どんなひとが「怠け者」なのか?

働かないで暮らすひとは、「怠け者」だというけれど、働かないで暮らせるひとってどんなひとなんだろう?

日本人の将来不安をつくっているのは、「公的年金」を主管する日本国政府が、「公的年金」だけでは暮らせませんよ、と断言できない「言論空間」があることである。

せっかく「2000万円ひつようだ」と正直にいったのに、なにを「怒っている」のだろうか?

わが国の「年金」制度は、戦時中にできた。
さいしょは「積立金」だったけど、戦後の大インフレで「積立金」がすっ飛んで、仕方ないので「賦課方式」に変更した。
用語として「掛け金」がのこったが、「税金と一緒」の意味になっている。

「税金」を政府があつめて、これを「公共の利益」のためにつかう。
民間企業では担当しきれない分野である、という定義が先にある。
それで、事業利益がでない「社会インフラ」にこそ資本投資する政府の役割がある。

だから、いったん定義した「分野」から、政府がはみだしておカネをつかうことを、みとめないのが「本筋」なのだが、「公平な分配」という「魔語」におびき出されて、他人からあつめた税金を、すきなようにつかいたい衝動にかられるのも「政府」の性である。

政府にはふたつの機能がある。
「集金マシン」としての機能は、税務署や地方税事務所がになう。
これをどうつかうかは「国会」や「議会」の役割だったはずだけど、一般会計だけでも機能不全になって、特別会計は役人の自由になった。

そんなわけで、公的年金とは、年金会計という「特別会計」にあるから、けっきょく「掛け金」なんて存在しない。
ところが、「賦課方式」とは、あつめた資金をその年の受給者に支給しちゃうので、現役世代がおおくて引退した高齢者がすくないときしか成立しない。

つまり、どんどん子どもが生まれる、人口拡大が前提になっている。
けれども、半世紀以上まえから、わが国の人口予測は「少子」を読んでいたので、この時点で将来「成り立たない」ことをしっていた。
それでも、しらんぷりできたのは、政治家の都合と役人の都合、それに国民の都合があわさったからである。

まるで「真珠湾攻撃」とそっくりなのである。

国民の都合とは、「掛け金」をかけていなくて、それで、戦禍にも生きのこった明治生まれの世代から支給されたからである。
このひとたちの「現役時代」、年金制度そのものがなかったから、掛け金をかけることもなかった。

ただでもらえる。

この刷りこみが、つづく大正・昭和世代にできたのは、サラリーマンの「掛け金」が、本人と雇用主である企業との「折半」だから、本人には「やたら安い」ようにみえたのである。
企業がいう「人件費」には、健康保険もいれた、社会保障費の負担分がふくまれている。

だから、「人件費が高い」という社長のボヤきには、社会保障費負担がデカイ、というボヤきもはいっている。
「脱サラ」して、個人事業主になれば、ぜんぶが「自己負担」になるから、「痛い」ほどよくわかる。

日本政府は「気前がいい」。
「気前がいい」ことをいう政治家が、とにかく人気を集めた。

しかし、なにごとも、きれいなバラにトゲがあるごとく、そうは問屋が卸さない。

だんだん政府におカネがなくなって、財政が赤字になってしまう。
そこで1981年に登場したのが「目刺しの土光さん」だった。
第二次臨時行政調査会のコンセプトは「増税なき財政再建」。
しかも、当時の鈴木善幸首相は、82年に「財政非常事態宣言」まで発表している。

が、焼け石に水。
徒労であった。

国民を「政府依存」にさせることは、政治家と官僚には、都合がいいのである。
政治家には権力を、官僚には公私混同の快楽が保障される。

じつは、日本人はとてつもなく強欲な怠け者なのだ。

会社ではのんびりテキトーになにかしていれば確実に給料がもらえ、将来も自己負担50%で年金生活が優雅にできると信じてきた。
こんなことを「信じられた」のは、強欲な怠け者の証拠なのだ。
それで、ない袖は振れぬと政府がいったら「怒り」だした。
どこまでも、強欲な怠け者なのだ。

じぶんの年金をじぶんで積み立てる。
政府が介入しようが、企業が負担しようが、原資はじぶんの「稼ぎ」である。

「日本版」という「枕詞」がつくと、とたんにニセモノになる典型に、「日本版401K」があった。
こんなインチキな制度をよくもつくったものだが、年金をぜんぶこのような「積立」に転換すればよかった。

そうすれば、年金をあつめる、運用する、くばる、ことを仕事にする役人がいらない。
いっとき、失業がふえるけど、気にしない。
優秀な役人には、民間がだまってみていない。

ただし、働かないで生活できる方法まであるのがわが国のやさしさだ。
じぶんの資産ではなく、他人のおカネで生活した方が、最低賃金で働くよりもみいりがいいようになっている。

まことに「税金」が安くなることは、ありえないのである。

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