成立しない「漁港飯」というジャンル

2016年(平成28年)4月1日現在、日本国内には2,866の漁港がある、とウィキペディアには書いてある。
このブログでは何度か漁港漁業について書いてきた。
「漁港」はあっても「漁師」がいない。
「漁師」がいても「魚」が獲れないのである。

それで、この順番がひっくり返って、魚が獲れないから漁師という職業に夢がなくなって、水産高校も減っている。少子化だけが原因ではない。
若いあらたな人材がこない産業になったので、漁師がいない漁港が立派な公共事業の遺産として残っている。

わが国は、どれほどの鉄筋とコンクリートを海に沈めたものか?
たいした港らしい港でもなかったものに、税金という他人の金を投下して、ピカピカの漁港を大量生産したのは、漁協という組織が投下したカネではなく「票」というものを確実に回収するからである。

漁港の工事には、大量の資材をはこぶ必要があるから、とうぜんに道路もよくなる。
でこぼこ道のままでは、砂煙があがるだけでなく、燃費も悪くする。
そんなわけで、海岸沿いの国道や県道がきっちり整備された。

これが、地域外からの「観光客」も呼び込むから、漁協の直売所や食堂は、いつのまにか「観光地」になるのである。
ほんらいなら、これはこれで結構なことなのだが、農協とおなじで「コルホーズ」の日本版の経営体からつくったので、なんだかなぁになるのである。

しかし、これは「食べる側の事前期待」にも問題があって、そもそもこの地域の海で、どんな季節になにが獲れるのか?という事前知識もなにもないから、ただ「安くてうまい魚を食べられる」だけになってしまう。

農協がつくる「季節の作物一覧表」のような発信もないから、情報のミスマッチが発生するのである。
その「穴」を埋めるのが、たいがい「マグロ」や「サバ」なのだ。

これらを出しておけば、文句はこない。
けれども、外部から買ってくる魚だから、これ見よがしの演出ができない。
それで、本来の「地魚=でも獲れない」との「ショボいセット」になるのである。

だったら、わざわざ漁港にいかなくても、その街にある個人経営の食堂に行った方が、よほど事後満足が得られるのである。

さてそこで、「店探し」という「観光」がある。
ネットでいろいろ調べるのが「常識」となったけど、わたしは「店案内のサイト」はあまりつかわない。
「評価の基準」がわからないことがあるからである。

ではどうするか?
「歩く」のである。
飲食店には「面構え」というものがある。
これを、「観察する」ことで、「名店らしき店」の候補をチェックするのだ。

交通手段が自家用車のときは、なるべく駐車場にとめてから「探訪」を開始する。
いかに徐行しても車内からの眺めと、徒歩目線からの眺めはちがうからであるし、徐行をずっと続けるのも通行の迷惑になる。

ここで、中途半端な営業形態をしている店をみつけることもある。
それが、「民宿」だ。
「民泊」という、規制だらけの業態をつくったが、当初の目的からどんどん遠くに離れていくのは、「カジノ」もおなじだ。

年に180日しか営業できない「民泊」も、各種規制でがんじがらめにしたら外国の大手事業者が逃げ出した「カジノ」も、「自由」という概念を忘れた結果の結果である。

「民宿」は、むかしからある業態だけど、漁港のちかくなら漁師の一家で経営し、じぶんで獲った魚を提供していた。
その意味で、「原価」がちがう。
これが、「安くてうまい魚を食べられる」という事前期待とマッチしていたのである。

しかし、残念なことに、肝心の魚が獲れない、ということになって、親父さんの漁だけでは提供できないから、やっぱり外から買わないといけなくなった。
こうして、「食堂」としての機能も失われたのである。

海で囲われた日本の沿岸に、どうして魚がいなくなったのか?
理由は、「自由」に「早い者勝ち」で「獲った」からといわれ、「資源管理」を科学的におこなわなず、行政(水産庁)が日和った数値をだすこととがセットになっている。

「いない」のに「いることにする」という裁量のことである。

そうやって、資源が回復するための「再生産数」を下回っても、「自由」に「早い者勝ち」で「獲る」ことを続けていたら、どうにもならないほどに「獲りつくし」てしまったのである。
いま、「沿岸漁業」で確実に獲れるのは「海藻だけ」になった。

おやおや、流行病のコントロールとおなじ「再生産数」がでてくるのである。
「増やすため」か「減らすため」のちがいはあるが、共通しているのは、科学を無視して行政機構やそのトップの知事たちが社会に日和った数字をいうことである。

「自由と規制」に、「科学=エビデンス(根拠)の重視」をくわえ、これらを決定的に勘違いして、自滅する政策を打ち出しても恥ともおもわない。

これらの「勘違い」を正すことが、将来への「夢」をつくるのである。

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