トランプ大統領が、「国家非常事態宣言」をだし、WHOは、「パンデミックの中心がヨーロッパ」だといっている。
そのために、ギリシャではオリンピックの聖火リレーが中止され、フランスではエッフェル塔が閉鎖された。
わが国では、「私権を制限できる法律(改正新型インフルエンザ等対策特別措置法)」が国会を通過し、即日の14日に施行された。
この法律は、あの民主党政権のときに成立したから、安倍政権は民主党政権の延長にある。
私権制限については、首相の「緊急事態宣言」によって、「都道府県知事」に強い行政権限をもたせるという方式だ。つまり、知事に「ぶん投げ」をする。
ただし、「強制力」はない。
これは、都道府県に派遣されている「キャリア国家公務員=都道府県幹部」が、出身省庁との連絡役になって、事実上の「知事押し込め」をできるようにした、ということである。
警視庁を除けば、各道府県警察本部長や日銀支店長は、「本庁」の「課長」クラスだという事実が参考になる。
つまり、「支店入社」したら、けっして支店長にはなれない仕組みがある。
地方政府たる「都道府県庁」のなかに、「私権制限」をかんがえることができる部署など、ふだん存在しないし、これまでもなかった。
それが、「緊急事態」だから、すぐにできる、というのは、中央官庁からの命令を鵜呑みにするしかないではないか。
それと、「政令指定都市」はどうするのか?
ようは、官僚による「中央集権」の強化が、かくれた目的になっている。
つまり、いっそうの「政治の無力化」がはかられた。
政権党がどこであろうが、官僚支配は動じないばかりか、強化されるということなので、これを「火事場太り」というのである。
じつに「頭がいい」。
しかし、国民には「頭が痛い」はなしである。
「感染防止」という名目で、なんでもできる。
魔法の杖をもった官僚たちは、その悪知恵をどんなふうに振り回すのか?
もはや、政治家によるチェックは用をなさない。
ヒトラーが独裁を確立した、「全権委任法」は、ドイツ国会による全会一致だったから、ワイマール憲法の改正すらひつようとしなかった。
今回の法律も、「憲法論議」はいっさいない。
「緊急だから」憲法違反でもいい。
ならば、拉致被害者の救出がなぜできないのか?
本人や家族にとっては「緊急事態」のなにものでもない。
これを、ご都合主義という。
国会は、強制力をもたせないことで、「同調圧力」に期待したのか?
より、ずる賢いやりかたである。
国民を、精神的に追いつめる。
どうして、後付けでいいから「憲法との調整をはかること」を付帯事項にしないのか?
おそらく、憲法13条の「公共の福祉に反しないかぎり」があるからである。
この一文は、前から気になっていた「蛇足」である。
すなわち、「公共の福祉に反しないかぎり」という部分の「削除」こそ、議論の対象にしなければならないのだ。
これがために、拉致が個人のはなしにされて、「公共の福祉」ではないから国家が知らんぷりできるのである。
近代民主主義国家の「憲法」は、政府がきめるものではなく、国民が政府に突きつける「命令書」なのだ。
なのに、国民をないがしろにする憲法を、なぜに人権派だけでなく、国民がこぞって改正提案をしないのか?
不思議なことに、「強制力はない」といいながら、「刑罰」はある。
業者にたいして、必要な衣料品や食品などの「指定物資」を、知事が、売り渡し要請や収用、保管でき、なお、これら物資を隠したり廃棄したりすると、「6カ月以下の懲役」や「30万円以下の罰金」に処されるのだ。
「悪徳業者」を対象にするという、時代劇をみすぎて育った官僚の発想の源がよくわかる。
出でよ悪徳業者。
そんなわけで、「(ふつうの)マスク」である。
「医療用マスク」とはいわずに「マスク」といった場合の対象範囲はやたらとひろがる。
感染症対策に有効なのは、もちろん、「医療用マスク」で「ふつう」のではない。
けれども、巷間、ふつうのマスクが不足しているのは、花粉症と時期が一致したからもある。
花粉の大きさとウィルスの大きさは、はなしにならないくらいちがうから、ふつうのマスクでも花粉なら引っかかる。
それが、個人でも有料取引がはじまって、「高額」になっている。
「需要と供給」のバランスがそうさせる。
ネットではすでに、高額で購入したひとたちからの「怨嗟の声」があがっていて、ネット通販の会社に文句をいうひとが多数いる。
「値段」を「確認せず」に「ポチった」のが原因である。
個人間のネット取引でも、「高額」が問題になっている。
それで、ネットの運営サイトに、「マスク」の取引を中止せよという「書名運動」がネット上にでてきた。
「不織布」だか「紙製」だかはしらないが、一枚1000円はないだろう、と。
100枚で10万円。
ほしいひと、買える財力があるひとは買えばよい。
まさか、ペラペラなマスクが、こんなふうに「儲かる」対象になるとは思わなかったが、在庫をいっぱい持っていたひとがいるのだろう。
非合法な物資でなければ、なにを、どんな値段で提示しようが、自由である。
それを「買う」、「買わない」も自由である。
なにをもって、こんな署名運動をしているのか?
これぞ、「同調圧力」ではないか?
こういうひとたちにかぎって、「同調圧力はいけない」というのだ。
政府は、こういう「運動」がだいすきである。
こうして、私権が制限されるなら、やっぱり国民が阿呆だということになる。