もはや「左翼」というよりも、いまオリンピックをやっている「党」に支配されているといった方が正確になったのが「ハリウッド」だ。
『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990年)でアカデミー助演女優賞、『天使にラブソングを』(1993年)で主演して一躍人気者になった、ウーピー・ゴールドバーグの発言が「炎上」している。
なにを言ったのかといえば、「ホロコーストは人種差別が原因ではない」という一言だという。
彼女は黒人なので、「ユダヤ人も多くは白人だから、白人同士でやったこと。だから、原因は人種差別ではない」というのには、説得力がある。
しかし、「ホロコースト博物館」とかの関係者や、「その筋」のひとたちが絶叫マシン化しているようだ。
ウーピーが読破したかどうかは知らないけれど、別の「その筋」で有名になっているのは、イェール大学の歴史学者、ティモシー・D・スナイダー教授が書いた、『ブラックアース』や『ブラッドランド』などである。
このひとの特徴は、言語にたけていることで、ロシア語をはじめ東欧諸国の言語をふくめて十数カ国語に精通していることだという。
それで、各国の研究書を直接読破、横断して、あたらしい歴史的発見をしている。
ここに、注目すべき指摘があって、それが、「ヒトラーの思考の解析」における、驚くべき「ホロコーストの真実」なのだ。
1923年、「ミュンヘン一揆」によって有罪になったヒトラーは、バイエルンにある「ランツベルク刑務所」に収監された。
彼が入る前から、この刑務所の「政治犯」は、懲役の免除などあんがいと自由な状態になっていた。
それでか、ここでの8ヶ月間で、『わが闘争』を構想し、口述していた。
しかして、その脳裡には、どうしたらドイツが英国やフランスのような「植民地大国」になれるのか?を熟考していたのである。
もちろん、「第一次大戦の敗戦」での巨額賠償があることも、知らないはずはない。
それに、残念なことに、「後発」のドイツには、地球上で植民地にする「空き地」はもはや存在していなかった。
そこで、彼が目をつけたのが、「アメリカ民主党のやり方」だったのである。
これが、先住民を皆殺しして、彼らの土地を奪い、生き残ったひとを奴隷にする、というものだ。
そうやって手にいれた土地を、「破格の廉価」で支持者に分け与えたのが、民主党初の大統領アンドリュー・ジャクソン(第7代)だった。
そしてそれが、ヒトラーの脳裡には、ドイツ内外のユダヤ人であり、ポーランド人、チェコ人であり、ロシア人に見えたのだった。
実際に、教授の分析によれば、「ホロコースト」の対象になったのは、ドイツ国内のユダヤ人よりも、その外にいたひとたちの方が多数だったし、彼らを捕らえたのも、ドイツ人よりはるかに多い、外のひとたちだった。
分け前に預かりたい、多数を「利用する」ということまで真似たのだ。
そんなわけで、ウーピーの意見は、(はからずも)的を射ている。
しかし、これはこれで、民主党の黒歴史への強烈な皮肉になるから、ハリウッドの現状からしたら、冷たい風が吹いていることだろう。
だから、「炎上」させているのは、このひとたちだといえそうだ。
ただし、彼女は「映画人」として、業界で最低評価を受けたから逆に栄誉ある、『ヒラリーのアメリカ』(2016年)を観ていたかもしれない。
監督・脚本・主演は、「陰謀論者」とウィキで書かれている、右派評論家にして作家のデニーシュ・デソーザである。
この作品は、なにしろ2016年大統領選挙の直前に公開されるという、(政治的)タイミングもあって、「その筋」のひとたちの間で「物議」を醸したし、デソーザ氏も選挙資金の件で逮捕されて、その後、彼をトランプ大統領が恩赦しているのである。
ところで、最近、アメリカで「ミリオンセラー」を記録しているのは、マーク・レヴィン著『アメリカのマルクス主義』だ。
残念ながら、彼の著作の邦訳は1作しかない。
レヴィン氏は、大学を2年も「飛び級」して卒業し、法学博士になったひとで、共和党保守派の論客でもある。
若くして閣僚の顧問を務め、人気のラジオパーソナリティである。
車社会のアメリカでは、テレビよりもラジオの格の方が高い。
なんだか、「保守」というよりも、「自由主義」の復権が目立つのである。
その意味で、自身を「保守」しないといけなくなった「左派」たちが、何かを「しでかす」ために妙なエネルギーを溜めこんでいるなら、それはそれで「危機」となる。
ウーピーへの「攻撃」も、その一端なのかもしれない。