マグネシウムで洗濯する

洗剤を使わないのに洗濯できる、という製品は「洗剤」ではないのか?という野暮はやめて、じっさいにつかってみたら、すこぶるよい。

ちいさな洗濯ネットのなかみは、純度の高いマグネシウムの金属チップがゴロゴロはいっているだけだ。
つまり、ふつうの洗剤とおなじで、化学的によごれを落とす、という機能を買うことになる。

しかし、いわゆるふつうの洗剤とちがうのは、界面活性剤やその活性力をたかめるための酵素とかがはいっているのではなく、ほんとうに「マグネシウム」と水道「水」を化学反応させて、アルカリ性の「石けん水」にすることで、衣類のよごれを分解して落とすことにある。

その化学反応は以下の計算式となる。

Mg(マグネシウム)+2H2O(水)=
Mg(OH)2(水酸化マグネシウム)+H2(水素)

なにかと話題の水素が発生するから、水から水素が抜けるということで、アルカリ性になるわけだ。
水素イオンがたくさんあれば「酸性」、水素イオンと水酸化物イオン濃度がおなじなら「中性」、水酸化物イオンがたくさんあれば「アルカリ性」になることをおもいだそう。

ところが、マグネシウム自体も反応によって水酸化マグネシウムになるので、永遠にこの化学反応がつづくこともない。
使いつづけているうちに、マグネシウムが黒く変色するのは、表面が水酸化マグネシウムになったからで、さいごはチップ全体がそうなってボロボロになる。
ただし、水酸化マグネシウムにも毒性はなく、むしろ畑の肥料になるから、そのへんに棄てても問題はないだろう。

つかっている途中、それをもとにもどすには、酢酸などのよわい酸につけるとよいのは、酸化還元させるという意味だ。

だから、洗濯をくりかえすうちに効果がよわくなるのは、マグネシウムが水酸化マグネシウムになるからで、それを放置すれば、当然だが水道水がアルカリ化しなくなるので汚れの落ちもわるくなる。

どのくらいのアルカリ度ならいいのか?
おそらく「ph9」以上はほしい。
しかし、家庭にphを測定する器械なんて常備していないから、なかなかわからない。
それが、このての商品を「あやしい」と感じる根拠になるのだろう。

便利な世の中になって、デジタルph測定器もネット通販なら2,000円しないで手にはいる。
毎日の洗濯に洗剤をつかいたくないというひとには、こうした機器で洗濯機の水のph濃度を測ることができれば、より納得度があがるだろう。

ただし、じぶんの家の洗濯機の水がどのくらいの量のマグネシウムで、どのくらい撹拌すればもとめるph濃度になるかは、やっぱりためしてみないとわからない。

そういう意味で,ph表示がある洗濯機はできないものか?
もとめるph濃度に達してから規定時間の洗濯時間を運転してくれれば、これは便利、となるのだが、いそがしいひとにはがまんできないかもしれない。

さらに、「マグネシウムの酸化還元もできて、交換もかんたんな洗濯機」が開発されれば、消費者としてはうれしいものだが、洗剤メーカーに気をつかって製品化されないかもしれない。

もちろん、各家庭に直結されている水道水のphだって、地域によってちがうはずだから、ちゃんと測定すると必要なマグネシウムの量もちがってくるはずだ。

こうやってかんがえると、利用する消費者側にも、作り手のメーカ側にも、それぞれの事情があって、簡単ではないのが「マグネシウム洗濯機」ということになる。

もちろん、これに上水を提供する自治体の事情と、下水処理をする自治体の事情もからむから、かんがえだすとキリがない。
水道局の内部も、上水と下水ではたちばがことなる。

ほんとうは便利なはずなのが、なんだか面倒なことになるから、ふつうの洗剤をつかうほうが楽である。

これに、柔軟剤や芳香剤という需要もあるから、「洗濯」の自由を「選択」の自由として確保することは、あんがい困難なことだ。
だから、自由がいちばん合理的なのだともいえる。

上述した「マグネシウム洗濯機」が製品化されたとして、これをつかうひとたちは、専業主婦の奥様たちだという認識ができると、共働きで洗濯の時間を短縮したい家庭には、一種の「格差」すら感じさせることになるだろう。

すると、そんな「格差」を自慢したい国柄のひとたちにには売れるだろうから、輸出専用か、海外生産専用になるかもしれない。
それで、日本に逆輸入されるなら、もっと「格差」の象徴になるだろうから、ややこしい。

海外子会社につくらせるのが、現実的なのだろう。

いや、日本企業にそんな度胸すらもはやないとおもう。

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