本の後始末

ラーメン屋とかにある、マンガ本のコレクションは何のためにあるのか?と個人的に思ってきたのは、「ながら食い」に対する抵抗感からである。

テレビを観ながら、本を読みながら、歩きながら、は、ぜんぶ「お行儀の悪いこと」だと躾けられた。
なので、良家には、家の食堂にテレビはなく、せいぜい客間とかの別室にあった。
はるかむかし、ロサンゼルスオリンピックの開催中(1984年)に、ミラノから北のコモ湖で有名なスイス国境の町にいるイタリア人の友人を訪ねたとき、テレビは客間とキッチンにしかなかった。

つまり、イタリア人の家でも、「ながら食い」はできないようになっていたのである。

いまは、いろんな研究が進んでいて、あんがいとむかしからのいわれがある習慣などに、科学的合理性があることが認められてきている。
もちろん、「ながら食い」も、消化に悪いことが判明した。

マクドナルドの1号店が、銀座三越の一角に開店したのは、1971年のことで、週末の歩行者天国を、若者たちが男女を問わずシェイクを片手に歩きながらすすったり、ハンバーガーをかじっている光景を武家出身の祖母がみて、「嘆かわしい」といったのが耳についている。

それまでは、「日本人がながら食いをするはずがない」とおとなたちがいっていたものだったが、開店するやいなや、あっさりと「そんなはずがあった!」になって、嘆きながらもあきらめたのである。

その嘆きの対象だった、若者たちが、いまは全員が後期高齢者になった。

「敬老」という気があまりしないのは、こうした文化破壊を目撃していた、その下のわたしらの世代である。
こういっては何だが、日本人の後世のために早くいなくなってほしい世代だとおもっている。

しかしながら、すっかり甘ったるい好好爺とかになって、孫を懐柔しているはずだから、ほんとうに始末が悪いのである。
ファストフード店にいる、若者たちが、この世代の犠牲者に見えて仕方がない。

もちろん、時間をかける、ことで達成された、日本人改造の成功なのである。

そんなわけで、最近では、戦後の記録に注目しているので、また蔵書がふえる。
これはたいへん困ったことだが、戦後の本は、紙の劣化も著しいのである。
なんでも、混ぜた薬品が悪さをしているらしい。
なので、なるべく電子化しようとしているが、なかなか進まないのである。

うまいスキャナーがないからで、もっぱらIpadで撮影している。
こうすると、そのままOCR処理もしてくれて、できたPDFが文字検索できるようになる。

それがまた、読むのにIpadとアプリが必要になる、という循環をつくっている。

残念ながら、タブレットに関してはIpad一強であって、他の選択肢は事実上ない。
前にも書いたが、目に優しい「E-ink」のIpadが欲しい。

こうした蔵書をどうするかの問題は、電子化をしてくれる業者に引き渡す方法もかんがえたいが、ことらは裁断されて処分もされるから、「紙」としての存在がなくなる。

書いてあることが電子的に分かればよい、ということだけの本というものがほとんどだろうが、あんがいと「希少本」もある。
だから、なかなか踏み切れないのは、どの本がどちらに当たるのか?を仕訳するのが、手間だからである。

しかし、そうはいっても場所がない。

押し入れも、机の下も一杯になってしまった。
それで仕方なく、「大掃除」をはじめた。

本ではなくて、その他の余計なものを始末しようという作戦だ。

すると、出るわでるわ。
わが家はゴミ屋敷か?と認識できた。

友人にはあっさりと、ブックオフにでも持っていったら?といわれたが、上の事情とおなじで、そうはいかないのである。

しかも、電子化の業者なら、200冊以上なら無料で引き取りにきてくれる。
ブックオフは、自分で持ち込むのがたとえ近所でもつらいのは、やっぱり紙は重いからだ。

そうはいっても、自分にも寿命があるから、最後にはこれらの書籍も完全に用なしになる。

そのとき、どこかに寄贈するとしても、やっぱりなかなか棄てられないでいるのは、いつか役に立つだろうという、あてのない気持があるからである。

3日で1冊を読破するのを、一生続けても、ひとりの人生では、せいぜい1万冊が限界だ。
たったの1万冊である。

横浜市立図書館は、150万冊の蔵書があるから、その半分でも、75回も生まれ変わってこないと読破できない。

いまのひとは、本を読まなくなったというが、人生がもったいなくないか?と心配になる。

スマホのゲームに夢中になっている、いいおとなを電車の中でみかけるが、いまどき新聞をみているのと同様に、なんだか気の毒になるのである。

人生の晩年を、「白秋」というのか?いや、「黒冬」だろうという正解は横にして、「青春」しかないのも気の毒だ。

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