たまに「名作」にぶつかる

テレビを観なくなってひさしい。
ニュースも天気予報も一切観ないで、ちゃんと社会生活ができるから、受信機があるというだけで受信料を徴収するのは、「なくてはならないもの」に対する勘違いでしかない。

ものがない時代と情報もない時代の賜だった「放送」が、すっかりコモディティ化してしまったので、「受信料問題」という「問題」が、顕在化してきたのだ。
その意味で、制度も「古い」が、かんがえ方がもっと「古い」。

何回か書いたが、観るのは「YouTube」である。
こちらは、事実上の「アーカイブス」にもなっている。
いい悪いの議論はあるが、よく観る傾向をAIが判断して、そのひとが好みそうな動画ばかりを提案してくる。

それで、仕方ないから、なるべく興味がない動画も選ぶようにしている。
すると、なんだかいろんな動画を提案してきて、たまに「ヒット」するから、AIもまだまだのレベルなのだとわかるのである。

わが国を代表するゲーム機メーカーに成長した、もとは「花札」や「トランプ」をつくっていた会社がつくったゲーム機のために、不思議な「番組」もつくっていた。
このゲーム機は、動画を観ることができる機能があって、その機能紹介のために製作されたものだとわかった。

初代のゲーム機と後継機種は持っていたが、複雑化するゲーム内容についていけず、ぜんぜん興味をうしなってしまったから、いまどんなゲーム機がどうなっているのかをほとんどしらない。
スマホでゲームをしているひとをみると、その時間の読書をすすめたくなる悪い性分もある。

たとえ「サンプル動画」だとしても、あらためて検索したら、なかなかの話題になっていた。
10分ほどで短いけど、内容がよく吟味されている良質の「シリーズ」は、全部でたったの「15本」で終了している。

『修理 魅せます』

ナレーターは、石坂浩二による。
彼は、プラモデルのおそるべきファンだというから、この手の「番組」のナレーションは、楽しくて仕方なかったにちがいない。

「修理」という分野は、「ものづくり」とはちがうジャンルなのだとよくわかる。
しかも、それは、新製品をつくるよりよほど難易度が高い。
これを、15の製品で「魅せ」ている。

それは、出演する職人全員のもっとも重要視していることが、「依頼主の思い出」だからである。
かれらはものを修理しているのではない。依頼主の「こころを修復」している。
だから、かれらは、製造業ではなくて「感情産業」のひとたちなのだ。

日本がかつて世界を席巻した「テレビ受像機の製造」は、もはや壊滅的である。
いわば、当時のアメリカ人が味わった家電製造業の壊滅を、いま、われわれが追体験している。

失業はこまるけれども、アメリカ人はお構いなしに、日本製のテレビを購入したのは、安くて性能がよかったからである。
いま、われわれだって、安くて性能がよければ、日本製にこだわることはないとかんがえて、購買行動をしているのだ。

むしろ、あたかも「日本製のような」製品がおおくなって、なにがなんだかわからないから、いっそうこだわりがなくなっていく。
その代表がテレビ受像機である。
メーカー名が「ブランド」としてあつかわれるから、わが国伝統の電器メーカーがつくったものだとおもわせる「怪」がある。

4Kだろうが8Kだろうが、解像度が高くなっても、これにみあうコンテンツがない。
だから、買っても無駄だとおもうけど、どうしてみなさんがほしがるのか?

テレビを売りたかったら、その機能にみあった番組が放送されないと意味がないのである。
「日曜劇場」や「水戸黄門」を電器メーカーの提供でやっていたのは、このためでなかったか?

それで、ゲーム機メーカーが、驚きの番組をつくってしまったのだ。

しかし、この「シリーズ」は、できがよすぎた。
およそ、このシリーズを観て感激するひとたちなら、はたして最新のゲーム機を自宅に購入するのか?
いや、こうした番組に敏感なひとたちが、ゲーム機を購入すると意図したのか?

けれども、ゲーム機を購入しないと観られないのなら、やっぱり「順番」がちがう。
「おまけ」なのである。

すると、なんて贅沢な「おまけ」か?
儲かりすぎて税金をおさめるぐらいなら、思いっきり「無駄遣いしてやる」と意気込んだのかもしれない。
それで、業績にかげりがでたら、企画も中止になったのか?

それなりに製作されてからの年月がたっているけど、こんなシーリーズをつくったことに、とても好感がもてる。
このゲーム機メーカーを見直させられたのである。

ならば、今度はテレビ・メーカーが、後継番組の権利を得て、これぞという新シリーズをつくってほしい。
それが、最新の映像技術とどう結びつくのか?
ただ「きれい」な画面ではなく、ドキュメンタリー番組として成り立つ手本を示してほしい。

テレビを売りたいなら、ほしくなる番組がなければならない。

まさか、こんなことも、メーカーは忘れてしまったのか?

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