いかにわれわれが「政治に無知か」を知らしめることになったのは、この間の参院選挙期間中にも参政党がいっていた「質問主意書」の意義であった。
少数の議員しかいないミニ政党が、どんなに頑張っても無駄な抵抗ではないか?という「質問」に、彼らは「そんなことはない」と反論していた。
そもそも、街頭演説で聴衆から質問を受けるというのも、なかなかに新鮮だったので、良い意味で各党がこれを真似しだした。
その反論には、既存ミニ政党と報道への批判があった。
それは、「パフォーマンス」にだけ価値を見出して、これだけを報道することの「薄さ」をいう。
ミニ政党だから、「とにかく目立つ」ことが、次の議席拡大にいちばん重要だという認識は、優先順位としていささか不満が残る。
それに、報道は、「国会での論戦」というけれど、一般人がイメージする「本会議」では、ぜんぜん「論戦」なんてやっていない実情がある。
それは、「議場の設計」に影響されている。
いまの国会議事堂は、昭和11年(1936年)11月にできているから、当然に明治憲法下での設計だ。
新憲法が発布されて、「国柄」を変えたことになっていて、いまの憲法では「国権の最高機関」としての「国会(旧憲法では「帝国議会」といった)」だけど、旧憲法ではそうではなくて天皇に主権があった。
この「違い」は決定的なのに、内部設計をいじっていない。
つまり、国会議事堂の設計思想によって、いまも物理的制約を受けているのに、誰もおかしいとおもわないおかしさがある。
それは、論戦をするための設計ではなくて、ご意見を賜るための設計になっていることでわかるし、政府側の「ひな壇」における「序列」は、ソ連時代の赤の広場での革命記念日とおなじ方式なのだ。
議長席を中心に、向かって左側が序列1位の首相、次は議長席右側のひと、と左右を順にだんだんと議長席から遠くなる。
まん中のテーブルを挟んで左右向き合う「山形」のスタンド席になっている、英国議会の風景が妙に新鮮なのは、はなから「議論」をするための設計だからである。
その英国議会の議論の様子は、どうしたことかテレビ時代になっても、音声だけしか放送できず、テレビ局は「スケッチ」で画像にしていた。
1992年(平成4年)になって、ようやくテレビ中継が許されて、BBCは別途に「BBC Parliament(BBCパーラメント)」という、議会中継専門チャンネルを立ち上げた。
わが国の「公共放送」にはないチャンネルで、地方議会の中継もやっている。
さて5日、参政党が結党以来「初」となる、国会活動として5本の質問主意書を参議院に提出したと、党首となった松田学氏がツイート等で発表した。
その項目は以下のとおり。
1. 外国資本による国土買収
2. コロナワクチンの副反応や子供への接種について
3. ウクライナへの防衛装備品の供与及び穀物輸出等の支援
4. 咲洲メガソーラーなどエネルギー供給基盤事業への中国企業参入問題
5. 拉致問題
ふだん聞き慣れない「質問主意書」とは、議員が議員名で提出するもので、弱小政党にとっては国民代表としての大きな権利行使でもある。
議院での質問の回数や時間が、大きな与野党からしたら大幅に制限されるけど、書面による質問としての「質問主意書」に、提出本数の制限はない。
そして、政府からの「回答」(立法府からの質問に対する行政府からの回答)には、かならず「閣議決定」を経てのことになるのだ。
もちろん、国会質問におけるあらかじめ提出の「質問主意書」も同様に、閣議決定を経ている。
つまり、口頭か書面かのちがいにすぎないので、議員としては重要な業務といってよい。
なにも、ひとりだからといって、なんにもできない、ということはない。
もちろん、参政党は、政府からの回答書についても全部公表することにしている。
なので、ダラダラとやっている委員会中継をずっと観ているよりも、あんがいと効率がいい。
選挙中にもいっていた、「質問主意書をバンバン出す」という「公約」は、ずっとやるにちがいないから、なんだかワクワクするのである。
そんなわけで、「閣議決定」をするための「閣議」は、開始前に閣議室前に集まった大臣たちが懇談している風景をテレビに撮っているけれど、閣議室にはカメラは入れない。
国民として、いったいどんな議論がされているのだろうか?と期待できないのは、徹底的なる「サイン会」になっているからである。
つまり、内閣の事務局が用意した、様々な書類に、総理から順にサイン(花押:日本古来のデザインした毛筆サイン)を書きまくるのである。
だから、初入閣しそうだったり、急遽決まるかして、自分の花押を持っていない議員は、あわてて専門デザイナーに注文して、お手本をみながら練習しないといけないのである。
もしも、NHKが閣議の様子を中継したら、国民はその実態に驚き、かつ、なにをやっていたのかがバレるから、絶対に見せないのである。
また、よくいう「持回り閣議」とは、内閣事務官が各大臣のもとにおもむいて、書類にサインをもらうことをいう。
企業なら、「稟議」であるし、「持ち回り取締役会」ともいう。
なので、参政党の質問主意書が「バンバン」出ると、閣議が「忙しく」なるのであった。