富士山ごうりきうどんのコシ

静岡県小山町には二箇所の「道の駅」がある。
そのうちのひとつ、「道の駅すばしり」は静岡県と山梨県をむすぶ有料道路の東富士五湖道路と国道138号線の両方からアクセスできる。

ことしの台風19号は、多大な被害をもたらしたが、内陸の山梨県も東京とむすぶ甲州街道や中央高速が通行できなくなって孤立しかかった。静岡県からのルートが確保できたのは不幸中の幸いであった。
けれども、静岡ルートだって、そんなにたくさんあるわけではない。

山中湖から138号線で籠坂峠をこえれば、静岡県になって、しばらくすると「藤原光親卿の墓」という看板が飛びこんでくるものの、坂道にうっかり停車できないから、そのままやりすごしてしまうのが気にかかる。

小山町のHPにてしらべると、「永久の変(永久3年)」とある。
これは西暦にすると1113年で、「後鳥羽上皇」による「北条氏の討伐の企て」と解説がつづく。これが漏れて連座したのが藤原光親で、鎌倉護送中にこの地で斬首されたための墓となっている。

はて?
「永久の変」とは「鳥羽天皇暗殺未遂事件」だし、「北条氏討伐」とは、第二代執権北条義時討伐のことで、院宣をだしたのは「後鳥羽上皇」だから、この事件は「承久の乱」(承久3年:1221年)である。

世代がわかる年号のおぼえ方「いいくにつくろう鎌倉幕府」にあてはめれば、1113年では百年ちがう。

なんと、「承久の乱」が「永久の変」になっている。
登場人物が「鳥羽天皇」と「後鳥羽上皇」で、「永久3年」と「承久3年」だから、ややこしいのはわかるけど、「町の公式HP」としてはまずいものを見つけてしまった。

「お問い合わせフォーム」から連絡すべきか?
やっぱり「お墓」にまつわることだから、一報ぐらいしてもバチはあたらないだろう。

このまま下れば、「道の駅すばしり」がみえてくる。
駐車場からはわかりにくいし、建物1階売店は山裾にあるためじっさいは半地下のようなものだ。
気持ち的に面倒だが、急で圧迫感がある階段を2階に登ると富士山の絶景が目の当たりにあらわれる。

なかなか粋な設計といいたいが、はじめてのひとがどれほど2階にあがるものか?
案内が「足湯」と「レストラン」では、気がつかないままのひとがいるだろう。

売店では、お土産ランキングが10位まで棚に展示されていた。
栄光の1位に食指がうごいたが、店内のどこで販売しているのか?家内と3周したがわからなかった。
どうしてこうなるのか?

2階のレストランは、そういうわけだから期待値は低かったが、先の旅程に記憶ある食堂が思い出せないので、やや昼には早いがメニュー・チェックをかねてのぞいてみることにした。

「ご当地」を主張しているのが、「富士山ごうりきうどん」だ。
「富士山ごうりきおむすび」というのもあるが、店内飲食の選択肢としては厳しい。
あとはカレーにラーメン、豚丼とカツ定食。

人気ドラマ『孤独のグルメ』のセリフではないが、「ここでなにを食するべきなのか?」
どうでもいいが、ナポリタンがないのはどうしてか?が浮かんだのは、麺類に米粉をいれるのが特徴だとかいてあるからだ。

妙に広大にみえる店内空間は、これぞ公共の店という風情で、いまどきの大学の学生食堂のようでもあるが、よりシンプルかつ殺風景が特徴だ。
席数は60。バスがくれば別だが、はたして埋まるのか?

注文は券売機だ。
千円以外の紙幣は、なぜか90度隣の両替機をとおさないといけない。
しかも、一台ずつしかないから、すぐに列ができるのは「公共の店」ならではである。給湯器も一台というのも、一貫性がある。

しかし、ここでハイテクをみた。
券売機で購入した注文は、自動的に厨房につたわり、大画面モニターに受け付けた券番号が表示され、できあがると別画面・音声にて知らせてくれるのだ。

そして、厨房の広さは驚きで、営業面積と遜色ないスペースだから、調理担当者がやたら遠くにいる。
歩数計をつけてみたくなる。
開業当初、どんなメニューを提供するレストランだったのだろうか?

けっきょく、「ごうりきうどん」にした。
家内は「強力」をイメージしたようだが、富士山といえば荷物をかつぎあげる「剛力さん」で有名だった。

「ごうりき」は、漢字にすれば「強力」でも「剛力」でも「あり」のようだから、コシの強いうどんと掛けたのだろう。
そのコシは、コシヒカリの粉を配合するために、ただ歯ごたえがあるのではなくてモチモチした感じが強い。

意外だったのは「出汁」のうまさで、これは駿河湾のおかげだったのだろうか?
事前期待値が低かったけれど、予想外にうまかった。
しかし、なぜかナポリタンがあたまをよぎる不思議がある。

売店で、「富士山ごうりきうどん」の麺を購入。この「道の駅」でしか売っていないようだ。
やれやれ、限定品のご当地みやげができたとおもったら、製造元は山梨県の富士吉田だった。
おっと、今回通過した富士吉田市の名物「吉田うどん」の変形ではないか?

ちょっとコシがくだけたが、まぁいいか。
県境には県境なりの「名物」があっても、うらまれることはないだろうし、ましてやここは天下の霊峰、富士山つながりではないか。

いつか、「吉田のうどん」を食べたくなった。

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