ドン・キホーテの快挙

「安売りの殿堂」を自称する「ドン・キホーテ」が、かねてから「期待」されていた、チューナーのないテレビを発売して話題になっている。
フルHD42型で、税込み32,780円、同24型で21,780円だ。

この商品は、「テレビ」とはいうけれど、「チューナーがない」から、いわゆる「テレビ放送」を視聴することはできない。
つまり、放送法による「受信設備」にあたらない。
したがって、受信料を支払う義務がない。

この件については、最高裁判所の「判決内容」を含めて、おおいに議論すべきところだけれど、相変わらず「国会」が寝たふりをしていたら、そのまま「死んでいた」という、爆笑王のひとり、三波伸介氏の最期状態なので、手に負えない。

もちろん、かつてはテレビ製造で世界を席巻したわが国電器業界も、相変わらず「大赤字」をたれ流しながら、テレビを製造していて、決して「チューナー」を外さない。
これは、いまだに止まらない惰性で、「テレビ事業部」のひとが社内昇格して役員を輩出しているからであろう。

これを、わたしは、「慣性の法則」と呼んでいる。

ところが、すっかり「パネル」すら国産は衰退し、外国製のものが主流となったし、国内電器メーカー製だといっても、「MEDE IN ◯◯」と書いてあって、どこにも「JAPAN」の文字はない。

アメリカ人が、どこの国製のものであろうが、「いいものはいい」といって、日本製のテレビを買って品質に劣るアメリカ製のテレビを買わなかったけど、日本の「慣性の法則」は、アメリカ人のような「割り切り」ができないから、表看板の「日本メーカー製」にだけ拘っている。

なんだか、頭隠して尻隠さず、の状態なのである。

そこで登場した、販売店側がメーカーに製造依頼してものづくりをはじめる、という、「流通革命」をやった70年代の「ダイエー」のようなことを、ドン・キホーテがやったのだ。

しかしてダイエーがやったのは、とにかく「安く」て「そこそこ」の品質のものだったから、製造企業に「新しい価格競争」をもたらして、それがまた、ブランドがある製造企業に「多機能化」という方向をもって「高単価」とする対抗策をもたらした。

今回は、日本国内の工場だったら、いろんな「しがらみ」があってできないものを、外国のメーカーに依頼して実現した。
すると、「第二次流通革命」といえないか?

「チューナーなしテレビ」は、「安く」て「そこそこ」の品質だから「同じ」だということではない。
放送局やらとの「利権」という「しがらみ」を、「突破」してしまったのだ。

つまり、日本「社会の仕組み」に対する、正面からの「提案」となっているところが「新しい」のである。

これが、「デジタル」による破壊力なのである。

さてそれで、この「テレビ」を視聴するには、「ネット接続」という絶対条件が必要だ。
すなわち、ネット回線がない家庭には無用の「家具」となる。
逆に、ネット環境がある家庭なら、「買い替え需要」はあるにちがいない。

ちなみに、受信料契約を解約するには、受像機の「廃棄」を証する、家電リサイクル法に則った、廃棄券購入(郵便局で販売という「郵政行政利権」もある)の領収書を添付する。

その前に、地元放送局に解約書の送付を依頼するのだけれど、あっさりと、ワンセグ放送を受信できる携帯電話やカーナビを持っているかを質問される。

これに、「ある」と答えると、「解約できない旨」の丁寧な説明をしてもらえる。

このことに気づいたかどうかは知らないけれど、かなり流行して「多機能」の「余計な機能」にあった、ワンセグ放送を受信できる携帯電話とかカーナビが、もはや「見あたらない」ほどに販売されていない。
欲しくても売っていないのだ。

「大数の法則」というのは、「確率論」の話になるけど、きっと「欲しくない」というひとが多数になって、メーカーも「機能削除」しないと売れないということに気づいたのだろう。
この意味で、「多機能化」一直線だった話が、「曲がった」のだった。

10代の若者がテレビ放送をほとんど観ない、という現象が定着してニュースにもならなくなった。
テレビを視聴しているのは、「団塊の世代」(1947年~49年生まれ)とこれに近い高齢者層になった。

すると、あと10年もすれば「平均寿命」に達するから、テレビ放送は視聴者の「最大層」を失うことが確実となっている。
これは同時に、「選挙に行く層」でもあるから、テレビによる「洗脳」という手法も、いよいよ「終わり」が近づいていることを意味している。

その「焦り」が、むきだしの「偏向報道」なのだとすれば、これがテレビ離れのスパイラルを形成するので、「自滅の道」一直線となっている。
そこに、ドン・キホーテが着目して、「新発売」を決定しただろうから、なかなかの「マーケティング巧者」だといえるのである。

次のステージは、どんな業者が「追随」するのか?という興味に移る。
妥当なところでは、家電量販店になるのだろうけど、既存テレビ販売との「葛藤」が社内で激論を呼んでいることだろう。

それはそれで、テレビ販売の専門家(プロ)達の抵抗という、メーカー内と同じ構造の再現になっているのかもしれない。

結局、消費者が、「買う」か「買わない」かを決めることになっている。
そこに、宿泊業や賃貸住宅のオーナーサイドが「参戦」することもあるだろう。

ホテル・旅館の客室にテレビを設置する価値がどれほどあるのか?
独居世帯の賃貸住宅で、若い世代はパソコンを所持しないけど、ネット動画は観たいものだ。
ならば、オーナーが設置するエアコンのように、新規入居時にチューナーなしテレビのオーナー設置(あるいは寄贈)もあっていい。

攻防戦は、はじまったばかりなのである。

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