「ITビジネス・アナリスト」という肩書きを名乗る、深田萌絵氏という若き女性ファイターがいる。
彼女の「業界分析」は、裏話の深部にも及んでいた。
もちろん、本人からすればそれでも「さわり」にすぎなかっただろう。
起業家として、IT系、特に半導体の設計を行う会社も立ち上げていたから、”その筋”、の情報には豊富にアクセスできたにちがいない。
書籍もずいぶん出版していて、ある意味、業界の内幕曝露を一般人に伝える、メッセンジャーである。
とかく「IT」というと、ソフトウェアとか、運用技術をイメージするけど、このひとの得意分野は、大元の「ハードウェア」に由来する。
また、探究心が旺盛なので、「うわさ話」も掘り下げて、自分で納得を試みたことの一端を紹介してくれていた。
しかし、知っていても誰もいわないから「業界の内幕曝露」になる。
ここに、都合の悪い人たちもいることは容易に想像できる。
それでも、彼女の好奇心は「正義」と結合して、さらなる「闇」に光をあててしまった。
それが、「保守論客」としての、本人が望んだわけでもない顔である。
わが国の国益の核心たる半導体技術の外国への「漏洩」という問題を追及したら、「漏れている」という自然現象ではなくて、「漏らしている」という人為なのではないのか?
それをまた掘り下げて、次の地層では、国際的な「うごめき」が発見できて、そのまた下の地層には、とんでもない「欺瞞」があった。
これを、おもわず「暴いて」、「公表」してしまったのだ。
まさに、本来はマスコミがやるべき「調査報道」の手本だ。
そうやって、「まぶしい」と迷惑をいうならまだしも、静かに「排除」をはじめたから、ことが大きくなって、とうとう「東京地検からの任意での事情聴取」ということになったのである。
彼女が気づいてしまった「闇」は、とんでもなく深くて広い。
「漏らしている」ひとには、個人と国家があった。
その水脈のつながり(ネットワーク)の、驚嘆すべき手法とは、「背乗り」という日本国籍の取得方法にまで及ぶ。
何度も当局に訴えたものの、「証拠」がない、というので彼女は、外国に赴いて、本人の「出生記録」を入手した。
とうとう、当局の担当者が、「証拠を持ってきたら捜査してやる」と、にわかに信じがたいことを言ったからだと。
そして、その「証拠」を見せたら、当該人物から「名誉毀損」の訴えがあるとして、今度は彼女が「捜査対象」になってしまった、という顛末なのである。
そうやって、東京地検に呼び出された彼女を応援しようと駆けつけた多くのひとたちが、歩道を埋めつくした。
それが、「7月27日」の出来事だった。
しばらく「泊まり込み?」になるやもしれぬと、覚悟をしていたが、当日に聴取は終了した。
彼女を応援するひとたちは、帰らずに歩道で待機していた。
そして、彼女は、事情聴取の様子を短く語り出した。
弁護士の同席も許されず、名誉毀損をいうひとの「証拠」を出したも「受理しない」という。
担当検事に、「あなたはわが国の半導体技術情報が外国に抜き取られてもいいのか?」と言ったら、職務にないので「興味ない」との返答だったとも。
これは半導体をめぐる「闇」どころの話ではない。
わが国の「闇」なのだ。
巨悪を扱った、過去のどんな「小説」や「映画」よりも、空恐ろしい。
なにしろ、「現実」だからである。
一方で、東京オリンピックでは、日本人選手たちの「活躍」が、「メダルの色と数」になって、「盛り上がり」を見せている。
オリンピック開催反対キャンペーンをやっていた、マスコミ(テレビと新聞)は、手のひらを返して、こんどは「素晴らしい感動をありがとう」と、毎度のごとく言い出した。
しかし、深田萌絵氏のことは、1秒も1字も伝えない。
おもわず「パンとサーカス」という言葉を思いだした。
古代ローマ時代の詩人が残した言葉である。
愚民政策を警告する、古代からの名言なのだ。
政府が、国民に気前よく食物と娯楽を与えれば、国民は喜んで政府に従うようになる。
別に外国人を排斥しようとは思わないが、世界で唯一わが国がとっている「不法滞在外国人への生活保護」も、とうとうアメリカ民主党がこれを真似て政策にして、将来の民主党への投票を目論んでいる。
わが国の場合は、これに反対する国政政党がないので、まさに日本国政府は「パンとサーカス」を基本政策にしているのである。
これを、現職の国会議員が、かつて「おかしい」と警告していた。
『「パンとサーカス」の時代』(1998年)は、農水大臣を務めた大原一三(おおはら いちぞう)氏の著作である。
氏が没したのは2015年。
もはや「警告」ではなくて現実になってしまった。