「エステティック」を「エステ」と略す日本語にしたのは誰なのかを知らないけれど、まずは「女性向け」というイメージがある。
もちろん、「男性エステ」というのも人気があることは承知している。
しかし、その場合は、「男性」を付けて区別するのである。
男女の「中性化」というのは、体内ホルモンの分泌が影響するとしても、どうしてそういうホルモンが出てくるのかは、素人にはわからない。
「清潔感のアピール」という社会的要素もあるだろうけど、だんだんと「アンチエイジング」の要素も老化を意識すると涌いてくる。
もちろん、「若返り」を図りたい、というほどではない。
むしろ、若いときのことを「思い出す」という記憶が、老化しいる現実の自分に「おののく」のである。
これには、個体差はあまりないのではなかろうか。
とはいえ、それが「ふつう」のことで、ムダな抵抗であると割り切れば、なにもすることはない。
「ムダ」だから、なにもしない、という選択が無意識でとられるのも、別段批難の対象にはならない。
けれども、興味本位というきっかけであろうがなんであろうが、「ムダ」を承知で「体験する」と、その場限りの刹那とはいえ、「ほう」と思うことがある。
ましてや、「偶然」ならなおさらだ。
そんなわけで、「偶然」にも複数の地元民の男女から、「この辺の温浴施設でお勧め」と言われたから、素直に行ってみた、だけのことではある。
ただし、とある初老の男性は、「自分にはどうもしっくりこない」と言って、別の「温泉」を勧めてくれた。
だから、先に書いておけば、その温泉にも行く予定を立てたい、と考えている。
さてそれで、勧められた施設は、有名エスティシャンの名を冠した「お風呂」なのである。
料金は聞いていた値段から「やや高め」の、1500円だった。
しかし、タオルや部屋着までがセットになっている。
持ち込みタオルの想定はないらしい。
これはこれで「発見」である。
余計な荷物がいらない。
エントランスからして、豪華さがあるけど、フロントも「その辺のお風呂」とは違う。
脱衣所も、「きれい」だ。
あかすりやカミソリも別途用意されていた。
驚いたのは、「洗剤」で、ボディーソープだけでなく、シャンプーやリンスが「豪勢」なのだ。
「液状」ではない、「泡タイプ」のシャンプー、リンスを、温浴施設で初めて見た。
しかも、わたしが愛用している「泡シャンプー」は、「炭酸洗髪」をうたったものだから、「香料」はない。
ここのものは、「ユニセックス」なのだろうけど、甘いフローラルな香りがするのである。
そして、泡立ちがよい。
ふだんリンスはつかっていないけど、似たデザインのボトルには、「1」、「2」と書いてある。
老眼には小さい文字は困るけど、この「数字」で意味を理解した。
「2」をつかってみたら、こんなものがあったのか、と感心した。
さすがは、有名エスティシャンの名前がついたお風呂である。
男性の浴場にあるのは、バブル風呂と人工炭酸泉、それと「日替わり」という露天風呂の三種類、これにサウナと岩盤浴もある。
しかし、家内によれば、女性の浴場は五種類の浴槽があるという。
わたしの問題は、「温度」だ。
「ぬるゆ」にたっぷりと時間をかけて浸かることに幸福感を見出した。
いつもの「山梨の温泉」には、2時間半は入っている。
「熱い湯」では、ぜったいにできない。
初めてのここは、どんな温度なのか?
人工炭酸泉に入ると、ギリギリの合格温度であった。
もっとぬるくていい。
けれども、しばし居眠りできたのであった。
「日替わり」の湯は、雨の中の露天(風呂には屋根はある)だ。
ここはいい感じでぬるい。
入ってから気がついたのは、なんだか肌がスベスベではなくて、ヌルヌルするのである。
それに、風の具合から、「いい匂い」がする。
てっきり、シャンプーとリンスの匂いが強いのかとも思ったけれど、そうではなくて、「お湯の匂い」なのだ。
しかも、心なしかお湯に「粘度」がある。
背にあった表示版には、「ヒアルロン酸の湯」とあって、「香り」についても記載があった。
あゝ、ここにずっと入っていたい。
温泉ではないのに、珍しくもそう思った。
脱衣所に戻れば、ここにもエステティック・サロンを彷彿とさせる、化粧品類が置いてあった。
悪いが、よくある「スーパー銭湯」の、無名メーカーのそれではない。
「オリジナル」のそれ、なのである。
これも「ユニセックス」なのだろうか?
ちょっと違う気がしたけれど、せっかくなので試してみたら、「香り」以外に違和感はない。
念のために言えば、やっぱり甘いフローラルな香りなのである。
嫌ではないが、シャキッと感がない。
ここは一体どんな施設なのだろう?
フロント横では、母娘が「エステ」の予約待ちをしていた。
あくまでも「女性優先」なのである。
しかし男性でも、1時間半の滞在では「短すぎる」のだった。
「次回」は、「宿泊」もできるので、そのつもりで再訪したい。