ipadの寿命と購入準備

いったん購入した製品は、大切に長く使いたいということが崩壊して、おおくのガジェットが消耗品となった。

この点で、伝統的工芸品とはまったくことなるのである。

しっかり造り込んでいる伝統的工芸品は、もともと丈夫なのは当然として、職人が何代も続くので、修理の際にそれをつくった職人の技も評価される恐ろしさから、販売に至った製品には一切の手抜きがないという特徴もある。

なので、購入者側も何代にもわたって愛用できるし、それを選んだ祖先のセンスも後世に伝わるのである。

ここが、いまは伝統的工芸品と呼んで、かつて日常用品だったときのふつうから、「進化」した点なのだが、高級品になって手が届かなくなったのは、生活のうえでの「退化」でもある。

こういうことは、味覚にも現れて、大正期に流行りまくった、「蕎麦の機械打ち」が大繁盛して、「手打ち蕎麦」が時代遅れだとして、嗤われていた。
「うん、やっぱり機械打ちの蕎麦は美味い!」が、当時のハイカラさんたちの日常になったのである。

ヨーロッパにおける初の総力戦となった第一次大戦の破壊が、粗悪であろうがなんであろうが、他に近代的生産国が日本以外に世界になかったために、とにかく日本製品が、作れば売れたことによる。機械文明への自信が信仰にまで高まったのである。

こうして、わが国は、道徳的・禁欲的であるはずの、資本主義が、ヨーロッパ中世以前の、儲け主義へと変容して今日に至っている。
戦後の高度成長期に、道徳的・禁欲的な明治生まれの経営者の一部が、財界リーダーになったけど、そんな哲学を忘れて売上・利益を信奉した後輩どもが、ふたたび儲け主義へと回帰させてしまったのである。

さて、電子機器としてのipadの寿命は、兄弟ともいえるスマートフォンと同様に、OSのバージョンアップ対象から外れたときが同時に寿命となる。

アンドロイドのスマホで、「日本製」をイメージさせる機種だと、ほとんどが2年でその役割を終える。
OSのアンドロイドを提供している、グーグルが直で製造・販売している、「Google Pixel」も、OSバージョンアップにおける保証期間は、4年でしかない。

iPhoneだと、これが6年となるから、「お得感」はあるが、元の価格がアンドロイド系とは比較にならない。
ただし、その遣い勝手の優劣は別である。

本稿ではipadの場合を書いているので、過去の傾向をみれば、おおよそ7年が寿命と思われる。

今年の9月にリリースされた、ipadOS17でも、7年前の新機種がバージョンアップの対象から外れたことで上記の見当がつくのである。

もちろん、この世界は日進月歩だから、OSのバージョンが上がることは、ハードウェアのスペック要求も自動的に高まるからで、7年もしたら古ぼけるのは、形状だけの評価ではない。

ユーザーとして、問題なのは、OSのバージョンから外れることが、そのまま、メーカーのセキュリティ対策からも外れるからで、便利に使えば使っていたほどに、情報ダダ漏れの危険に晒されるのである。

このことが、ユーザーにとっての最大の買い替え需要を喚起する。

日本製のスマホが、2年という短命なのは、将来のOSバージョンアップ予定の情報が、設計時に与えられないためだと思われるので、開き直って2年で終わるスペックに留めて、「安価」ということにしたら、中国製に適わないことになって、市場から退場しているのである。

ドコモが2年縛りを復活させたような、2年で強制機種変更するプランを設けたのは、この点でいえば、良心的だといえる。

一生におけるこの手の出費に、わたしのように人生の途中から出現したマシンとの遭遇ではなく、いま乳幼児以下なら、少なくとも一生で10世代分以上の端末を購入し続けることが、事実上強制されることになっているのだ。

これに、パケット代という、通信費が加算される。

すると、稼ぎのない完全消費者たる子供に、こうした端末を与えると、成人するまでに3世代分ほどの端末を親は買い与えないといけないし、パーソナルな端末だから、子供の数が増えると大変な負担となる。

もしや、これも少子化の一因やもしれぬ。
すると、政府はそのうちに、少子化対策と称して、タブレット購入クーポンを配布するのだろうと予想できる。

つまるところ、現代の文明生活のための必需品としての出費の強制なので、消費者にとっては、広義の「税金化」ともいえる。

さてそれで、ipadといえども、コモディティ化した文明の利器を、購入して7年寿命で、どういう更新ルーティンを組もうか?ということになる。

ちなみに、ipadOS16(上述のように、いまは17)から、コッソリと日本語配列外部キーボードに対応しているけれど、この機能を使うには、日本語配列キーボードを無線接続してからでないと設定できない仕組みになっていて、さらに、設定後でつかうには、利用アプリもいったん再起動させる必要がある。

わたしは、英語配列キーボード派なのであるが、モバイル用キーボードになかなか英語配列キーボードがないのが不満だ。

円安もあって、ただでさえ過剰スペックのipadが、パソコンよりずっと高価帯になっているから、悩ましいのを振り捨てて、購入準備をしないといけなくなっている。

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