もうすぐトランス脂肪酸が話題になる

アメリカでは,ことしの6月から,水素添加のトランス脂肪酸含有食品が禁止になる.
あと二ヶ月ほどだから,もうすぐ日本でもトランス脂肪酸が話題になるはずだ.
なお,水素添加ではない反芻動物のトランス脂肪酸は自然にできてしまうので規制の対象ではない.つまり,人工的・工業的に油脂(おおくは植物性)に,圧力をかけて水素をくわえると固まることでつくるものが対象になるということだ.
代表的なものは,マーガリンや,パンの原料になるショートニングである.
これらをつかった,あんがいすごい量があるのは,ポップコーンやドーナッツである.

ちょっとだけ化学のはなしをすると,不飽和脂肪酸の分子構造は二種類ある.
「シス型」と「トランス型」である.
シス型は,二本ある水素分子の枝がおなじ方向についているから,「SIS」といい,トランス型はこれらが対象になって「横切る」ようについているから,「TRANS」という.シス型は棒の両端からアンテナがでている格好で,トランス型はカギ状になる.

それがどうした?ということだが,トランス型は動脈硬化の原因になるという証拠がでてきた.それは,HDLコレステロールを減らしてLDLコレステロールを増やすからで,心臓疾患につながるというのだ.

それで,WHOも,カロリー摂取量の1%以内という指針をだしている.
アメリカ人は,ポップコーンやドーナッツが大好きだから,この指針をおおきくこえてしまって摂取している.それで「禁止」という最強の規制をうちだした.
この規制によって,年間4000人とかの心臓病患者数がへると期待されている.

アメリカのほかに,すでにデンマークなどで規制されているし,EUも規制の方向で検討している.豪州では「自主規制」をかけていて,効果をだしている.

で,日本は?となる.
この問題のまえに,平成14年に「健康増進法」ができて,「健康日本21」というのがあるのをご存じだろうか?
それで,「国民大会」とか「推進国民会議」などというものがおこなわれている.
これは,むかしさかんだった「国民運動」というやつだ.
だから、正式名称は,「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」となっている.

ヒトラーのナチス(‎国家社会主義ドイツ労働者党 )が,選挙によって政権与党になったのには,当時のドイツ国民から支持された人気政策があったからだ.それが,「健康推進」だった.
ナチス党員のパン屋は,お客の健康のため,黒パンしか焼かなかった.白いパンは害となるからだ.こうして,お客は白いパンをたべることができなくなったが,健康のためと自分にいいきかせた.

ついでにいえば,ヒトラーは個人的にたばこが嫌いだった.
それで,ナチスはたばこ撲滅運動を熱心にやった.
第二次大戦の戦争映画で,ドイツ軍側の登場人物がたばこを愛好していたら,それはナチスにさいごまで抵抗した国軍の意地を表現しているはずだ.
くわしくは,「健康帝国ナチス」を参照されたい.

 

それでか,「健康日本21」には,「政府が国民に押しつけるものではない」と,Q&Aにて説明している.全体主義は,「個人の自由」をとなえながら奪うものだ.
語るに落ちるとはこのことか?

神奈川県を嚆矢に「禁煙条例」ができたが,罰則をともなうその原案には「家庭内」もあって,これはすぐに削除された.しかし,東京都の「禁煙条例」では,その「家庭内」を柱とするというものになったから,そうとうの「進歩」である.
ひたひたと国家や公権力が家庭に上がり込んでくる時代になった.

この条例を通した女性知事は,「保守政治家」と分類されるらしいが,すくなくても公権力が家庭にくることを拒否する「個人主義」や「自由主義者」ではないだろうから,いったいなにを「保守」するというのか?防衛大臣を経験すると,自動的に「保守」になるのだろうか?
日本における「保守」の定義は,英国の「保守」とは正反対なのだろうから,用語に乱れがある.

というわけで,大がかりな「国民運動」が10年以上もおこなわれているのだが,トランス脂肪酸のはなしとなると,急速にトーンダウンする,というより「運動」の対象になっていない.
農林省のHPには,欧米人の摂取量より日本人の摂取量がすくないから,とくに問題なしとしているし,もしもおおく取っているとおもうひとは「自分で注意して」,国としては「留意する」としている.「留意」とは,「放置」のことだ.

つまり,WHOがいうように「危険は承知」だが,「だいじょうぶ」気にするな,ということにしているのだ.
それで「なにもしない」ときめたから,「表示義務」もしない.
明治以来の伝統的な「産業優先」という,わかりやすい態度である.

それでか,業界の一部が「自主公表」という行動をとっている.おそらく,消費者からの問合せがおおいのだろう.だから,食を提供する側は,消費者の敏感さに注意をはらう必要がある.
各社のHPをあたると,公表している企業とそうでない企業がわかる.
あんがい有名どころが公表していないから,「へぇー」とおもうものだが,「情報リテラシー」のないひとは,しらべることもできないから,気にしないで食べるのだろう.

それが,お国の方針だから,しらずに国家依存していることになる.
公表していない企業がつかう広告費がおおきいから,マスコミはもしかしたら6月になっても大々的な話題にしないかもしれない.英字紙かBBCやCNNなど英語ニュースしか扱わないのか?

さて,どうなるのか?
いろんなことを観察できそうな6月になる.

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