日本人が当たり前とおもっている、「公的健康保険制度=国民皆保険制度」の、おカネの面での良し悪しは、「政府財政負担の強烈さ」をもって、やんわりと問題視されている程度のことになっている。
なぜに「やんわりと」なのか?を問い直せば、だれしもが、「医療費の保険からの補填」を求めるからで、勤め人なら、収入の多寡に応じて給料から天引きされる「医療費」では足りなくて、消費税から補填されることも「賛成」することに疑問がないからである。
なにしろ、わが国最大の労組、「連合」すら、税と社会保障の一体化に納得したことだった。
なので、いったい「保険」にいくら掛けているのか?ということも不明になって、医療機関での支払時だけ、割引を受けてよろこんでいる。
「確定申告」をふつうにさせない、「源泉徴収制度」が、わが国で導入されたのは、昭和15年のことで、「国家総動員法」の成立による、国家総動員体制=戦時体制の重要な基盤となったのである。
つまり、日本人は、昭和14年までは、収入のあるもの全員が確定申告をしていたのだった。
ゆえに、税金の使い途における論争がさかんだった。
それがまた、国会論戦になって、都会の勤め人をターゲットにしながら三菱財閥が背景にあった、民政党と、地方地主とそのほかの財閥が背景の政友会とに分かれて、「二大政党制」ができたけど、結果は衆知のズブズブであった。
それだから、税負担の痛みをしっている国民は、軍に過剰なる期待をして、大コケしたのである。
所詮は、国家依存にちがいはなかったのだけど、戦後も懲りずに続けているのは、GHQにも都合がいいからだった。
いまは、税負担(社会保障費を含む源泉徴収で)の痛みが、勤め人には緩い(まるで「麻酔」のごとく)ので、かえって「乞食=国民皆保険」にさせられている。
ちょっと計算すればわかるけど、自分が負担している保険料より、命に別状のない疾病での医療機関で割り引かれた合計は、だいたいにおいて少ないから、「とられっぱなし」なのである。
それでも、老化して「大病したら」という将来不安から、いつかは「回収できる」と信じて、だまって徴収されている。
この意味で、とっくに「税」に同化しているのである。
それでもって、可処分所得が強制的に減らされて、経済的自由が侵害されているとかんがえる日本人は、皆無という驚きがある。
もちろん、経済的自由の侵害とは、憲法第13条に違反する。
しかしながら、前にも書いたように、公的健康保険制度の「公的」ゆえの大問題は、「保険点数」という、医療費計算のための、「料金表=メニュー」にすべて従うということにある。
「保険適用」される医療行為であれば、ぜんぶが、このメニュー表による「行為」なのだ。
もしも、「特別な医療行為」を受けたいなら、「自由診療」を選択しないといけないけれど、いったん自由診療を受けようものなら、「報復」として、もう「保険診療」に戻れない。
もちろん、保険診療を管轄している、厚生労働省からすれば、自分たちが認可していない「薬」とか、「治療法」をもってするのが、「自由診療」だから、あたかも自由診療は「胡散臭いもの」として、プロパガンダしている。
国民の選択の自由を阻害するから、このことの問題は、「自由診療」のなかでの的確な情報を、国民に提供されない、という理不尽もある。
よって、「ぼったくり」のような被害にあっても、これを無視するのが、いまの日本政府の邪悪なのである。
逆に、「名医」の存在も、国民にはわからない。
そんなわけで、わが国の、ほとんどの医療機関は、「保険診療しか」やっていない。
つまり、完全国内ローカルなのである。
だから、「医療ツーリズム」なる、外国人の患者受け入れが、「これからのツーリズムの一分野になる」というのは、かなり「独善的」なプロパガンダなのである。
唯一、「ツーリズム」というなら、入院してしまう患者本人ではなくて、「付き添い」で来日する家族とかが泊まるホテルとか、息抜きで訪問する観光地をもっていうから、なんだかショボいのだ。
単純に、外国人の患者は、「健康保険が適用されない全額自己負担だけ」が、日本人患者とのちがいでしかない。
三割負担ではなくて、十割負担、ということだ。
ついでに書けば、「医療通訳」という専門職があって、外国人に外国語で病状を説明できない医師や看護師のための「通訳」を、患者負担で雇わないと、日本の医療機関は受け入れもしない。
そこまでしても、日本の医療機関でないとダメだ、というのはどういうことか?
外国人の患者やその家族、あるいは当該国の担当医が、日本での治療をどこまで推奨するのか?にかかっていることになる。
ところが、国民皆保険という、社会主義制度を実施ている国は、ヨーロッパ(ドイツ、フランス、イギリスや北欧)にあって、さいきんでは経済状況が深刻なイギリスの「医療崩壊」が、話題になっている。
たとえば、風邪で診察を受けたくとも、3ヶ月待ち、とか。
原則、自由診療しかないアメリカが、やっぱり「治療するなら行きたい」とおもうのではないか?
これは、「留学生」としての医学生受け入れについてもいえて、優秀な医師の養成は、やっぱりアメリカになっているからである。
日本政府は、観光政策を、「数量から単価」に変更したけど、単価がとれないのが、わが国の医療機関だから、「輸出」もできないのである。
そのうち、アメリカの医療機関が、「自由診療」をひっさげて、これ見よがしにやってきたら、富裕層はこぞってそちらを受診するのだろう。
そのとき、アジアの富裕層もようやく、来日するのか?
それとも、自国にもアメリカの医療機関ができて、日本は用なしになるのだろうか?
そうなると、南国の気候のいい場所が、日本人富裕層高齢者たちの、終の棲家になるのだろう。