「反外国制裁法」の施行

「チャイナ・リスク」が明文化された「事件」である。

しかし、だからといって「本質」になにか変化が生じたものでもなんでもない。
むしろ、だれにでもわかること、になったので、まったく不思議なことになった。

いままでは、いつ、だれが、どのように「制裁される」のか?がわからなかったからである。
そうやって、彼の国で検挙されたり逮捕されてしまった外国人が、釈放されるわけでもない。

果たして、この「法律」を「立法」した意図はなんなのか?
むろん、彼の国での「立法」とは、「党」が決めることである。
その「党」は、「万能」をもって君臨する。
「神」や「宗教」を否定する、根本理由がこれだ。

しかし、それでも一応の「内部規則」がある。
それが、「法案審議」は「三度行う」というルールであった。
ところが、本法は「二度」をもって発布された。
「G7」の議論にあわせて、急いだからだろう。

つまり、G7にプレッシャーをかけた「つもり」なのだ。

けれども、やっぱり「通用せず」、「包囲網」のしばりは強まった。
念のためいえば、G7は「中・露包囲網」ということになっている。
「露」が入ってくるのは、約180年前の「クリミア戦争」での勝利が、ロシアによる「併合」で踏みにじられた、英・仏の恨みがあるからである。

それに、アメリカ・バイデン政権も、「悪魔の露」としておきたい思惑がある。
下院で弾劾までやったトランプ政権への「ロシア疑惑」のキャンペーンがあるからだ。

もちろん、わが国には「北方領土問題」がある。
だから、中・露包囲網といっても、わが方は、露包囲網に重点をおくのだという「名分」がある。

さてそれで、ようやく「この法」で、わが国財界がうろたえることになっているようだ。
日本政府が世界と一緒になって、「中国包囲網」に加わって、この法を「適用」されたら、どうしてくれる?というわけだ。

そんなことを「民間」からいわれても、自分たちには関係ないと思考するのが、エリートを自負する外務官僚たちである。
もちろん、アメリカからいわれて釘を刺されたら、従うしかない、という本音がある。

「従うしかない」から、「民間企業」がどうなってもしったことではない。
これは、「コロナ」とおなじ構造なのである。
アメリカからワクチンを買って国民に打てといわれたら、そうする。

文官は打たないけど、警官や自衛隊員には接種をするのは、平安貴族からみた、血に穢れた「侍(さぶらい)」を卑下した態度とおなじ感覚があるからだ。
まさに、警官や自衛隊員とは、現代の「検非違使」なのだった。

だから、問題はアメリカの「本気度」なのだ。
民主党に政権交代して、国内における政策では、トランプ時代の政策をことごとくひっくり返してきたけれど、どういうわけか外交政策は、トランプ時代をしっかり踏襲している。

とくに、反中国の姿勢は、崩していないのだ。

これには、議会の力もはたらいているのはもちろんだけど、軍の意向もあるだろう。
「米中の綱引き」で、決定的な場面とは、「ドル取引」までも題材にするのか?という局面である。

すなわち、アメリカが「ドル決済の中止」を宣言したとたん、相手国の「金融」が崩壊する。
世界の銀行システムは、「ドル決済システム」として機能しているからである。

たとえば、ロンドンに拠点をおく大銀行、HSBC(漢字では「香港上海銀行」)は、その出生からの流れから、中国におけるビジネスのため、アメリカはもとよりイギリス政府の意向とは「ちがって」、中国ビジネスを優先させてきている。

このあたり、日本企業の「あまりに深入りした投資・ビジネス実態」と似ているのである。
しかし、「本法」によって、米・英から中国への「制裁」がより強まったら、お返しとしてビジネス上の制裁を受けることが「確実」となった。

そのとき、従来のように中国ビジネスを優先できるか?という局面で、もしや「ドル決済システムからの排除勧告」でもうけたら、もはや銀行として選択の余地はない。

習政権が、どうしてこんな、事実上の「撤退加速法」をつくったのか?
「香港・上海」といえば、「江沢民派」の拠点だから、もしや、すさまじい「江派潰し」が目的か?

深い理由は不明だけれど、トランプ氏が躍起になって、アメリカ企業の撤退をうながしたことが、「効果なし」と嘲笑されたことを思い返せば、もっとも効果がある方法を、相手がとったのである。

さては、日本企業の行動は?

みんなで進出した「横並び」の行動原理にしたがえば、「雪崩をうって」ということになるのか?
それで、引っ越し先が再び「共産主義」のベトナムだったら、これはこれで学習できないひとたちだということになる。

外貨持ちだし規制がある国とは、事実上、ドルで投資してドルで回収できない国をさす。
現地通貨をしこたま貯め込んで、なにをしたいのか?

ほんとうは、「チャイナ・リスク」なのではなくて、単純に「投資先選択」における、「投資リスク」が顕在化した「だけ」なのである。

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