いまだに火薬庫バルカン半島

来年、2021年のノーベル平和賞にノミネートされたトランプ氏に、新たな「実績」が加わった。
それが、バルカン半島の旧ユーゴスラビア、コソボとセルビアの経済関係の正常化だ。

場所は、イタリアの長靴半島の北東側、アドリア海に面するアルバニアの東の内陸がコソボ、その北にセルビアがある。
セルビアの首都が、かつてのユーゴスラビアの首都、ベオグラードである。

また、コソボの南東にある、北マケドニアの南隣はギリシャである。
このギリシャとトルコさえもが、緊張緩和の動きになってきてる。
すると、ギリシャとトルコで島を二分しているキプロスも落ち着くかもしれない。

ベオグラードから真東に行けば、ルーマニアがある。
ルーマニアの北に接するのがウクライナで、そのまた北にベラルーシがある。
ウクライナもベラルーシも、東隣は巨大なロシアで、どちらも旧ソ連の一角だった。

第一次大戦の勃発は、セルビアを訪問したロシア帝国の皇太子が暗殺されたことに端を発するのは有名だが、これは、「トリガー(引き金)」にすぎなかった。
バルカン半島が「火薬庫」とは、大戦前からいわれていた。

ただでさえ狭いヨーロッパにあって、バルカン半島の複雑さは、民族問題ということが基礎にあるから、なんとも面倒なのである。
「民族」は、たいがい「言語」と「宗教」で区別される。
この地域は、言語と宗教のちがいでいまだにモザイク状態なのである。

これは、古代ローマ帝国の前からで、いったんローマがまとめたけれど、結局ローマが滅亡していまに至っている。
ローマの最辺境だったから、ルーマニアは「Romania」(ローマニア)なのであって、この国は文字も「ローマ字」なのである。

南のブルガリアも、北のウクライナも、ロシア語に採用された「キリル文字」だから、ルーマニアから南接する国境のドナウ川の橋を渡ってブルガリアに入った途端、看板の文字が読めなくなる。
驚くことに、かつての東側ソ連衛星国だったルーマニアとブルガリアのひとたちは、いまだに互いの字が読めないことに困らないほど疎遠なのである。

わが国からみれば、こんな遠い地域の紛争や和平がなにになるかと思う向きもあろうけど、一歩まちがうと再度の世界大戦になりかねない。
それは、過去の大戦が、まるでドミノ倒しのようになったからである。

コソボとセルビアの経済関係といえば、金額的にはたいしたことはない。
けれども、これを仲介したのがアメリカだから、旧東欧の紛争にアメリカが影響力を発揮したことを世界にはっきり示したことが重要なのだ。
ロシアの気分はいいわけがない。

いま、ロシアはベラルーシの大統領選挙結果に手を焼いている。
ヨーロッパ最後の独裁国家を、なんとかロシアが支持しているのは、敵対候補が自由主義だからである。
もし、ベラルーシが自由化して、EUあるいはNATOに加盟でもされると、ロシア防衛の緩衝地帯が消滅するのだ。

ところが、実際にはルーマニアのチャウシェスク政権が崩壊したような様相になってきている。
果たして、ロシアは軍事介入するかもしれない。

それを、アメリカはコソボとセルビアの仲介で、やんわりと地固めしたのだ。
つまり、トランプ氏はロシア疑惑をいわれて「大統領弾劾」までされたけれど、反ロシアをはっきり示したということである。

あたかも、東アジアの波が高くなりつつあって、アメリカの空母打撃群に注目が集まっているけれど、あんがいバルカン半島の抑えが効いて、ベラルーシが熱くなってきた。

ロシアには、ポーランド、ベラルーシ、リトアニアの三国に雪隠詰めされている、バルト海に面するカリーニングラードという「飛び地」がある。
その中で、リトアニアは、徴兵制を復活させたのは、対ロシア防衛を理由にしている。

リトアニアは、ベラルーシとは国境を接するが、ロシア本土とは接していない。
彼らのいうロシアとは、カリーニングラードのことをいうのだろう。
もちろん、ここには現ロシア・バルチック艦隊の「不凍港」と、二つの空軍基地があり、核ミサイルの発射拠点でもある。

ウクライナのクリミア半島を占拠したロシアは、経済制裁を受けたままで、もちろんウクライナとは最悪の関係が続く。
もし、ベラルーシが「陥落」したら、はロシアにはかんがえられない悪夢であろう。

バルカンの火薬は、バルト海に及んでいるのである。

しかして、トランプ氏の仕掛けた「自由」と「人権」は、香港からバルト海に飛び火して、驚くほどの変化を起こしている。
いまは、一歩まちがうとNATOとロシアの戦争になりかねないのである。

わが国には関係ない、はぜんぜん通じない。

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