ニュースがない日はニュースをつくる

以前に「ニュースがない日のニュース」について書いたから、本稿は久しぶりの続編である。

新聞だろうがテレビやラジオのニュースだろうが、枠が決まっている。
新聞なら「紙面」という面積の枠に記事で埋めなければならないし、放送なら「時間枠」のなかに埋め込む必要がある。
伝統的な、記事をアナウンサーが読み上げるニュース番組ならば、適切な読み上げスピードが文字数に換算されて、原稿が書かれることになっている。
だから、時間内に収まるようになっている。

直近の、世界中の出来事をニュースは対象にしている。
「直近」でないと、「New」でなくなるので、古い話は「ニュース解説」という別枠になる。
とにかく直近の「New」な話題をいくつも集めて、新聞や放送番組にするから複数形の「s」をつけて「ニュース」としている。英語だと「ズ」になるから和製英語でもある。

通信網が広がって、通信手段もインターネットが主になったので、世界は格段に話題が「豊富」になったはずである。
それなのに、「情報弱者」(略して「情弱」)が発生するのはどうしたことか?

ふつう、情弱なひとたちは、インターネットにアクセスすらできないとおもわれているけれど、スマホ全盛の世の中である。
かなりの強い意志がなければ、いまどき「ガラケー」を使いつづけることもできないから、情弱なひとほどスマホもハイエンド機種だったりする。

ケータイ・ショップの店員さんのいわれるままに契約するからだ。

問題なのは、使い方がわからないのだ。
もちろん、この中には、かかってきた電話の受け方も含まれるけど、疑問が湧かないから、検索エンジンをつかわない。
こうして、日がな一日、新聞や地上波の放送を観ていれば、ちゃんと情弱にしてくれる。

けれども、そもそも疑問が湧かないという特性があるので、それで困らないし、新聞とテレビのニュースはちゃんと観ているから、自分が情弱とは思いもしない。
だから、他人から「情弱」といわれると、やけに腹を立てるのである。

プライドはある。

ふつう、毎朝配達される新聞をみていたら、ニュースの中身に濃淡の波があることに気がつくものだ。
今日は読み応えのある記事がたくさんあるとか、ないとか。
それで、ない日はどうかといえば、たいがいがどーでもいい記事や話題で「枠」が埋めてあることに気づく。

前々から仕込んでいる「ストック」もあるけれど、昨今は「製作した」という記事が紛れ込んでいる。
一歩まちがうと「捏(ねつ)造」ということになりかねない。
すると、読者がこれを「読み込む」必要があるのだ。

ある特定の思想信条による「編集」は、人間が記事にするのだから仕方がないことである。
それに、「編集」に「作文」まで含まれるので、なにもかんがえずにただ「読んだり」「視聴」していると、そのうちに「洗脳」されてしまう危険もある。

やや疑問があることでも、堂々と繰り返しインプットされると、ふつうなら、簡単に洗脳されて、こんどはそれとはちがう記事に反感を持つようになるのである。理性ではなく感情になる。
あんがい人間は単純なのである。

だから、報道機関の読者や視聴者に対する誠実性とは、自分たちの立ち位置を明確にすることになる。
これを隠して、あたかも「真実」を伝えているなら、それはもう「宣伝(プロパガンダ)」にすぎない。

そんなものを、購入させられる読者や視聴者は、なんだか可哀想を超えて滑稽である。
すいている電車で、新聞を広げているひとが、酷暑の中マスクをしている傾向が強いのは、「わたしは情弱です」という看板をつけて歩いているように思えてならない。

「公正中立」なんてあり得ないのだ。

けれども、いつの頃からか、「公正中立」の看板を高々と掲げながら、ほんとうは自分たちの政治信条に基づいた記事を生産して、これを「すき間」に埋め込みだした。
批判を受けたら、反省どころか「報道しない自由」という、どこかの国の強弁を真似て開き直ってしまうのだ。

報道機関が自分から「報道しない自由」をいったら、それは「自主検閲」を宣言したもおなじである。

戦時中、物資がないから紙もインクもない。
それで、軍の検閲で「発禁」を命じられたら経費負担に耐えられない。
でも、日本軍という役所の検閲は、いまとおなじ役所仕事だから、その文字が印刷されなければいい。これで、白枠の伏せ字になって、読者は穴埋め問題にして楽しんだ。

でもやっぱり、かっこ悪いので、自主検閲をして軍がよろこぶ記事を量産したという歴史がある。
占領軍はもっと巧妙で、はなから記事に真実を求めない。
求めたのは占領政策に合致した記事=作文だから、やっぱり自主検閲をしてこれをクリアした。完璧なプロパガンダになったのだ。

読者はどこにも穴埋め問題がないから、そのうち洗脳されいくのである。

そんなわけで、新聞と地上波放送のニュースはみないことにしている。
それでも、困ったことに、困ったことがない。

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