みえるところしか見ない

残念な企業・組織の特徴のひとつが,みえるところしか見ない,であって,もっとひどくなると,みえるところも見ない振りをする,になる.見て見ぬ振り,ようは,無関心になる.

経営者をまねる

どんな組織も,トップの立ち居ぶるまいがその組織を代表する.
振る舞い,すなわち行動は,そのひとのかんがえ方からにじみ出るから,ごまかすことができない.だから,これを「言動」という.
日本人は組織を優先するように育てられる.とくに学校という組織は,個人に組織秩序を守らせるための訓練の場所にした.これは,成績とはべつの価値観だから,勉強ができなくても組織に従順なら問題児にはならない.だから,「いい子でいる」か「いい子でいる振りをする」ためのストレスが,イジメのエネルギー源かもしれない.

ときに,大企業の経営者も,まるで子供じみたことを命じることがある.
たとえば,「ノー残業デー」や「◯◯曜日は早帰りの日」などと,まったく本質とは関係のない,しかも子どもでも無意味だとわかることを,まじめに命じ,それを部下たちがまじめに実行することがある.
最近では,お国が命じた「プレミアムフライデー」がそれだ.

部下の無関心ほどこわいことはない

今日はやく帰っても,いつもの残業分の仕事は先送りになっただけだから,明日以降で消化しなければならない.だから,もっとも従順な従業員は,早帰りをまもって,翌日は早朝出勤をする.そうしないと,翌日発生するだろう,翌日分の残業が消化できないからだ.

なんでこんなことしているのだ?という疑問をもつことがムダになる.だから,これは,まじめな従業員ほど無関心にさせる訓練になる.すると,従業員の「仕事」は,とたんに「作業」になるから,あたらしいことはしない.あたらしいことほど,達成には面倒なことが増えるからだ.そうして,この組織の基準業務がきまる.

このような組織に,上から「予算」をあたえても,みごとにはじき飛ばされる.できない理由が延々とつづくだろう.それは,トップの姿の写しになるから,いつしか全社でトップの意向は無視される.

それで人事権をふりまわすと

簡単である.恐怖政治になる.恐怖政治でさいしょに犠牲となるのは幹部である.それで,その幹部と同格あるいは同格以下の幹部にも恐怖政治が伝染する.これが「パワハラ」になって顕在化する.すこしだけ利巧なトップは,犠牲に指名した幹部の罪状をあげて,組織で攻撃しようと旗を振る.

ジョージ・オーウェルの古典的小説『1984年』の,支配体制がそのまま現実になることがある.

みえないところを見ようとする努力

組織のトップが,いつも「みえないところを見ようとしている」なら,上記の悲劇は発生しにくい.
このようなトップなら,見た目の残業削減などにめもくれず,業務の見直しそのものを命じるからだ.なぜその業務をやるのか?案外,組織には理由がはっきりしない「業務」が埋まっている.これが,「社内金鉱」である.こうしてみつけたムダな業務を削減すれば,従業員の手間が減る.紙が減る.ゴミが減る.それで,あたらしいことに取り組む余裕がうまれる.

これが習慣化すると,従業員も「みえないところを見ようとする」ようになるから,勝手にビジネスが展開するだろう.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください