トルコのダラーライゼーション

「ダラーライゼーション」とは、自国通貨の「ドル化」のことである。
これが、トルコで起きている。
つまり、トルコ・リラから、米ドルに自国通貨のシフトが起きたのだ。

実際に、トルコでは、対前年比で80%を超えるインフレになっているけど、なぜかエルドアン大統領は中央銀行に「利上げをさせない」政策を貫いていて、過去3人ほどの総裁を「利上げを図った」として解任している。

それで、こんな強烈なインフレ下でも、なんと中央銀行には、二度も「利下げ」をさせて、リラの紙クズ化を促進しているのである。

しかも、奇妙なことに、トルコの景気は「好調」で、特に、「家計支出」の伸び率が、インフレ率を「上回る」という現象が起きている。
ほぼ倍の物価になっているはずなのに、消費はそれを上回って好調なのはどういうことか?

「リラ」ではなくて、「ドル」による支出なのだ。

トルコ人は、とっくにリラへの信用を失って、ドルに逃避した。
それがまた、「リラ売り・ドル買い」となって、リラの価値はゼロに向かって落ち込んでしまったのである。

ドルへの換金を終えた国民は、かえって強くなったドルで買い物をすれば、リラ建てよりも日々安くなっているように感じるのである。
つまり、ぜんぜんインフレなのではなくて、かえってデフレに思える。

それで、大統領がリラの価値をもっと低くするようにすることが、国内「保守系」からの支持を強固にしているのである。

すると、もはや「リラ建て」の統計も価値がない。

すなわち、トルコは国をあげて、国内通貨を抹殺する努力をしている、大実験国になったのである。
だから、そのうち「トルコ・リラ破綻」のニュースになるのだろうけど、トルコ人には知ったことではない、ことになる。

逆に、新興国通貨として、リラ建てで投資をしてきた外国人には、紙クズになるショックがやってくる。
はやいところで、「損切り」した方がよさそうだが、このタイミングでは遅すぎたかもしれない。

これがまた、なにかとお騒がせな「クレディ・スイス銀行」への、嫌なニュースになりそうでもある。

さてそれで、わが国はどうなのか?

来年の春に任期が終わる、黒田日銀総裁が、どうしたことか「向こう2・3年は大規模金融緩和を維持する」と、これまた奇妙な発言をした。
それでかどうだかしらないが、「20年もの」長期国債の入札が、記録的「軟調」で終わった。

「軟調」というのは、日銀にとっては「金利上昇」という意味である。
おっかなびっくりで、誰も買いたがらないから、国債の価格低下(金利上昇)になるのである。

国債の基準となる「短期」から「10年もの」までは、事実上日銀が独占しているので、「市場がない」という世界的に物珍しい状態にある。
しかし、そこは官僚国家のわが国で、「20年もの」以上の長期国債には手を出さないことにして「市場」を確保している。

それで、あたかも日本国債(全部)には市場がある、という定義にした。
「集合論」がめちゃくちゃな、文化系官僚の頭脳のなせる技だ。
けれども、もともと「国債市場」に個人投資家は参入できないので、「(長期)国債市場」といっても、参加者全員が「機関投資家」なのだ。

そうやって購入した国債を、個人に分けて販売している。

しかも、「50年もの」ともなれば、機関投資家でもおいそれと買えないから、数社、もっといえば1~3社くらいしか購入・保有していない。
それだから、「20年もの」が、もっとも入札者が多いボリューム・ゾーンになっている。

前にも書いたが、政府と日銀はこの30年間、ずうっと金融緩和してきた。

それでもって、誰がいつ、「出口戦略」を立ててそれを実行するのか?が問題になるのは、とっくに「薬物中毒状態」になった日本経済を、誰が「毒抜き」するのか?ということだから、やってくるのは未知の「禁断症状」なのである。

つまるところ、この「禁断症状」が怖くて、誰も出口戦略を立案もしない。

その禁断症状のもっとも容易に想像できるものは、将来の金利上昇にともなって起きる、過去に発行した超低金利(マイナス金利分もある)の残債である「国債の暴落」なのだ。

これは英国新政権の「減税」に対する嫌がらせ的な、ポンドと英国国債暴落による、市場からの脅しで、とうとうイングランド銀行が無理やり金融(量的)緩和策をやらされたことを「前例」にすれば、わが国の「出口」の難しさを先取りしたようなことになっている。

つまり、ロスチャイルドが仕切るイングランド銀行がこのありさまなのだから、日本の偏差値エリートには解決不能かもしれない超難関の問題なのだ。
もちろん、最高責任者は日銀総裁人事もする総理大臣だ。
たまたまいまやっている岸田氏に、出口が見えているとは思えない。

高橋是清のような、実力と胆力がある大蔵大臣もいない。

ならば、アメリカを引きずり込んで「ドル化」するのが、最後のわが国の生き残り戦略になるのかもしれない。

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