支払はどうなっている?

現金決済が基本の日本は,すでに中国からの旅行客からバカにされているらしい.東欧,なかでもポーランドが同様にすさまじいいきおいで電子決済が普及している.現金払いよりも,各種カード払いが歓迎される.各種というのは,クレジットカード,デビットカードなどのことで,使えないのは日本独自のFelicaである交通系「スイカ」などだ.

日本の「スイカ」が処理するスピードが「速すぎる」ので,世界標準になっていないという問題は,来日する外国人客への対応と,海外でも便利に利用したいという日本人の要求とが交錯する難問だ.「スイカ」すごいだろ!というはなしではない.

消費者の購入決済におけるキャッシュレス化

人手不足の時代,日本のメガバンクが敢行する大リストラで,地銀やその他金融機関から,合計すると万人単位の人材が世の中に供給されることになりそうだ.例によって,銀行さんは主な取引先に,ひとの受け入れを要請するのだろうが,キャッシュレス社会をつくるための要員になってほしいものだ.

現金が決済につかわれる国としては,わが国が先進国では一番になっている.冒頭のポーランドのように,旧社会主義国だった東欧では,西欧よりもキャッシュレス化進んでいる.これは,中国と同様に,一種の「ワープ」で,セキュリティ強化接触型端末の全面普及を達成した西欧よりもあとからやってきた国々が,最新のオールマイティ非接触型端末を導入したためにおきた現象である.

固定電話網を百年かけて全国につくった日本が,ほとんど固定電話網が未発達の中国に,携帯・無線電話で抜かれたはなしとおなじである.

社会体制がうまく転換できなかったロシアでは,信用と安全のために,現金主義がつづいている.だから,現金決済主義の世界二大国は,日本とロシアになった.

AIとの関係

こんごなくなる職業に,銀行員の窓口職員があった.ほかに,会計士や税理士も候補になっていた.AIとの親和性がよい,ということだろう.税法の通達類も全部データ・ベース化すれば,あとは機械がやってくれるという算段だ.だから、お金の流れがデジタル化されると,これまでの人的ミスもなくなる.経理まわりの要員削減効果は,すごいことになるだろう.

キャッシュレス社会にAIが組みこまれると,企業から経理部を消し去ることになる.現金を扱うことがなくなると,現金輸送のしごとも,そのための警備もいらない.お店では,元金管理も必要なくなる.売上金を預けていた,夜間金庫もいらない.当然だが,キャッシュディスペンサーもいらないから,銀行店舗の面積や,CDだけの出張所もいらない.

どうしたってキャッシュフロー経営になる

こうなると,社内の各種伝票も電子化しなければならない.そうなれば,必然的に日次決算が可能になる.問題は「決算書」の書式だ.税務用と会社決算用,それに会社経営用の決算書ができるだろう.なににせよ,経営情報でもっとも重要なキャッシュフローが明確になる.

つまり,この世の中から「どんぶり勘定」がなくなる.大雑把な「どんぶり勘定」ができなくなるといった方が正しい.ということは,だれでも経営者になれる可能性がある.

すると,大企業は大企業の形態を維持する必要がなくなる.小さな会社に分けて,事業をどんどん分業化したら,これまで取引のなかった会社とも分業化した単位でビジネスができるようになる.

リカードの比較優位が企業間の競争になる

以上の推論は,水平分業のことである.世界ですでに起きている,水平分業に日本企業が追いついているとは思えないが,いずれ水平化しなければならなくなる.

ところで,これは製造業のはなしでおわらない.人的サービス業のなかでも,おこりえることだ.飲食店フランチャイズが,変容する可能性もあるし,ホテルや旅館の「部門」が分業・分社化する可能性もある.取引が電子化されて集計も自動になれば,得意分野における事業化は,リカードのいう「比較優位」の原則で,おおきなビジネスになるからだ.すると,従来型のやり方からにじみ出るムダな経営資源が,すんなり活用できることになる.

黒字倒産しそうな社長が叫ぶ「あすの支払はどうなっている?」が,死語になる.

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