予想通り、ヨーロッパ中央銀行(ECB)はEUに逆らいそうなイタリア新政権に対して、嫌がらせをはじめた。
これは、英国新政権に対する嫌がらせとおなじだが、ECBだけでなく世界の金融亡者たちが、何かに取り憑かれたように英ポンドと英国国債を奈落に追いやったから、イタリアはまだ「序の口」である。
とはいえ、イタリアの新政権は、まだ発足していない。
この意味で、英国政権発足後の「大減税」発表直後からはじまった「暴落」とはちがって、政権発足前からの「仕掛け」がはじまったので、よりイタリアへの「制裁」感がある。
ブレグジットした英国とは、一線を画すやり方だけど、そのいやらしさは、イタリア国民の選択を無視した凶暴さがあるのだ。
しかし、「報道」や金融専門家の「解説」は、ほぼEU及びECBの方に日和っているから、寄らば大樹の蔭っぽい「忖度」が見え隠れする。
「体制側に付く」のが、ハイエナ的根性のあらわれなのだろう。
じっさいに、イタリアは戦後から一貫して「左派政権だった」ので、その「ツケ」と「アカ」が全身に廻って、万年財政赤字であった。
それゆえ、「イタリア国債」の引き受け手は、EU統合以来、ECBしかいない状態になったのである。
そこで「救世主」として登場したのが、ECB総裁として手腕を発揮したドラギ氏であったけど、元の木阿弥どころか、あれよと財政赤字を「増大」させてしまったのだった。
もちろん、ドラギ氏もグローバル全体主義者だ。
IMFの専務理事から、女性初のECB総裁になったラガルド女史は、やっぱり女性で初のEU委員長のフォン・デア・ライエン女史とタッグを組んでいるので、いまヨーロッパを支配する両巨頭は、奇しくも「女帝コンビ」になっている。
選挙中から「介入発言した」ライエン委員長のことは書いたが、この「脅し」にも屈しなかったのは、イタリアの有権者なのである。
この視点が、報道にも解説にも見えないのは、まったく民主主義を守る気がないグローバル全体主義の正体だ。
そんなわけで、イタリア国債の下落は、エネルギー危機がヨーロッパ最悪のドイツよりも、さらにイジメにあっている英国よりも悪い(金利上昇)のだ。
10年国債でこの3ヶ月の「75日移動平均」をみると、8月中旬には3.2%の最高値だったけど、9月直近では4.2%程度に下落した。
おなじ時期で10年ドイツ国債は、1.2%から1.4%への下落でしかない。
英国では、2.2%から2.7%ほどへ「暴落」しているのである。
やっぱりイタリアの無様が引き立つ。
しかも、ECBは、過去からの保有分の償還について、選挙のあった9月に早速、償還分と見合いでも新規の追加購入を「しない」ことを決めた。
これは、ECB保有のイタリア国債残高が、自動的に「減る」ことを示唆するので、新政権が「公約」とした「財政出動」に対する「財源」を止めた、といえる。
英国の新政権が「折れた」ように、イタリアの新政権は、政権発足前に「折れる」のだろうか?
もちろん、ECBとEUに日和る「マーケット関係者たち」は、「折れない」ならば、追い打ち的な「制裁」を行うとも示唆している。
つまり、なにもしないうちから「詰んだ」ようになっている。
なので、ここからはわたしの「妄想」である。
そもそも、「極右」という表現も意地悪で、むかしなら「保守」とか「伝統主義」とかと呼んだはずだ。
もちろん、「イタリア・ファスト」の、ナショナリストの政権なのだ。
どうしてイタリア人が「政権選択した」のか?
それは、EUとNATOの「悪政」からではなかったのか?
イタリアの選択肢は、日和るひとたちからは「異常」と非難されるだろうけど、国債を買ってくれる相手を探すしかない。
ECB以外「誰も買わない」と決めつけているようだけど、むかしから「カネは天下の回りもの」なのだ。
アメリカ民主党とEUのグローバル全体主義者がつくった、自滅のエネルギー危機は、各国経済を破壊することが目的の「革命」なのだと定義すれば、「敵の敵は味方」になるのも、マキャベリを産んだイタリア人の発想にないわけがない。
もちろん、仕掛けたひとたちが勝手に「舌なめずり」しているのは、ロシアの資源である。
しかし、ロシアはその資源をもって戦費にも充てているので、「資源高」の恩恵はむしろロシアが一番得ている。
とうぜんに、イタリア人は、ロシアからの資源供給を望んでいるから、ロシアとさまざまな「交渉」をしているはずだ。
ロシアは、資源が売れるに越したことはないから、イタリア国債を引き受ける、という「ウルトラC」がかんがえられる。
そうなれば、イタリアはロシアの「債務の罠」に自ら飛びこむことになると非難されるだろうけど、背に腹は代えられない。
もしやこれに、OPECだって乗るかもしれない。
なにせ、バイデンをして「失望」といわしめた、「OPEC+」による「石油減産」の決定が痛い。
この「+」が、ロシアなのである。
しかも、サウジはあの皇太子を首相に据えた。
そんなわけで、これに英国が乗ることはないだろうけど、ドイツが涎を垂らすほどになるはずだから、EUの自滅とは、EU委員会とECBの内部崩壊的自滅になるのではないのか?と、希望的観測をいってみたい。