「帝国」の定義とは、複数の民族・国家・地域を包摂している広大な版図を持つ国であって、「皇帝」が統治する。
歴史的には、ローマ帝国からはじまって、モンゴル帝国、ムガール帝国、スペイン帝国、大英帝国、ロシア帝国、ドイツ帝国、大日本帝国などがある。
南米のインカ帝国も、「帝国」である。
わが国の「国体」に関しては、曖昧であるけれど、高校の時に購読していた『リーダーズ・ダイジェスト日本語版』で、「付録」でもらった『世界の国々』には、「日本国」の項目に国体が、「立憲君主制」とあって、国家元首が天皇と明記されていたことを記憶している。
アメリカ文化を紹介するだけでなく、日本人を洗脳するための雑誌のはずが、「うっかり」かどうかはしらないけれど、「まとも」な記述だったから、意外な感じがして忘れずにいるのである。
日本は「単一民族だ」ということの「あたりまえ」が、だんだんと崩れてきて、「アイヌ」や「琉球」は、「別民族」だということをいわないといけなくなってきて、「アイヌ民族支援法」(2019年)ができたのは記憶に新しい。
すると、リーダーズ・ダイジェストが書いていた「定義」を補強して、わが国が「帝国」であることを示した「法」にもなったのである。
なので、「大」をつけなくとも、「日本帝国」というべきことになったから、左翼界隈のひとたちの努力には思わぬ効果が生まれたというべきだろう。
原本が英語であった、日本国憲法で、その第一章は「天皇」と訳されているけれど、原本は「CHAPTER I. THE EMPEROR」である。
つまり、翻訳された「天皇」ではなくて、世界に通じるのは「THE EMPEROR」が統治する「他民族国家」としての、「帝国」なのだ。
たまたま、わが国では古くから「天皇」といういい方があったけど、敗戦後の正式な名称は「THE EMPEROR」が先で、「天皇」はその翻訳にすぎないのに、このちがいを日本人は意識していない。
もちろん、「THE EMPEROR」の国だから、「他民族」がいなくとも、「帝国」なのであるけれど、GHQは憲法を、「The Constitution of Japan」と表記して、国名の訳を「日本国」としたことで、日本人から「THE EMPERORの国=帝国」を奪ったつもりにしたのである。
それがまた、「他民族国家」だと法によって定めたから、「帝国」の定義を強くしたということになるのである。
ついでにいえば、「海洋」を含めた面積にすれば、わが国は世界6位の、「広大な版図」があるのも忘れがちなことである。
さてそれで、なぜか圧倒的な「帝国」だった、大英帝国は、どういうわけか「国王」を置いて、「皇帝」と自称しなかった。
「本家(ハノーバー朝)」筋のドイツ皇帝に遠慮したかどうかなのか?もっとも、このひとたちは「インド皇帝」は名乗っていた。
先般亡くなったエリザベス2世女王は、王位に就く前の「王女」時代に、元ギリシア王族のフィリップ・マウントバッテンと結婚(翌日「エディンバラ公爵」授爵)したので、即位までの間は「エディンバラ公爵夫人」であった。
マウントバッテンとは、ヘッセン大公国を統治していたヘッセン=ダルムシュタット家の分家「バッテンベルグ家」を英語翻訳したもので、「ベルグ=山=マウント」なのである。
そんなわけで、73歳で即位したチャールズ王太子(日本ではなぜか「皇太子」といっていた)は、「女系国王」となったので、「ウインザー朝」が「マウントバッテン朝」に「改姓」となったけど、どういうわけか「ウインザー朝」のままになっている不思議がある。
なお、「ウインザー家」というのも、本来の「ザクセン=コーブルク=ゴータ家」だと、第一次大戦でドイツを「敵」とした(「本家」を敵にしたも同然)ために、居城の「ウインザー城」から名前をとった「だけ」である。
ヨーロッパは、中世以来の「各家の政略結婚」がふつうだったから、由緒ある「貴族」ほど、国境を越えて血縁・縁者で固めている。
もちろん、これに「帝政ロシア」のロマノフ家も含まれるから、ほぼ上層部はいまだに親戚同士なのである。
このことをかなり強固にしたのは、「ヨーロッパの祖母」といわれるヴィクトリア女王で、最後のドイツ皇帝ヴィルヘルム2世と最後のロシア皇帝ニコライ2世とは孫にあたるし(従兄弟同士)、ニコライ2世の皇后は、ウインザー朝に改名した英国ジョージ5世(エリザベス2世の祖父)と従兄弟にあたる。
これにまた、キリスト教会がからむ。
わが国でもそうだったように、「高貴な血筋」は、宗派も好んで受け入れたのだ。
ローマ帝国が受け入れたユダヤ奴隷の宗教だったキリスト教が、ローマ帝国の分裂で東と西に教会も分裂して、西ローマ帝国の滅亡が西ローマ教会を組織化させて生き残り「ローマ・カソリック」となった一方、東ローマ帝国には「東方教会(オーソドックス)」が国家の支援を受けていた。
いまや、東方教会最大のロシア正教が、宗教を否定する共産ソ連時代を生き抜いた自信で活気をていしている。
これには、ヒトラーのナチスと死闘を繰り広げたスターリンすら、教会の支援を求めたことも影響している。
そんなわけで、ウクライナのナチス政権と闘うプーチン氏が、先月末に、ロシア正教の「首席エクソシスト」になったというニュースは、完全に「戦後秩序」の崩壊現象を証明するものとなった。
これを、「カルト」だとする西側マスコミのプロパガンダが盛んだが、そもそもが「三位一体説:父と子と精霊」こそが、「神秘」なのであって、「神秘」なき宗教は存在しない。
はたして、西ローマ教会たるバチカンがこれをどうみるのか?
ローマの教皇庁立レジーナ・アポストロールム大学には、エクソシストになろうとしている司祭のための講座がある。
ちなみに、「教皇庁大学」(学部として、神学・哲学・教会法、その他、の4つ以上があって、福音宣教に協力することが条件)とされる教育機関は世界にあって、日本では「上智大学」が指定されている。
さすがは、イエズス会、なのだ。
むしろ、イスラム教側がスンニ派・シーア派の「怨讐を超えて」支援をいいだすかもしれない。
それにまた、アメリカ中間選挙の「直前」というタイミングが、プロテスタントの異端、清教徒たちに刺戟をあたえることにもなるだろう。
なぜかわが国の「右翼」は「左翼」と一緒に、このニュースを嗤うけど、ならば「現人神」たる天皇をなんだというのか?
プーチン氏やロシア正教会からこういわれたら、ぐうの音もでないのがいまの「右翼」のふぬけなのである。