もらって困るビール券

むかしは町内に一軒以上の酒屋があったが、個人営業の酒屋をほとんどみなくなったから、もらった「ビール券」がどこでつかえるのかをかんがえだすと、けっこう面倒くさいことになっている。

安売りのチェーン店が出てくる前は、チケットショップで購入したビール券をつかえば、なにがしかの「お得」があったのだが、この方法はビール券がつかえない安売り店では効力をうしなった。

いまでは、大型スーパーでもビール券をつかえる系統とそうでない系統があって、コンビニでも同様な系統があるから、ちょっとやそっとでおぼえられない。

しかたがないから、つかうまえに「このお店ではビール券はつかえますか?」と確認してから商品選びをするのだが、「つかえますよ」といった店で、ビールに「しか」つかえない、といわれることもある。

発泡酒やスピリッツ類も対象外だとレジでいわれれば、「???」がつきまくって、ぜんぶの購入をやめたくなるし、こんな店で二度と買い物をするものかと八つ当たりもしたくなる。

はたして、ビール券とはなにものなのか?
全国酒販協同組合連合会が発行する商品券である。
それで、この連合会のHPでは、「券面表記の商品とお引き換えいただける商品券です」と説明されている。

なるほど、券面表記されているのは「ビール」なのだから、ビールに「しか」つかえません、ということはただしいのだろう。

けれども、おなじHPに、小売店向けの案内もあって、「全国の酒類を扱う小売店様でのご利用を特約しておりますので、お客様が交換に来られましたら当該商品との交換をお願いいたします」とある。

つまり、「ビール」と表記せずに「当該商品」という曖昧な表現になっている。
さらに、小売店での利用を特約している、ということだから、そのお店の商品とも交換できそうな雰囲気がある。

発行者の免許として、登録番号 関東財務局長 第00090号/社団法人 日本資金決済業協会、と明記されている。
まずは、岡っ引きである一般社団法人のHPをみると、「前払式支払手段」についての説明がある。

これによると、「ビール券」は、資金決済法の「第三者型前払式支払手段」に該当し、発行者である「全国酒販協同組合連合会」は、第三者型前払式支払手段発行者として、管轄する財務局長あて登録申請をして、発行者としての登録をしなければならない。
それが、上述の登録番号の意味である。

ちなみに、ホテルや旅館、あるいはレストランなどが、じぶんの店舗や資本関係のある店に「かぎって」つかえる前払式支払手段(宿泊券や食事券)を発行するばあいで、基準日という、毎年3月末と9月末に発行残高が1,000万円を超えると「自家型発行者」として法の適用をうけることになる。

これの適用対象になると、基準日における発行残高の半分以上の額を、供託金として最寄りの法務局に供託しなければならない。
供託方法はいろいろあるが、手数料をなるべく安くするなら、日銀本店(各道府県にある支店でもよい)に行って、直接国債を購入して、その国債を法務局に持ちこむ方法がある。

これなら、基本的に交通費だけですむが、係の従業員がそのまま逃走するリスクはかんがえておいた方がいい。
日銀には、現金をもっていかないといけないし、購入した国債だって、かんたんに現金化できるからだ。

政府は「電子決済」を推進するといって、例によって民間に負担を強要しているが、日銀と財務局というおおもとでは「現金主義」を貫いているのだから、なにをかいわんと笑えるはなしである。

だから、経営が弱小なのに宿泊券や食事券を、安易に発行すると、供託金という経営にとって重要なキャッシュの一部を国に有無を言わせず預けなければならないから、慎重な検討がひつようだ。
ホテルやレストラン企業の決算書で、資産の部に「国債等」とあれば、この供託金のことだとおもえばよいし、二倍にすれば発行残高がわかる。

もっとも、こうした制度をつくっているのは、発行者が倒産したときの購入者や、もっているひとが困らないようにするための「保険」になっていることだ。
ならば、ほんとうの保険でいいではないかとおもうが、政府は保険業界も信用していないという「無間地獄」にはまりこんでいるのが日本である。

さて、それで、ビール券はどこでどうやってつかうのか?
消費者としては、ビール以外の酒類も、おつまみも、その他その店舗で売っている商品にも適用してくれたらうれしいものだ。

これが鷹揚にできていたのは、お店のレジがたんなるレジスター(金銭登録機)だったからで、酒屋のおじさんやおばさんが、ある意味厳密な売上・在庫管理をしていたのではなく、組合に持ちこめば現金になるということだけだったからだろう。

ふるきよき時代の適当さが、あんがいサービス面でのまとを得ていて、家にちいさい冷蔵庫しかなくても、人寄せでこまらなかったのは、電話一本で配達してくれる近所の酒屋が冷蔵庫代わりだったからだ。

これがややこしくなったのは、レジスターがPOSレジに進化して、さらにそのシステムのなかでの決済機能と金種管理機能が、ビール券との相性の一致・不一致という設計のバラツキを生んで、結果としてサービス内容を決定するようになったのだともかんがえられる。

すると、レジ係のひとに八つ当たりしてもしかたなく、そんな機能しかないPOSレジの機種を選んだ経営者が、ぜんぜん客サービスに徹していないということになるから、やっぱりそんな店で買い物なんかするものかと、こんどは確信にかわるのである。

平成17年9月から、ビール券には有効期限がついている。
期限内につかわないと「紙切れ」になるから、なるべくはやくつかわないといけないし、どの店でつかえるのかまで「Google先生」にきかないとわからない。

やれやれである。

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