仕事柄,講演の現地会場ホテルでドキッとすることがある.
「電池がない」ときだ.
最近は,マウスも無線のものが増えている.
講演というと,パソコンのプレゼンテーション・ソフトをつかって,現代的な紙芝居をおこなうものになった.そのパソコンのパッドが,立ったままの講演ではつかいにくいから,マウスの出番があるし,画面送りをするための端末が,レーザーポインターと一体なっているものを愛用している.これをつかうと,講演台からはなれても解説を続けることができるからだ.
ところが,電池切れ,という事態が発生することがある.
直前に気づくと,かなり焦る.
当然,売店をさがすが,土産物ばかりで電池がない宿がある.そこで,フロントに駆け込むが,そこでの対応で唖然としたことがある.
「お客様,電池のご用意はあるのですが,売り物ではありません」
あるのならいいではないか.
しかし,「売上方法がわからない」と言われたことがある.
「それ,事務用ですよね.ならば,しばし拝借できませんか?」
こうして危機を脱したことがあるから,講演につかうマウスは有線にした.レーザーポインターは有線にできないから,電池の予備は持ち歩くことにした.
会議や講演会でこうした事態はなかったのか?
「ありがとう,助かりました」といってフロントに電池を返しに行くときに,過去にこのようなことはなかったかと聞きたくなる.それが「恩返し」だとおもうからで,イヤミではない.
「けっこうあります」と笑顔でこたえがかえってくる.それは,ちょんぼったわたしにたいする思いやりからかもしれないが,ある意味,期待通りのこたえである.
その地域ではそれなりのステータスがあるとして会場に選ばれたのだろうから,わたしなど比べものにならない有名人も,このホテルで講演をする機会もあろうし,会議需要も通常のことだろう.
そうであれば,なおさら確率的にこのような事態が発生するだろう.
だから,「けっこう」あるのだ.
なぜ対処できないのか?
状況が理解できていないばあいがある.
問題が,たかが乾電池の一個や二個,とかんがえると,そんなものは,ちょっと5分も歩くほどの近所にあるコンビニに売るほどあるから,わざわざホテルで用意するようなものではない,と勝手に判断する.くわえて,大きな問題に過去ならずに,客側がなんとかしたから,ホテル側は「問題である」と認識していないかもしれない.
さらに,「販売用の乾電池の在庫」などもちたくない,ということもあるだろう.なにしろ,「けっこうある」といっても,それは半年に一回もないだろう.
ところが,事務用の乾電池の在庫はいくらでもあることがある.
さて,この事象をどうかんがえればいいだろうか?
売上方法がわからなかった
つまり,売上方法をかんがえればよいのである.
「その他売上」という売りかたがある.
だから,その他売上伝票を作ればよい.
経理は,この伝票を,事務在庫から振り替えればよい.
とっさにこの処理ができたらたいしたものだ.
おそらくそうはいかないから,ふだんからのシミュレーションが効いてくる.
たかが電池,されど電池なのである.