先月28日、ロイターが伝えたところによると、ドイツ・国民自動車(フォルクスワーゲン:VW)は、EV生産工場を一時的に閉鎖(2週間)すると決めて、株価が反転上昇したことを報じた。
市場は、EV生産に否定的だったことをクッキリと示したわけだ。
昨年の暮れに、ドイツの3社(VW、ベンツ、BMW)がほぼ同時に、「EVシフトは不可能」と表明したことが裏付けられた結果になり、今回のVW社だけでなく、他のEV車メーカーも軒並み減産を余儀なくされているという。
もちろん、作っても売れないからである。
VWは、先代のCEOがざっと1600億円弱も投じた「EV生産投資」であったが、絶望的な赤字のために、工場従業員の解雇にもなっている。
対して、工場の地元政府(州)は、付加価値税の軽減や補助金の増額などを検討しているというが、ロシアからのガス供給が途絶えて深刻化した不況のために、財源確保の決め手に欠ける一方で、まだPHV(プラグイン・ハイブリッド)やHV(ハイブリッド)に人気があるという。
これには、後に書く「カラクリ」もあるから、ドイツ人やヨーロッパ人が、環境脳になったというにはまだ早い。
ヨーロッパ大陸のばあい、日本人が気をつけないといけないのは、そもそもディーゼル車が主流で、ガソリン車はわずかしか普及していない、という事情を忘れがちなことにある。
乗用車といえば、ガソリン車がふつうの日本とは、もとからちがうのである。
だから、いまの東京都知事がいう、ガソリン車の廃止とは、ヨーロッパ基準ならなんでもないことだけど、それなら日本では、ディーゼル車に変換するのが「順番:筋」というものだ。
かつての石原慎太郎知事は、ディーゼル車が排出する「カーボン」を詰めたペットボトルを振って見せて、関東エリアのバス・トラックに排ガス規制を実施した。
10年程前に、ベルギーを旅行した際、レンタカーのオペル車は1500ccのコンパクト・カーだったけど、素晴らしい加速と安定走行で、燃費はリッター30Km程度だった。
ただし、「ディーゼル・ガソリン」の価格は、リッター170円ほどだった(当時の日本では120円程度)なので、なんだ?とおもったけど、燃費と比べてそんなもんかともおもったものだ。
ちなみに、全体の1割も走っていないガソリン車なら、リッター250円という驚きがあった。
しかして、ヨーロッパのガソリンスタンドには、「成分表記」があった。
見慣れないので、どういう意味かがわからなかったけど、ディーゼル・ガソリンは、どうやら、わが国の軽油よりよほど精製されているらしく、そもそもがカーボンを排出しない。
なので、日本に輸入されるドイツ車などのディーゼル車は、日本の軽油に合わせた燃焼をさせるための調整をしているにちがいない。
念の為日本における燃料油の成分は、「公開されていない」ことがわかった。
経産省様が認可した製油所からの出荷であれば、販売していい、という「基準」になっていて、経済産業省がどんな基準を定めているのかも非公開なのである。
これが、産業優先国家のわが国の実態なのだ。
ヨーロッパの大陸人は、簡単に国境を越える狭さの中で生きているので、エンジン性能よりも先に、燃料の性能を上げて共通としたのである。
わが国では、この逆で、燃料の性能を上げる努力ではなくて、エンジンの性能を上げる努力をメーカーに強いた。
結局、これが世界で売れる「日本車」になったのは確かだけれど、おそらく、そのむかしの国際石油資本に都合のよい燃料を販売させたことが理由だったと想像できる。
横浜だと、横浜駅の北側、「そごう横浜店」の裏手にあった、「YCAT(初代・横浜シティーエアターミナル)」のあたり、いまの高層マンション群は、かつての「スタンダード石油(ロックフェラー)」の基地で、横浜大空襲の対象外(いまの「みなとみらい地区」や港湾施設も)だったため、国道15号線の海側にはいまでも古い家並が残っている。
「日欧のちがい」として、燃料の件と似ているシステムが、都市交通でもみることができる。
それがヨーロッパにある「時間別チケット販売制」で、市内の路線バスでも路面電車でも、車内の単純なタイムスタンプ機を通して印字すれば、時間内なら乗り放題となるのに、日本では高機能で高価な料金箱がバスの一台一台にあって、路線の乗り換えもできない不便を強いられている。
ときたま乗車してくる「検札係(私服)」に、不正乗車がみつかると4000円ほどの反則金がかかるので、確率論としてあたるとみて、彼の地のひとたちでも、ちゃんと事前にチケットを買うのである。
ヨーロッパ人は「大元」を押さえる傾向があって、日本人は個別に対応する傾向がある。
くわえて日本は、おのずと高負担になるようにできている。
しかして、ヨーロッパでEVが普及したのには、日本にないもうひとつのシステムがあるためだ。
それが、企業や役所でも、それなりの立場になったひとに与えられる(本質は「貸与」)、「カンパニー・カー」の制度がある。
これは、公用車でも運転手はつかないようなものだ。
しかし、本人には車種を選ぶ権限はないので、これがこれまで、EVだったのである。
その需要が一巡したというカラクリがある。
なお、世界一のEV普及率を誇る、ノルウェーでは、「われわれは偽善者だ」と、なんと副首相が認めてしまった。
エネルギー危機で、家庭の電気代が、平均して月13万円になって、EVへの満充電には、14,500円/回にもなったばかりか、石油と天然ガスの他国への輸出で、自国の炭素排出量を削減するという、究極の「部分最適」をやっていることを認めたのである。
あぁあ、なんたる不道徳。
いい子は真似てはいけないよ。