古典派統合」が一世を風靡した。

一般に、新古典派とケインズ理論の「統合」と、いまだにオブラートに包んだいいかたをしているけれど、ケインズ理論とは「政府が分配する」社会主義経済のことなので、「マルクス経済学」というありもしない欺瞞との親和性どころか、マルクス経済学を数理モデル化したともいえるものだ。

これがあの有名な、『サミュエルソン 経済学』(都留重人訳、1974年(原書第9版)、岩波書店)となって、アメリカもしかり、わが国の大学での「標準的教科書」といわれていた。

  

つまり、日米ともに、有名大学の経済学徒は、サミュエルソンを通じてマルクス経済学を学んでいた、ということになる。
その成果が、いま、日米それぞれの政府・官僚を、なにかに取り憑かれたような社会主義化に邁進させているとおもわれる。

また、これを強力に支援・推進しているのが、アメリカでは民主党左派だ。
日本では自民党・公明党だけでなく、ほぼ全野党も同類なので、アメリカを基準にすれば、「急進左派=共産主義右派」の体制になった。

なお、公職選挙法でいう「国政政党」でこれから距離を置くのは、参議院に1議席をおく参政党だけになっている。
つまり、わが国の「真の野党勢力」は、参議院に1人だけ、というおぞましい大政翼賛状態にある。

わが国の民主主義は、瀕死の危篤状態なのだ。

それが証拠に、いっさい懲りないマスコミは、なにかを隠すために連日特定宗教団体の話題をあげて、とうとう内閣もこれに迎合し、この特定宗教と「自民党として手を切る」などという世迷い言から、内閣改造も実行した。

しからば、政権与党のもう一つの政党の、特定宗教団体との関係をどうするのか?は、ぜんぜん「別」なのである。
これには、憲法で保障された、「信教の自由」があるからなので、立場的に公明党の言い分の方が正しい。

逆に、自民党は、他の仏教系とか、神道系の宗教団体とどうしようというのか?は、完全に頬っ被りなのだから、まるで下手な「安来節」を観させられている気になるのだ。

しかし、これら一連の「報道」を、いつもの「出来レース」としてみれば、着々と政府が用意している「炭素税」を隠すための方便だとわかるのである。

それが、6月7日に閣議決定された、『新しい資本主義グランドデザイン』である。

この中で、償還財源不明の「GX経済移行債」という名の国債が、発行準備されている。
「GX」とは、政府の「DX(デジタル・トランフォーメーション)」からの「派生形」で、「グリーン・トランスフォーメーション」のことをいう。

横文字で「なんとなく」を醸し出す、小池百合子都知事の言語用法をパクったにちがいない。
おそらく、財源は、すっとぼけた大臣やらに発言させて、これまた「カーボンニュートラル」とかの横文字で、しらっと「炭素税を創設=増税」するのだろう。

秋には電気代の値上げがスケジュール化されているので、国民負担はグッと重くなること確実なのに。
こうして、エネルギー政策で自滅したドイツの後を追う。

これぞ、「敗戦国の悲哀」だ。
それもこれも、世界経済フォーラム:ダボス会議の決定に従っている「国連」を、相変わらず「敵」だと忘れた結果なのである。

そんなわけで、昨年の衆議院選挙でも、こないだの参議院選挙でも、一切口外しなかった「新税創設」という大政治課題を、しらっとやってのけようという魂胆は、国民不在をこえた「奴隷扱い」にほかならない。

ひるがえって、日銀がなにをやっても達成できなかった、「インフレ・ターゲット2%」が、原油高だけでない資源不足と円安で、あっという間に実現した。

おそらく、日銀はあたかも自分たちの金融政策の成果だと言い張るだろうけど、こんなうそは小学生だって見抜ける。
逆に、だからといって金利を上げることもできないから、円安どころか暴落にもなりかねない。

つまり、ノーコンのインフレで、50年の「遅れ」をもって、70年代のスタグフレーションに苦しんだ米英経済に「追いつく」ことになった。
彼らは、「自由主義」をもって痛みを伴いながらも克服したけど、わが国は「新しい資本主義=ダボス会議がいう共産主義」をもって対処すると、これだけは「公言」している翼賛会が仕切っている。

要は、わが国は「自滅」のスタグフレーションへ向けて絶賛準備中なのである。

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