観光業の自滅宣言

参政党の共同代表をつとめる、松田学氏は、言わずと知れた元大蔵・財務官僚で、元・次世代の党⇒元・たちあがれ日本に籍を置いた衆議院議員であったひとだ。

ふつうのひとになってから、「松田政策研究所」を立ち上げて、YouTuberとして、さまざまな情報発信を行ってきている。
とくにその「対談」においては、「立場を超えて」各方面のひとを呼ぶことで知られ、保守系としては「異例」だとの評価も高い。

「聞き上手」だとの評価がある一方で、相づちが嵩じて「迎合する」こともあるから、おそらく事前にシナリオがない「ぶっつけ」ゆえのリスクもある。

それがまた、対談としての魅力なので、最後まで観ないと主旨がわからないこともある。

参政党ウオッチャーとしていえば、5月19日配信の「公式ライブ配信」における、武田邦彦氏との論争(「言い争い」)にひとつのポイントがあったと思っている。

あくまでも「国民・生活者目線」で発言する武田氏に対して、「官僚・政府の目線」で論じたゆえのすれ違いになったのである。
これはあんがい「発想の違い」という「決定的」な結果なので、この場をなんとか収めた吉野敏明氏のハラハラ度合いが、かえって視聴者にもよくわかった。

この「バトル」が、参政党の「正直さ」として好評を得て、党員数拡大にもつながったというし、後に武田氏が折れて「大人げない」としたことが、「おとな」の対応にもなって好評価の原因にもなったと街頭演説でも説明されている。

興味のある方は、是非「実際の場面」をご覧になるとよいかと思う。

さて、武田邦彦氏が口癖のようにいう「うそは絶対にダメ」の根源は、氏が科学者であるからだと自身も繰返し述べている。
「自然科学」の分野では、自然の法則を解明するのが科学なので、うそは必ずばれる、という運命にある、と。

しかも、氏は、新卒で民間企業(旭化成)に就職している。
つまり、民間の研究所でうそをついたら、会社はとんでもない損失を被ることになるのだ。
ゆえに、科学者としてだけでなく、社会人としても身についたものだ。

松田氏の方は、経済学を修めて官僚となり、さらに経済学をドイツに学びに行かされた経歴であるから、明治以来のエリートである。
官僚の問題は、本人に回帰しない、その「組織」にあることは、このブログのテーマにもなっている。

つまり、巨大化した政府官僚機構という組織の「幹部」ではあるけれど、その前に「組織人」としての「分をわきまえる」ことが、だれでもない「組織」そのもの(あえていえば「空気」)から要求されるのである。

それが、「省益」だし、官僚社会主義という「体制」下にあっては、すべての産業を牛耳ることが、国家発展のための「合理的帰結による近道」だと信じ込まされる。

その中の「最強」が、内務省なき戦後においては、大蔵省だったのである。
それゆえ、松田氏の「お里」は、いまだに大蔵省にある。

参政党のブレーンあるいは今後できるだろう「シンクタンク」に重要な役割を担うのは確実だけど、マックス・ヴェーバーが言ったように、最高の官僚は最低の政治家になる、ことの典型ではないかと疑うのである。

さてそれで、2日(昨夜)、『特番「大打撃の観光業!世論追随の岸田政権で日本は大丈夫か?』として、岩崎芳太郎・岩崎産業社長との対談が配信された。

岩崎産業といえば、鹿児島を中心に南九州にグループがある、観光コングロマリットである。
その「総帥」が、どんな発言をするのか?は、わが国観光業界の重鎮の発言として注目されるのは当然だ。

結論から先に言えば、乞食だった。

「コロナ禍」を経営悪化の外部環境としていまだに捉えているのは、東京都に裁判で挑んだ、グローバルダイニング裁判の判決もみていないのか?と疑わざるを得ないし、武田氏や徳島大学の大橋眞名誉教授による「解説」についてもご存じない様子であった。

それに、「外資に買われる」ことを参政党は「国まもり」として重視していて、ニセコや蔵王などの例を挙げている。
しかしながら、「外資に買われる」のが問題ではなくて、「内資が買わない」のである。

その最大の原因は、国内にリスクをとる投資家がいないことと、再生させるためのノウハウがないからだ。
再生させるためのノウハウとは、通常運営するためのノウハウも含まれる。

よって、コロナ直後に廃業した観光業は、通常運営するノウハウの欠如がそうさせたといえるのだ。
だから、昨今の岩崎産業の業績不振も、社長の発言で理解できる。

岩崎氏は、どこもおなじの外資系高級ホテル、と言ったけど、これはよくいう「金太郎飴」だと批判した、マクドナルド(1971年開業)や東京ディズニーランド(1983年開業)の進出を言ったときとぜんぜん進化も進歩もしていない。

半世紀もおなじことをいうのは、まったくの驚きでしかない。
それでもって、コロナ対策に協力したのだから「政府はカネをよこせ」というのは、乞食以下の脅しなのだ。

松田氏は「積極財政」を「売り」にしているからか、武田邦彦氏ならすかさず指摘するだろう「発想の貧困」が窮乏の原因だとは言わない。

しかも、岩崎氏は、「観光大臣」が欲しいという、無い物ねだりを言ってのけた。
ここまで「政府依存」に脳が冒されているなら救いようがないので、資本主義の最大効果、「市場からの退場」をもって新陳代謝を促し、あたらしい経営者を迎えるべきだ。

就職予備群の学生を持つ親が観たら、こんな無様な業界に就職させてはならないと思うだろう。
観光学科とかの学校は「業界に抗議」しないのだろうか?
あるいは、同様に政府依存するならば、もう自滅しかない。

まことにお粗末な対談であったけど、「本質」をみごとにえぐり出したのは、視聴者にとってのラッキーである。

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