ウナギ稚魚の4倍豊漁

うなぎといえば「高い」になって久しいけれど、近年の高騰ぶりで、めったに食べられない贅沢品になってしまった。
その原因は、なんといっても「稚魚」の不漁だ。生態がはっきりしないうなぎは完全養殖にほど遠い。
「稚魚」をとってきて「養殖」するしかないのである。

「ニホンウナギ」の一生は、はるか南の太平洋で産卵されて、それから黒潮に乗って数千キロを泳ぎ抜き、今度は川に遡上して生活し、おとなになったらふたたび数千キロを、黒潮に逆らって産卵場へとむかうものだ。

こんなことをしらなくたって、ウナギを食べれば翌日には肌がしっとりする。
子どものときには気がつかなかったけど、「ウナギって効く」のがわかったときは、なんだか哀しかった。

キロ100万円もする「稚魚」の値段が報道されて、とにかく「採れない」ものは仕方がないとおもうしかなかったが、今度は豊漁だというから、結構なおはなしである。

けれども、どうして「稚魚」がいなくなったのか?もわからないままに、今度は豊漁だと聞いても、やっぱり「理由」がわからない。
ここが、問題なのだ。
ニシン大漁のニュースとかさなる。

前にも書いたが、わが国は、漁業における「資源管理」の後進国である。
発展途上国でもない。
ほとんどなにもしない、という現実が「後進国」で止まらせている。

目のまえにあるだけ獲る。
とりつくすまで獲るから、略奪的漁業といわれ、それを「日本式」と表現するのが、漁業先進国の北欧人の常識である。
70年代まで、かれらも「日本式」をやっていた。

とるだけとったらどうなるか?
魚が減る。
産まれる数より多く獲れば、まさかの「絶滅危惧種」になって、消費者が魚を食えなくなる前に、漁師の生活がたちいかない。

それで、「資源管理」と「割当制限」をやったのである。
わが国の資源管理とちがうのは、わが国が「国営」なのに対して、かれらは「民営」なのだ。
国の研究所ではなく、消費者も負担する仕組みの民間研究所が魚介資源の管理をすることで、「公平」ではなく「科学」を優先させた。

国の研究所がいけないのは、研究結果が「行政」にふくまれるから、漁港の公平さも考慮されて、結果的に「恣意的」になる。
消費者も負担する民間方式が選ばれたのは、「科学」からの事実と予測を優先させないと、消費者も漁師も食べられなくなるからである。

そんなわけで、わが国の略奪的漁業をやめさせるために、世界各国が協調してできたのが、「二百海里排他的経済水域」をさだめた「国連海洋法条約」(1974年)である。
12海里までの領海の外なら、日本漁船がごっそり漁をしても文句はいえなかったのが理不尽にみえたからである。

いつでもどこでも、日本はつねに「正義の国」である、とはぜんぜんいえないのだ。
当時の報道は、魚が食えなくなるという「自己中」の議論ばかりだったけど、これはいまだに進化していない。

飴と鞭の典型で、この条約によってわが国は、世界の漁場からしめだされるかわりに、広大な水域を含めることになって、世界8番目の面積をほこる「大国」となった。

おなじ基準でみれば、広大な大陸国家のはずの中国は、なんとニュージーランドより狭い、「10位」となるから、アジアの海をめぐる争いになるのである。

だから、「日本は極東の小さな島国」という概念はもう半世紀も前に「なくなった」のであって、むしろ「世界8位の広大な国」という事実をもって常識としないといけないのだ。

これだけの海域利権を独占できるかわりに、資源管理せよという義務が付随しているのに、これをしない日本政府は、かなり「腹黒い」と諸外国からみられていることも、国民はしっていていい。
海底の鉱物資源にいたっては、その「防衛問題」すら放置されている。

そんなわけで、ウナギの稚魚が安くなったからといって、すぐにぷっくりした成魚の「うな丼」の値段が下がるわけもなく、街から鰻屋の廃業がとまらない。
仕入れ値と調理技術をくわえた販売価格が、割に合わないからである。

外食や中食で食べているのは、食材だけではない。
スーパーの惣菜も、ファストフードであれ、伝統の鰻屋であれ、調理技術がないと提供できないことを、消費者がわすれる社会はほんとうの「消費社会」ではない。

そんな程度なのに「成熟社会」というのなら、北欧の消費者が半世紀前に決心したことはなんなのか?

後戻りできないことがある。
妙な「自粛」ではなく、ちゃんとした「自粛」、科学をもちいたことをする北欧人に学ぶべきである。

10年も前に流行った韓国ドラマ、『チャングムの誓い』の前半、疫病で宮中が大騒ぎになるシーンがある。
「風邪」とおぼしき疫病の過剰反応が、時代劇とあいまって仕立てられている。

いまの日本社会が、みごとなファンタジー・ドラマのチャングムの時代とおなじだとおもえば、もう一度観る価値もあるというものだ。

自分でかんがえる冷静さを失うと、こういうことになると教えてくれる。

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