国家資格のキャリアコンサルタント

コンサルタントいう商売には、いろんな分野がある。
その分野の専門家なのだから、さぞや「国家資格」という権威づけが必要だとかんがえがちだが、その「発想」自体が異常なこともある。

たとえば、アメリカの「税理士(EA:Enrolled Agent)」は、日本のそれとはおおきくことなる。
なぜなら、アメリカにおいての税務申告は個人がおこなう原則があり、なおかつ、誰でもが有料で税務申告作成をすることができるからである。

つまり、税務申告書の作成、という業務が「独占資格」になっていない。
必要性があるのは、アメリカ国内というよりも国際取引における「税務」なのだが、頻繁に変更になる税法にたいする資格保持のための継続教育の困難さから、資格自体がマイナーになっている。
そんなわけで、全世界でEA資格をもって活動しているひとは、48千人ほどである。

税務申告書の作成、という業務が「独占資格」になっているわが国の税理士は78千人強だ。
昭和の戦前、国家総動員法施行前までのわが国も、いまのアメリカのように「確定申告」が一般的だった。

勤め人の「源泉徴収制度」とは、戦費を効率よくあつめる制度としてうまれ、戦後も政府に都合がよいのでそのまま継続し、いまにいたっている。
これを「発明」したのは、ナチス・ドイツであった。
いつでも「戦時体制」の国がわが国なのである。

ある業務分野を、特定のひとに「独占」させることを国家がきめる。
これが、「国家資格」というものであるから、ほんとうは最小分野にとどめるべきである。

その意味でいえば、資格試験よりも「学位」で代用することがのぞましい。さらに、分野によっては、学位もいらない自由でいい。

自由競争をさまたげないことが、けっきょくのところ、価値の高い専門家を育成する。
利用者が自由に選べれば、専門家は専門分野を同業者より磨くしかないからである。これが、ほんらいの「サービス競争」である。

ネットという媒体ができて、「情報の対称性」が実現しだした。
需要者が最適の供給者をみつけることができる可能性が、ネットがない時代よりも格段にたかまったのである。
だから、供給者はじぶんが「検索」によってでてこないと、世の中に存在していることすら認知されない。

だから、どちらさまも「こぞって」HPをたちあげて、自己PRにつとめている。
しかし、こうした方法が普及すれば、やっぱり「口コミ」に回帰して、それがさらなる「信用」となっている。

「口コミサイト」がほんとうに「口コミ」なのか?がうたがわれたら、だれも観に行かなくなった。
本物の「口コミ」に回帰していることの裏返しである。

これは、たんなる「噂」が「ひろく深く」なる、危険な社会になったことでもある。
それで、権威がひつようになって「国家資格」の意味がたかまるとすれば、社会が「権威主義」におちていくというスパイラルではないかとおもえる。

平成28年という、さいきんできた国家資格に、「キャリアコンサルタント」がある。
どうして、こんなものが「国家資格」なのかわからないし、どうして「資格試験」を受験しなければならないのかもわからない。

いつものとおり、管轄する役所(このばあいは厚生労働省)から、天下り先の「協会」を「育成」するためではないのか?

不可思議なのは、キャリアコンサルタントの業務に「キャリアカウンセリング」があることである。
「コンサルタント」と「カウンセラー」の概念が、混じっている。

カウンセラーの方面なら、「公認心理師」という国家資格が、平成28年にできているから、厚生労働省さんは、おなじ年に大活躍している。
すると、「キャリアコンサルタント」のなかにある「カウンセリング」と、「公認心理師」の「カウンセリング」のどちらが優先されるのだろうか?

一般国民には知る由も、理解もできない。

協会HPによれば、

「カウンセラーは、個人の興味、能力、価値観、その他の特性をもとに、個人にとって望ましいキャリアの選択・開発を支援するキャリア形成の専門家です。
「就職」「転職」「再就職」「キャリア」などの課題を抱えているクライエント(相談者)の方に対して、キャリアカウンセリングを通じてその方が自分らしく生きいきとする仕事を見つけ、働けるように総合的にサポートします。」

とある。さらに、

「企業内
企業の中では、従業員のキャリア形成支援者として、従業員のキャリアプランを明確にし、そのために必要な知識・資格の習得や仕事の選択を行うことを支援する機会が増えています。

大学・行政機関・人材紹介・人材派遣・再就職支援業界
大学のキャリアセンターには就職活動中の学生、ハローワーク・人材紹介・人材派遣・再就職支援には一般の求職者が訪れます。これらの方の就職、再就職のために効果的な自己分析の方法、エントリーシートの作成支援、面接の指導等のキャリアコンサルティングサービスへのニーズが高まっています。」

社会に出て働いた経験がうすい大学生と、どっぷり仕事にまみれる企業内、それに人材派遣などの「水と油」をやっぱり「混ぜ」ている。

無責任社会の結果が、このような資格をつくって、とうとう「人生」までが他人の「アドバイス」ならぬ「カウンセリング」で決められてしまう。

おそろしい社会になったものである。

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