メルケルの「けんかをやめて」

1982年(昭和52年)にヒットした、河合奈保子の『けんかをやめて』(作詞・作曲:竹内まりや)の歌詞をそのまま思いついたのが、「メルケルの告白」だ。

まずは、歌詞のさわりを。
「けんかをやめて 二人をとめて
私のために争わないで
もうこれ以上
ちがうタイプのひとを
好きになってしまう。。。。。」

昨年12月7日に、ドイツの新聞『ツァイト(DIE ZEIT:ザ・タイム)』に掲載された、メルケル元首相のインタビュー記事が今頃に日本語での話題になっている。

昨年2月からの「ウクライナ紛争」が、ロシアによる西部4州の併合によって、「戦争」になったけど、これはまったくの「見せかけ」で、本当の戦争準備は2014年の「ミンスク合意」からだった、と告白したのである。

なんのこと?

つまり、アメリカと西側各国(EUとNATO)が、「時間稼ぎ」としてやったロシアへの「罠」だったとズバリ言いきったのだ。
この和平合意は、ロシアに有利にみえた。

しかし、われわれ(EUとNATO)は、最初からこの合意を守る気は毛頭もなく、ウクライナとNATOの戦争準備をするための「方便=ウソ」だった、と。

この記事がでたことで、ヨーロッパ主要メディアは、一大反メルケル・キャンペーンを開始して、いつものように「発言をなかったこと」とするために、報道しない自由を発動した。

けれども、当時のフランス大統領だったオランド氏も、このメルケル氏の告白をあっさり「その通りだ」と「追認」してしまったのである。

ミンスク合意の「立会人」が、EUの二大国、ドイツとフランスだったから、両国の首脳による真実がでたことで、当事者のウクライナとロシアは即座に反応した。
もちろん、ウクライナのゼレンスキー氏は無視を決め込む反応だけど、プーチン氏は怒り心頭のコメントを発した。

邪悪なアメリカ人とヨーロッパ人たちが、ロシアを分割して資源を我が物にしようと策略して、ウクライナを利用した、と。

このことを日本語で裏づける記事に、昨年11月9日付けの『PRESIDENT ONLine』で、東郷和彦氏と中島岳志氏との対談がある。
この中で、東郷氏が「こんなにうまくプーチンが引っかかるとは思っていなかった。これでプーチンを弱体化できる」と、アメリカ・ヌーランド国務次官が発言したと「聞いた」といっている。

つまり、ヌーランドが「主犯」だと示唆するものだけど、彼女はオバマ政権下では国務次官補で、なお、バイデン副大統領と共にウクライナ担当だった。
だから、メルケル氏とオランド氏の後にいた「アメリカ」とは、事実上この人物のことなのである。

ちなみに、東郷家とは、生粋の外交官一家で、祖父の茂徳氏は終戦時の外務大臣、父の文彦氏は、外務事務次官から駐米大使になった人物で、和彦氏は条約局長をつとめて駐オランダ大使(本人はライデン大学卒)といったキャリアがある。

すなわち、記事上での「見聞」も、根拠があってのものとみるのは、職業外交官の習性に、曖昧な言質をとられることはしない、があるからだ。

そんなわけで、一方的にロシアが悪い、という理屈は成り立たなくなったのだけど、欧米主要メディアの翻訳コピーした記事しかださないのが日本のマスコミなので、一概に信用できない、という日本人が多数のままなのだ。

これは、人間の心理でもあるけれど、あんがいと「鳥の習性」とも似ていて、最初に見聞きしたものを信じることにある。
なので、プロパガンダの重要な点に、とにかく早く真実がバレる前に、大量に連続的に情報を流すことが肝要となる。

そうすれば、後から真実がわかっても、ひとびとはそれを信じないからだ。

なんにせよ、メルケル氏とオランド氏の告白には、ウクライナの人々の生活がどうなろうが知ったこっちゃない、という恐ろしい意味がある。
この意味で、ナチの手先となったゼレンスキー政権も、国民がどうなろうが知ったこっちゃないし、EUも日本も同類なのだ。

この感覚は、スラブ民族に対する、西ヨーロッパ人の強烈な差別意識が深層心理にあるからではないか?
どんなに口できれい事(たとえば「人道」とか「人権」)をいおうが、彼らの野蛮な本性がしれるのである。

それは、余りにも「従順な性格」のスラブ民族(Slav)のことを、語源にして「Slave:奴隷」としたことによくあらわれている。

つまるところ、ウクライナもロシアも、西ヨーロッパやアメリカ人からしたら、いまも、どうせ奴隷だという位置付けにすぎないことを意味する。
だから、奴隷が天然資源を豊富にもっていることを許さずに、ぜんぶ自分たちのものとするのが「主人としての正義」なのである。

すると、メルケルのいまさらながらの告白の意味とは、ぜんぜん反省していないことに基準をおくと、単なる「いい子になりたい」という、これまたどうしようもない幼稚な精神がみえてくる。

「アメリカの主導に従っただけだも~ん」という責任転嫁を真顔でできる厚顔無恥ぶりに、ただ唖然とするのである。

わが国がちゃんとした国だったら、つまり国民意識が高かったら、とっくにロシア包囲網から離脱しているだろうに、ぜんぜんできないのは政治家や政府のせいだけではなく、「けんかをやめて」ともいえない国民のせいなのであった。

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