ながければいい、というわけでもないが、一年もしないでコロコロ政権がかわったころと比べたら、圧倒的な安定感だ。
議会の絶対的多数を確保しているのだから、その「安定感」には裏付けがあるし、むかしはさかんだった「党内派閥」も、いまではすっかり色あせている。
にもかかわらず、「これ」といった「実績」がない。
なぜだろう?
最大のポイントは、いまだに「国家資本主義」をやりたがっている、ということではあるまいか?
19世紀から20世紀に流行ったが、世界中で資本主義がさかんになって、とっくに「国家」が経済を仕切れる時代ではなくなった。
日本の経済体制は、戦前の国家総動員体制が戦後も温存された、という事実をわすれてしまうと、なにがなんだかわからなくなる。
なんども書くが、戦後復興と高度成長が、この国家総動員体制による政府の主導で成し遂げられた、というかんがえ自体がまちがっている。
戦後の混乱による、政府機能がそこなわれた時期こそが、日本経済の成長をうながし、朝鮮動乱とアメリカの対日基本政策の転換があったゆえの「奇跡」だった。
おカネがない政府、そして財政規律があった政府だったから、その後の「豊かな時代」における潤沢な政府予算が「ない」時代こそ、わが国経済は画期的発展をとげたのだ。
だから、いまの時代ならほんらい、政府機能をどのように制御するのか?についての「思想」がなければならない。
伝統的に左翼ばかりの野党は、とうぜん社会主義計画経済をやりたい。
ながねん政権を担ってきた自民党が、なんだかんだいまも与党で、しかも圧倒的な勢力なのは、自由主義、だという国民の期待からである。
しかし、ほんとうは自民党こそが、社会主義計画経済の推進者なのだ。
これが、民主党へ政権が移ったときの、国民の自民党への失望だったはずだが、あろうことか、民主党は、自民党よりほんの少しだけ左翼だったから、より強力な社会主義計画経済をやろうとして自滅した。
結果的に、より「まし」な、自民党に政権がもどっただけだ。
口癖のようにいう「自由と民主主義という共通の価値感」など、いっている本人にないものだから、米国のトランプ大統領に圧倒されるのだ。
そういう事情をかんがえれば、世界の四極構造のうち、日本タイプが三極で、アメリカ一極が「自由と民主主義」を文字どおりやっているのがみえてくる。
つまり、日本、中国、欧州は、日本タイプの「国家資本主義」をやりたいのだ。
日本タイプの表面上の指導者は、田中角栄だ。
中国共産党と田中角栄の関係は、角栄失脚後もより一層のものだった。
改革開放路線というのは、日本タイプの国家資本主義なら、共産党独裁政権による支配が継続できるとかんがえたにちがいない。
なぜなら、自民党独裁政権がつづいているからである。
おそらく、欧州も、日本研究の結論として、みずから日本タイプに変革することを「是」としたのだ。
それで、自由と民主主義を「いかに棄てるか?」を入念につくりあげた。
欧州は、どのような仕組みになっているのか?
じつは、むき出しの官僚支配であって、日本的要素が露骨に飛び出してしまった。
先月の欧州議会選挙で、英国のブレグジット党が大勝したことがニュースにはなったが、いまひとつピンとこないのが「欧州議会」ってなんだ?ということだ。
この議会、「議会」と名前はあるが、「立法府」ではない。
さらに、「欧州理事会」というのがあって、これは、EU加盟国の国家元首か政府の長で構成され、この中からえらばれたひとが「EU大統領」といわれてはいるが、アメリカの大統領とはちがって、ドイツの大統領のような「名誉職」だ。
すると、EUはいったいだれが仕切っているのか?
それが、「欧州委員会」だ。
この「委員」は、官僚によって構成されるから、ひとりも選挙でえらばれたひとはいない。
欧州人は、日本化するにあたって、日本より強力な欧州にするため、「優秀な官僚」による支配体制を、構造上も露骨につくりあげたのだ。
これは、各省庁が国会の上に位置するのとおなじだが、日本の実態を忠実に再現すれば、たしかにこうなる。
そもそも、日米に対抗するためにできたのがEUなのだ。
日本タイプと米国タイプのどちらを採用するか?
官僚統制の成功、いわゆる一般的な日本の成功というウソ物語を信じた欧州の決断が、おそらくこれから歴史的崩壊をまねくのだ。
アメリカを産んだ国、イギリスが離脱するのは、とっくに経済問題ではなく、思想の問題なのだ。
それを、どっちが得か?でしかかんがえられない卑しさが、あいかわらず日本国を支配している。
欧州の問題は、日本の問題のコピーなのだ。
安倍内閣にこれといった実績がない、深くておおきな理由である。