「魔法使い」になった経産相

このたびの北海道地震で,道内ほぼ全域が停電となった.
対して,6日,経産相が「数時間以内に電力復旧のメドを立てるように指示をした」.
一方,今回の停電は「ブラックアウト(全系崩壊)」が原因であった可能性が指摘されている.

ブラックアウトだとすれば,わが国で「初めて」という事態である.
これは,震源に近い発電所が運転を自動停止したのをうけて,周辺の発電所がバックアップをしようにも,みずからのシステムを守るために,安全機能が作動して連鎖的に電力供給が遮断されることをいう.

また,本州からの給電をえるために用意がある送電網(直流)も,これを交流に変換作動させるために電力を必要とするから,なんと給電をえることができない.
これは、どこかで聞いたはなしである.
福島第一原発における,「全電源喪失」と似て,北海道全域という「系」のなかで,「全電源喪失」という事態となった.

「電力業界」は,言わずと知れた「経産省管轄」だから,ここでもまた「官僚の落ち度」が厄災の元凶となった.
そのアリバイのために,高飛車な態度をとって,能なしは電力会社であるという責任のおしつけを図ったのが,大臣の発言主旨だろう.

もしそうではなく,この大臣のみずからの意思による発言だとすれば,命令すれば何でもできる,という精神構造があきらかとなって,物理科学的な現実を無視した「魔法使い」をまじめにやろうとしているから,まさに「ファンタジー」だ.
この国の「大臣」は,政治家ではなく「官僚」のトップに成り下がってしまった.どっちを向いて話しているのか?

どちらにせよ,被災者にとっては唖然とするはなしで,どうでもいいから電気が欲しい.
原発事故の教訓が,相変わらずまったく活かされないのは,その原点にある「想定」がまちがっているからだ.
これを,あたかも責任回避する便利な用語の「想定外」という一言で,役人はだれからも処分されない.

近年まれなる破壊力が予想され,さかんに事前警告があった先週の「台風」で,関空が機能不全になり,8千人の利用客が人生の記憶に残るだろうひどい「おもてなし」を受けた.
はたまた,京都の山奥では宿泊研修中の小学生160人が孤立したさわぎとなった.
どちらも責任者は「想定外」というが,これがほんとうに「通じる」社会なのだろうか?

外国人が珍しがるから,ある種の「観光資源」にもなっているのが「電柱と電線」である.
ようやく「簡易型の埋設方式」が,一部で「実験」対象となっている.
なぜ,電線は電柱が常識で,埋設がいけないのか?
せっかく,大金かけて埋設したのに,なぜ「トランス」は地上に鎮座しているのか?

「想定」の前提が,「産業優先」の「産業政策」という枠内にあるからである.
端的にいえば,「利用者優先」や「消費者優先」になっていない.
もっと深くいえば,民主主義でないのだ.

どうして「野党」がこの点を重視しないのか,まったく不思議である.
「支持率ゼロ」の政党が存在する不思議があるが,その政党も,あろうことか別の方向をみているようである.
これは、マーケティングがめちゃくちゃであるという証拠である.

そんな具合だから,科学にうとい「高等文官」たちが跋扈できるのだ.
電力会社は,電気を起こして配電して販売するという商売だ.
地震で発電所が停止したらどうなるのか?「大損」である.
地震や台風で配電のための,たとえば電柱が倒れたらどうなるか?「大損」である.

利用者には,電気がない生活はありえない.
それで,なにがあっても電気があることを前提にするから,電力会社の安定供給のための投資を負担するのは仕方がない.
だから,インチキがないように会社は活動内容を正しく公表する義務がある.

これに,命令して歪めるのが役所である.
電力会社にも,利用者にもためになることは「想定」しない.
その余計な分まで,利用者は負担させられるから,二重に損をする.
学業で勉強できたひとたちが,自分以外はバカだと信じているから,電力会社も利用者もだまって命令に服せばよいと思考するのだ.

しかし,その命令は,魔法使いの魔法である.
科学技術の知見をこえた法律をつくって,それを守れと命令すれば,世の中は法律どおりになるというのはどうかしている.そうかんがえるのは「凡人」だ.
日本のエリート官僚は,できないといえば,法律違反だとして罰をくだす.
それでもやっぱりできないと,民間はバカばかりだと内輪で満足する.
「いえいえ,そんな技術を人類はまだもっていません」といって許してくれるひとたちではない.

利用者は,なんと「魔法」の分まで負担させられている.

被災者には衷心よりお見舞い申し上げる。

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