十連休の意味とは?

経済をささえるインフラのなかで、もっとも重要なのは金融で、企業家が資金を得るための手段で、借入や株式市場がなければはなしにならない。
わが国では、はじめて紙幣を発行しておカネを貸してくれる銀行をつくったのが渋沢栄一で、そのあとに株式市場をつくったのも渋沢栄一だった。

銀行 → 株式市場、という順番になっている。
それでかしらないが、資金調達の手段のもっとも「主」要な方法が、銀行からの借入で、株式発行による直接金融のほうが「従」の時代がながかった。

銀行をひとくくりにまとめて、護送船団方式で管理するやり方が、官僚にとってやりやすかったからである。

それで、ゴールデンウィークの「十連休」を、金融機関にも命じたのが「祝日」指定だから、一般人といっしょに金融機関のひとたちも休むことになったのは、金融が特別なものではなくて「ふつうの産業」だと、役人がみなしたからである。

じぶんの預金をおろすのに、手数料を取られる。
金利がちゃんとつく時代ならまだしも、当座預金同然になっている。

ホンモノの当座預金なら銀行から「小切手帳」をわたされて、現金でなく小切手を切れば、安全に決済ができるという発明があった。
ちいさな国がひしめくヨーロッパでは、国がちがえば通貨もちがうので、陸続きの大陸で、小切手は安全かつ確実な「通貨」同様の役目をはたし、これを支えたのがユダヤ人のネットワークだった。

日本では、もっとちいさな国である「藩」がひしめいていたが、幕府という中央政府があったから、通貨単位は基本的に全国で共通だった。
金貨の流通と銀貨の流通という地域でのちがいが、両替商という商売をつくって、かれらのなかで通用する「為替」を発明したのだった。

この「小切手文化」と「為替文化」のちがいは、クレジットカードの意味のちがいになっていると以前に書いた。

いわば、これは、金融の「基盤がちがう」ことを意味している。
外国の「BANK」を「銀行」と訳すのはただしいが、外国の「BANK」と日本の「銀行」は、じつは似て非なるものである。

これと同様なのが、証券会社で、外国の「stock company」や「securities」を「証券会社」と訳すのはただしいが、外国のこれらと日本の「証券会社」は、似て非なるものである。

なにがちがうのか?
「法律」がちがう。
しかし、「法」とは最低限の取り決め・ルールのことである、という原則にたちかえれば、「精神」がちがう、というところにまでたどりつく。

外国の金融機関は、顧客への「サービス(顧客利便性)」を優先させるが、日本の金融機関は、「政府(の命令)」が優先するのである。

その証拠が、十連休中に現金をどうやって引き出すのか?という問いでわかる。
現金を引き出したいとかんがえ行動するひととは、金融機関から観れば「顧客」のことを指す。

だから、外国の金融機関なら、顧客に不便が生じないような方法をかんがえだすものだが、その前に、かれらに「十連休」という「概念がない」ことが重要なのだ。

基本的に、政府指定の「祝日」が日本ほどない。
銀行も証券会社も、あるいは証券市場すら、数日の連休はあっても、五日を超えて二桁になる連休などない。

顧客の「決済」をとめる、「換金」をとめる、という発想がないからだ。
つまり、金融とは、社会に特別なものだというかんがえかたが根底に存在する。

ところが、日本ではそもそも「顧客」とはいわず「利用客」という。
おなじ「客」という字があるけれど、「利用させてやっている」感がある。
これは、政府の目線なのだが、それが「現場」に伝染してしまうのだ。

連休前の平日になるべく引き出しなさい、という意味の案内は、「顧客優先」の発想からはでてこない。
ならば、店を開ければいいのである。

しかし、事業者からすればこんなことではすまないだろう。
月のうちの三分の一の日数が、決済も換金もできないのだ。
「仕事にならない」ではないか。
10連休倒産は起きないのか?

「奉祝」気分と、金融実務は別である。
これでまわる日本経済とは、鎖国をしているのではないかとうたがう。

世界経済から取り残されてしまったら、たしかに何連休しようが影響はない。
ただし、金融とは相手がいることを忘れてはならない。

日本株や円といった、出島のような世界との接点において、外国からの投げ売りやアジア通貨危機のような円への攻撃があるばあい、どうやって防戦するのか?

まったくもって、手段をうしなっているのが10連休である。

何事もなかったら、それはそれで、サーカスの綱渡りに成功したとよろこぶのか?

金融マンのホンネがしりたい。

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