郵便配達を平日限定にすると効率があがるという見出し記事がでた.
誰の効率なのか?というと,郵便局の効率だろうから,利用者の効率があがるわけではない.
その最大の理由が,人手不足だ.
「人手不足」の理由は,ほんとうに「人口減少」だけなのだろうか?
たしかに,人口減少や超高齢化,子どもの減少がある.だから,ひとの供給面からみれば,ひとの奪い合いとなって,それが人件費単価を上昇させるから,わが国は,いよいよ「高コスト社会」に突入している.
すると,これは生活コストの上昇を意味するから,実質的なインフレが発生していることになる.
政府や日銀は,インフレ率2%を目標としたがぜんぜん達成できないままだ.しかし,その計算根拠は大丈夫なのだろうか?
いわゆる,セーフティネットが,もしかしたら頑強になっていて,働くよりも働かない選択が,生活者にとって「正解」になってはいないか?
専業主婦が「働く」と,損する仕組みになっているのは,「限度額」が変更されても変わらない.
働く自由を損なっても保護しようとした対象が,多数だった時代から変化したら,こんどは制度が対応できなくなった.
この国の議論は,つねに「提供者」の側からが主流であるが,世界が常識とする「消費者」の側からの議論がほとんどない.あったとしても,話題は至近のミクロ的で,「供給者」のいうマクロ的な議論とはかみあわないことがおおい.
日本は先進国の先端を走っているといまでも信じているから,「遅れた外国」に「100円グッズ」を持ち込んで,それがどんなに便利かを自慢するTV番組がある.
相手の外国人に感心させると,そのグッズのお値段を質問し,かなり高額な回答をえる.そこで,「いえいえこれ100円なんです」というと,外国人がビックリする画像をとるという趣向である.
そして、「さすが,にっぽんじんは発想がすごい」とか,「日本の物価がそんな安いなんて意外」という感想がお決まりである.
「価格破壊」という点において,日本の「100均」には及ばないが,そのデザイン性(センス)と価格遡及で世界展開しているといえば,デンマークを拠点とする「Flying Tiger Copenhagen」だろう.フライングタイガーも100均も,ほとんどは「中国製」で,自国製のものは皆無だ.
消費者に,高級品からフライングタイガーや100均まで,さまざまな選択があるのが豊かな社会である.
だから,日本は本当は「豊かな社会」のはずである.
にもかかわらず,そんな実感がないのはどうしたことか?
「もの」と「ひと」が一緒くたになって,どちらも「安ければよい」になってしまったからではないか?
しかし,「もの」とても,超高級ブランドがあるから,「ひと」の「価格」だけが一方的に下がってしまった.
この意味するものは,価値ある商品やサービスを「安く提供しすぎ」ているためだ.
だから,「しすぎた分」は,消費者に「所得移転」してしまっている.
しかし,消費者の家計が好転しないのは,自身の労働という価値も「安く提供しすぎ」ているからだ.
つまり,これが「デフレ・スパイラル」である.
これを,「金融政策」という,かなり本筋から「遠い」政策で解決しようとしたのが政府・日銀であって,効果がぜんぜんない,ことの理由でもあろう.
こうしたことが,ずっと30年も,この国「だけ」で起きていて,どの国にも「波及しない」のはなぜか?
日本がみえない「鎖国」をしているからである.
これは,ちょっと前に話題になった「内外価格差」の存在のことである.
さまざまな「規制」によって,業界が他国から守られているから,国内での競争はあっても国際競争を国内ではしていない.
それで,気がついたら「世界」の働き方における労働の価値まで,国内だけでの評価になってしまった.
もちろん,100円グッズはありがたい.
しかし,人間の労働という「サービス・グッズ」にまで,安さだけをもとめたら,結局は最後,「高品質」という価値まで失わないか?
これが企業の不祥事が続発する遠因になっているのだろう.
スポンサー企業が「しぶちん」になれば,お金をパトロンから引き出せるひとが君臨するようになるから,スポーツ界にも,全国の「お祭り」にも波及するのではないか?
「有能な人材をもとめる」くせに,報酬は用意しない.
「有能な人材」は,ふつう「高額」なのだ.理由は「有能」だからだ.
ならば,「ふつうの人材」は,いくらなのか?
この金額が,わからないのが日本の「労働市場」である.
ならば,世界はどうなっているのかを調べたらいい.
賃金にみあった売上単価をどうやって達成するのか?
高賃金でなり立つモデルは,どういうものか?
これを,はやく構築しないと,「人手不足」で事業が継続できなくなる可能性がある.
それは逆に,高賃金を払えるならば,「人手不足」にならないことでもある.
ここでいう「高賃金」とは,「有能な人材」だけでなく「ふつうの人材」もふくまれる.
さらに,「はたらきやすい」もふくまれる.
手取りが少なくても,「はたらきやすい」が魅力になるウェートが増すだろう.
これは,経営者には「コスト」だが,働く側には,切実なメリットだ.
もはや「高賃金化」は避けられない.
その対策が,人件費削減では,意味不明だ.
日本の経営者は,100円グッズの「ビジネス・モデル」を研究すべきで,100円グッズを真似してはいけない.