玄米を自動で発芽させ、そのまま炊ける電気炊飯器の保温機能が故障した。
しらずにいたら、ご飯が腐敗してしまった。
もう10年以上も活躍したから、寿命なのであろうか?
ちなみに、いまどきの炊飯器の寿命をみたら、各メーカーとも5~6年とあるようだ。
それにしては、ずいぶんとイイ値段がするのは、「多機能化」のゆえであろう。
ご飯を炊くという単機能は、かまどの延長で、電気炊飯器よりも火力でガスが有利だった。
わたしが子供の時分は、近所でも薪のかまどで炊飯している家がチラホラ残っていた。
わが家は都市ガスが来ていたので、炊飯はもっぱらガス炊飯器だったが、こたつは練炭コンロの掘り炬燵だったので、冬になると毎夕、いわゆる七輪で練炭に火をつけるべく、新聞紙と薪で着火していた。
薪は、祖父がどこからか調達していた。
りんご箱やらだったのが、張り紙でわかったから、近所の八百屋に話を付けていたのかもしれない。
まだ、木箱がふつうにあった。
ところが、「電子ジャー」という新製品がでてきた。
これは、保温が出来る「お櫃」であったから、あんがいはやくわが家でも使い始めたのである。
しかし、ずっと保温状態にしておくと、ごはんが黄色く変色してきて、味も落ちた。
冷めてしまうけど、味がかわらない「お櫃」の優秀性はあったけど、温かいか冷や飯かの選択で、お櫃の冷や飯が負けたのである。
電子レンジが普及するのは、ずっと後のことである。
しかし、電子レンジがコモディティ化しても、「お櫃」は復活していないようだ。
わが家では、お櫃を買ってあって、泊のある来客のときには朝食用に使っていた。
この旅館のようなひと手間が、いつものご飯をぐっと美味くするのを子供でもしっていたから、泊まり込みのお客があるのは嬉しかったのである。
なので、お櫃に入れ替える手間をはぶく、炊飯電子ジャーが登場するのは、時間の問題だった。
これが、家庭におけるガス炊飯器も駆逐したのである。
以来、電気炊飯器の進化は、「炊飯」と「保温」の両方で発展することになった。
この意味で、「発芽玄米自動炊飯器」は、炊飯機能のひとつの終着点なのである。
だからか、先に、保温機能がダメになったのか?
そこで、わが家の旧機をもとに調べたら、購入に躊躇する価格設定に、進化していた。
他のメーカーを眺めると、炊飯だけの機能ではなく、蒸しパンやらなにやらと、多機能調理器具として販売されているのだとわかった。
アメリカが日本人に小麦を売り込もうと、各家に絶対にある炊飯器を利用して、「キッチンカー」なる特別仕様車で全国を巡回して、「新しい料理=洋風料理」を宣伝したのは、もはや「歴史になった」エピソードである。
日本の一般家庭に、オーブンが普及したのは、高度成長期の後期のことであった。
けれども、当時の主婦たちは炊飯器でつくる洋物料理に、「匂いがつく」といって嫌った。
炊いた白米の味がバタ臭く変わるのが、「気持ち悪い」という、嗅覚よりも、アメリカ人には理解できない感覚があったのである。
いまは、その感覚もアメリカ人並みに劣化した。
また、有名大学教授に、「米を食うとバカになる」と書かせ、「頭脳パン」なる奇怪なパンを販売したのである。
近年、さまざまな疾患の原因に、小麦グルテンが容疑者として挙げられているけれど、どうやら日本人には、グルテンフリーの米がもっとも相性がいい食材なのだと判明してきている。
ただし、日本人はコメを栽培してきたが、どこまで作り手がこれを食べることができたのかについては、あんがいと疑問が残る。
ヒエや粟などの雑穀を主食にしていたのも、事実だからだ。
この意味で、コメを喰えたのは、都市部の住人たちが主だった。
逆にいえば、都市部の住人たちには、ヒエや粟などの雑穀を手にすることのほうが難しかったのである。
いまや、「雑穀米」の方が、かえって高価になっている。
需要と供給の原則が、そうさせているのは、「健康志向」という価値観のためだといわれるが、都市部の生活者が、ヒエや粟などがどこで栽培されているかをしらないし興味もないのは、むかしのままなのである。。
とはいえ、炊飯器の保温機能については、「安全性」という観点から、いまでは数時間とかの設定しかできないのが主流だ。
この点で、だんだんと「お櫃」に回帰している。
それなら、梅干しを放り込んで、殺菌するのがよろしい。
しかしまた、その梅干しが、梅と塩だけでつくられているものをわざわざ探す時代になっている。
「調味液」なるものに漬け込んだのを、「梅干し」としているからである。
また、「減塩」というキャッチがあるものには注意がいる厄介もある。
高血圧と塩分の関係性が、疑われるようになっているのに、無理やり「減塩」の食材を選ぶ方が、健康には物騒なのである。
というわけで、あたらしい電気炊飯器を購入するのは、しばらくペンディングとして、発芽玄米炊飯器を購入する前につかっていた、「土鍋」を復活させることとした。
一言で、「やっぱり美味い」のである。
ガスの火力が電気を上回る道理が、ハッキリ現れる。
なお、土鍋の場合は、お櫃に入れ替える手間も要しない。
鍋の土が、適度な水分を保つからである。
10万円もするような電気炊飯器を買うくらいなら、2万円しない土鍋の合理性は、使った者がしるところだろう。
冷や飯ではなくて、どうしても温かいご飯が欲しいなら、防腐剤たっぷりのパックの「非常食」ではなくて、土鍋のご飯をチンすれば済む。
ただし、困ったことに、美味いからついうっかり残さないのが、玉に瑕なのである。