いわゆる、「国際経済学(別名「貿易論」)」のベースにあるのが、アダム・スミスの後をつぐ、デイビッド・リカードの「比較優位説」である。
経済学部の学部学生が、早い段階でこれを教わったものだ。
例としてあげられる、りんごとみかんの生産コストをもって、りんごの生産が得意なA国と、みかんの生産が得意のB国という、2国間貿易モデルが、とにかく試験にでるほど有名なのである。
もちろん、りんごが自動車になってもいいし、みかんが半導体になってもいい。
すると、生産コストが有利な国は、それぞれ自国に有利な生産物に特化して、お互いに貿易で欲しいものを交換すれば、最も利益は最大化する、という「発見」があったのである。
我が国がいけいけドンドンだった時代、この理論を背景に貿易をすることが、正義であった。
けれども、冷戦によってGHQによる日本経済の方向性の本質が、戦前からの「戦時経済体制」の温存と継続であったために、利益の追求の前に、シェア拡大の追求が第一優先順位となって、その結果が利益になるという刷り込みをされた。
このことが端的にわかるのが、漁業なのである。
我が国の漁業において、漁獲量のコントロールは、俗に「オリンピック・ルール」と呼ばれる、「早い者勝ち」となっている。
なので、各漁船は、解禁日になると、われ先に漁場に向かって、漁期の間、獲りまくるのである。
それが、遠洋漁業にも適用されて、地球の裏側の大西洋でもやったから、南米の国から嫌われて、「排他的経済水域」という国際法の提案になった。
これがいわゆる、「200海里問題」だ。
いま、中国漁船がこれを真似て、南米海域で強引な操業をしているけれど、とっくに我が国漁船がやっていたことだ。
とにかく早い者勝ちだから、とったもん勝ちになって、そこには資源確保という概念はない。
利益のためなら、再生可能な資源量を科学的調査によって決めるべきだが、日本漁業にはこれが思想としてないのである。
まさに、シェア優先の戦時経済体制が、漁業分野でみて取れるのである。
北欧、とくにノルウェーは、早いうちにこのことの「損」に気がついて、漁船あたり、漁師あたりの漁獲量を割り当てることにした。
当然に、えらく反発があったけど、徐々にと長い時間をかけて、資源との折り合いを科学的につけることに成功した。
それでもって、いま彼の国では、漁師が一番人気の職業になっている。
安定した高額年収(およそ1000万円)が、生涯にわたって見込めるからである。
我が国のやり方で、資源が枯渇し漁獲量が減ったために漁師希望の若者がいなくなったのとぜんぜん違う。
よくかんがえれば、ノルウェーは、比較優位論の「前段階」で成功しているのである。
おなじことが製造業にもいえて、昭和の繁栄モデルを自分たちで壊してしまった。
その重要なキーワードが、銀行による信用創造であったけど、日銀と金融庁が、我が国の信用創造機能を破壊したのである。
その理由は、冷戦に目処がつきながら、アメリカ産業をシェア拡大で破壊した日本企業群が、アメリカの国内政治的に邪魔になったからである。
詰まるところ、すべてはアメリカの都合の変化による。
それで、ノーパンしゃぶしゃぶ事件(1998年)を引き起こして、大蔵省を解体し、日銀を脅したのである。
これに従った日銀総裁(2003年就任)は、バブルをつくった張本人の福井俊彦氏で、1986年に営業局長になって、不動産貸し出しを窓口指導した。
その後、福井俊彦副総裁(1994年就任98年退任)となって、結局、マッチポンプをすることになる。
組織をしるひとなら、ナンバーツーを見ないといけない。
おおかたの組織は、ナンバーツーが実質的に動かしているものだ。
自民党なら、幹事長、労働組合なら書記長で、総裁でも委員長でもない。
企業なら、副社長とか、筆頭専務なのである。
さてそれで、リカード・モデルの欠陥は、貿易資源に、「上限の設定がない」ことにある。
あるいは、貿易決済のための通貨保有高でもおなじで、無限にあるかのようになっている。
だから、現実に、限界がやってきたら、より有利な側の有利が、『モノポリー』のように絶対になってしまうのだ。
すると、不利な側は、圧倒的な不利になって、植民地に没落してしまい二度と這い上がることができない、蟻地獄のような構造が待っている。
これが、自由貿易の恐ろしいところだから、「自由」ならなんでもいい、という、「自由放任」というわけにはいかないのである。
このことを、「新自由主義」として、ハイエクが述べたけど、悪意の全体主義者たちが、古典派がいう自由放任をそのまま「新自由主義」として、ねじ曲げて、感情的に憎むように日本人を洗脳したのだった。
さらに、我が国は、世界最大の債権国だから安心だ、にもならない。
日本は、世界最大の債務国である、アメリカ国債でその多くを保有しているけれど、もしもアメリカ政府がデフォルトしたら、世界最貧国になりかねないのである。
貸した金を相手に踏み倒されたら、パー、になるのは、国家間でもおなじである。
自分たちだけよければいい、という思想に染まりきっている、民主党バイデン政権が企む「世界秩序の破壊による、全体主義の実現」という夢に、我が国が世界で真っ先に生贄にされる可能性がある。
それは、同根の宿敵、習近平の中国を破壊するための、特大爆発となるからである。
世界経済フォーラムの手先、フランスのマクロン大統領と、EUのフォン・デア・ライエン委員長の訪中は、一体何が目的なのか?
嫌な予感がするのは、このなかの人物のどこにも、正義はないからである。