発酵あんこ

こないだは、「発酵タマネギ」についてあれこれ書いた。

発酵タマネギは、できあがりに5日から一週間かかるけど、「発酵あんこ」は8時間で完成する。
圧力鍋があると、小豆を茹でるのも乾燥状態からいきなり火にかけても短時間で茹で上がるので、ほとんど手間がかからない。

麹を茹であがった小豆に混ぜるときに、60度以下に「冷ましてから」ということだけが注意点である。
あとは、炊飯器を「保温」にして、蓋をしないで濡れ布巾をかけておくだけ。

ただし、2時間おきにかき混ぜる。

要は、小豆でつくる甘酒のようなものである。
「甘酒」には炊いた米を混ぜて、飲み物としての濃さにするけど、こちらは「あんこ」なので炊き上がったときにザルに上げた煮汁を再利用して濃度調整する。

なので、けっこう小豆の栄養が「濃い」のである。
しかも、昔ながらの「渋きり」もしない。
「渋きり」とは、一晩水につけた小豆を一度煮こぼすことで、「灰汁」や「渋」の成分を棄てることをいう。

さいきんの「栄養学」では、こうした「灰汁」や「渋」の成分があんがい重要で貴重な栄養素だったことがわかったそうで、もはや棄てては「もったいない」になった。
それで、ぜんぶいただくような調理法としても、圧力鍋が重宝されている。

結婚した時にいただいたデパートの商品券で、ドイツ製の圧力鍋を購入した。
もう30年以上もつかっているけど、壊れる気配はない。
消耗品のパッキンすら、こないだ交換した程度である。

数年前には、日本製の小型圧力鍋(保証期間30年)を購入した。
こちらは驚きの性能で、加圧する圧力は世界最高レベル(146kpa:キロパスカル)だから、鍋中の温度は128度にも達する。
ちなみに、ドイツ製のは「高圧」で110度である。

そんなわけで、大きさではなく、用途でどちらを使うのかを選んで決めている。
即効技では、圧倒的に日本製を選ぶことになる。
たとえば、ゆで卵は、100ccの水で何個でも、あっという間にできあがる。

ふつうの鍋にくらべたら、ドイツ製の圧力鍋が劣るということはない。
逆に、この鍋の良い点は、鍋底がぶ厚い金属の「層」をなしているので、煮物の再加熱でも底にこびりつかないのだ。
その分、重いけど。

なので、わが家では、たとえば、カレーをつくるとき、材料は肉も野菜もぜんぶ小型の日本製で下茹でして、これをドイツ製のに移して仕上げている。
ポトフとかなら、最初からドイツ製の圧力鍋で圧力調理する。
圧力で爆発したソーセージがうまいのだ。

さて、「あんこ」といえばあらゆる和菓子屋さんの「命」である。
逆にいうと、和菓子の主たる材料は「あんこ」だから、どんな和菓子でも和菓子なら「あんこ」を食べていることになる。
よって、和菓子の味は洋菓子のような変化に乏しい。

それでも「あんこ」作りは繊細な職人技を要するから、店によって微妙に味がちがう。
だから、自宅でつくるあんこをプロのあんこと比べるのは、無意味である。
そもそも、あんこの「照り」は、砂糖による。

砂糖を使いたくないから、発酵あんこをつくるのである。

これには、時代の激変がある。
甘い物 ⇒ 贅沢でおいしい が、太る に変化してから、一気に健康に悪い、になって、「甘い物」なのに、「甘くないからおいしい」になった。
たっぷりのクリームが乗っている菓子をほおばって、「これ、甘くないからいいわ」という。

和菓子の方は、伝統製法にこだわるので、甘い物は甘い。
それに、形をつくる技術の習得も難関だ。
ただし、伝統的高級菓子のばあいは、圧倒的に「茶道」と共にある。
つまり、あんこは「主が緑茶」に仕える「添え物」なのである。

そうなると、問題は「茶」の話になる。

うまい日本茶を飲む習慣があるか?と聞かれると、困る。
たとえうまい日本茶があっても、うまい淹れ方をしらないと台無しだ。
それが煎茶であってもおなじ。

むしろ、「玉露」のように繊細でグルタミン酸の「旨味」がするものは、ちゃんと淹れないと話にならない。
ちゃんとするには、お湯の温度をとにかく下げること。
適温40度にするには、手間がかかるのだ。

発酵あんこの温度を下げるのに似ている。

うまいお茶に発酵あんこを添える。
なかなかの贅沢である。
それに、麹だけで、ここまで甘くなる。
なんだか、不思議でいい意味の「ケミカル」な感じがする。

あらためて、わが国の「国菌」を食す贅沢である。

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